再開
ついに神儀が始まった。
なんだか見てきた神様のメンツが心配だがまぁ、しっかりやろうと思う。
「えーと、んじゃ始めますか。君、カンペとってよ」
神長が隣に座ってた髭の人にノートをとってもらっていた。つか、カンペとかあんのな。
「前回は確か3000年くらい前だっけ?ヘラクレス君でしょ?覚えてる覚えてる!」
どうやら前回の人間上がりさんはヘラクレスさんというらしい。横でメリアがブツブツ何か言っているがキニシナイキニシナイ。
「で、今回誰だっけ?神儀前に楽屋に挨拶にこないとかマジ不届きじゃね?」
うっわー怒ってるよあれ。
「メリアさんやメリアさんや(ボソッ)」
「なんでしょう?」
「あれ怒ってるでしょ、謝った方がいいんじゃ……」
「ほら、誠也さん。神長様のあのキラキラした瞳を見てください。かまって欲しいんですよ」
寒気を感じて玉座の方を見ると、確かに神長がこちらを期待の入り混じった熱い視線を向けていた。
メリアに背を押され儀式場の中央まで行くと神長の笑顔のボルテージが最高潮に達した。
「き、君が糸島セーヤか!な、ななんで挨拶にこなかったのかのかね?」
言語として聞き取れるギリギリのラインを攻めてきた神長にどう返答すべきか迷っていると神長の玉座の裏から腕がニュッと伸びて神長の頭を鷲掴みにした。
「おいおい、ガキンチョ。そいつ私の生徒なんだよ、御手柔らかに頼むわ」
「照花先生!?」
なんでいんだよ!ここって天界なんだろ!だったらもしかして先生は死ー!?
「久しぶりだねー糸島、まさかあんたが私の蹴った神様昇格の話を受けるとは思わなかったよ」
横にいたメリアに視線を向けると、
「私は確かに1人断った人間がいると言いましたよ?」
「それが先生とはいってねーじゃねーか」
「そういう決まりなのですよ」
これ以上話しても無駄と判断した俺は先生へと視線を移した。
「死因は?死因は何なんだ?」
もしかして、もしかすると……あの時感じた誰かの走りよってくる感覚は……
「すまなかったな、間に合わなくて……。教師失格だな」
愕然とした。すべてを理解した。先生は俺を守ろうとあの時俺をつき飛ばそうと走りよって、一緒に轢かれたのか。
「あのぉ、シリアス中悪いんだけど儀式の途中だよぉ」
神長が若干の涙目で儀式の継続を呼びかけて来たので儀式を続けることに。(涙目になり笑いをこらえているエメは無視する)
まぁ、時間はあるし先生とはまた後で話すことにしよう。なぜ先生がここにいたかも気になるしな。
「そんじゃあ、そこの石に触れてくれよセーヤ」
「やだよ!?人生2度目の死なんか体験したかねーよ!!」
神長が何こいつやべーなという顔をして
「メリアちゃんと手をつないで触るんだよ。君ひとりで触れと言ってない」
なぁんだ、それなら死なないのか。
「んじゃさっさとしようぜ、メリア」
メリアが頷き、右の手でメリアの手を、左の手で恐る恐る石に触れる。
そして俺の体には今まで感じたことのないような強烈な痛みが駆け巡った。