神長と儀式
俺はメリアと一緒にたくさんの絵画が飾られていた廊下(何でも神長の趣味だとか)をぬけて天井がドーム状になっている大きな広間に出た。
「ここが会議室兼儀式場ですね、真ん中に置いてある石には触らないようにしてください。 ……死にますよ」
「うぉい!そういう事はもっと早く言え!!」
俺は危うく伸ばしかけていた手を素早く引っ込めた。てかもう死んでますよ、メリアさん。
真ん中にある宝石を中心に沢山の椅子が並べられていたが、その中に明らかに他のものよりでかいものがあり、メリアいわくそれが神長の椅子という事だった。
「儀式の30分前ですのでまだ誰も来ていませんがどうします?しりとりでもして待ちます?」
「しねーよ、その儀式ってのはエメも参加するのか?」
「ええ、エメちゃんがサボらなければ出席すると思います。けど、貴方の事は気に入っていたようだったのできっと来ると思いますよ」
メリアが早くつきすぎてしまったので十分ほど時間を潰していると扉が開いて誰かが入ってきた。
ベージュの スーツを少し着崩した金髪で長身のイケメンだった。
メリアにアイコンタクトで話した方がいいのかと問いかけたがどうやら伝わらなかったらしい。首をかしげていた。
「誠也さん、この方はナルシストさんです」
「え!そうなのか!」
「違いますよ、この人の名前がナルシストさんです!」
可哀想じゃないか?その名前。
自分について話されているのにも関わらず金髪イケメン改めナルシストさんは鏡で自分を見てウットリしていた。やはり名前通りの人かもしれない。
「君が人間界からこの天界の就職率を改善するために天に召された子羊かい?」
なんだろう、俺のこと結構噂になってるんだな。
「そのために死んだわけじゃねーけどな、よろしく」
俺とナルシストが硬い握手を交わしていると
「そうだ誠也さん、ナルシストさんの事はみんな親しみを込めてナルと呼ばれているんですよ」
ナルシストはそれを聞いて怪訝な顔をしていたのできっと陰で呼ばれているあだ名だったのだろう。
「じゃあナル、また後でな」
ナルに手を振ってふと周りを見ると既に結構な数の神様が集まっていた。いろんな服の神様がいてなんだか異文化交流みたいだった。
「なぁメリア、神様がいるんだったら天使や悪魔や大魔王ゾー〇とかもいるんじゃないのか?」
「大魔王ゾー〇が何かはわかりませんが、天使や悪魔はいますよ、そちらの方は人間上がりの方も多いですね」
もう席についていないのも俺達だけになったので二人共席につくことにしたのだが……。
「なんでお前の椅子はソファで俺のはパイプ椅子なんだよ」
俺の隣で少しだけくつろいでいるメリアに質問すると俺は身分的にはまだ人間の階級だからなのだそうだ。
最後に扉が開き……
「あれです。あの方が神長様ですよ」
その髪は艶やかに黒く輝き、頭にはオリーブの葉で作られた輪をかけていた。
だが、なによりも目を引きつけたのは……
「あれ子供じゃね?」
「しっ!失礼ですよ」
感想を口に出すとメリアに怒られた。けどあれは子供でしょ、男の子なのか女の子なのかは知らんが。
そして神長が席についた。ナルもエメも俺の方を見てニヤリと笑っていた。
「これより、神儀を始める」
神長のソプラノ声が儀式場に響いた。