娯楽神との出会い
メリアから聞いた話によれば天界と人が考えた天国とは全くの別物らしい。天国には生前にいい行いをした人だけが来れるところというのが定番だが、天界には一部の例外を除いて全ての死んだ生物の魂が送られるということだった。
メリアの天界の宮殿案内があらかた終わり、俺はいま自分の部屋に連れてこられたわけなのだが……。
「なんだ?このコスプレ少女」
少女を無視して部屋から出ようとしたメリアに聞くと
「あぁ、その人は娯楽の神様のエメちゃんですよ、貴方とはお友達になれそうですね」
「まてーい!エメちゃんっていうな!わたしには、きちんとエメラルダス・カリスト・クレー「おう、よろしくな。エメ」
初対面の相手にまでエメと呼ばれてショックなのかエメはすっかり黙り込んでしまった。
「それはそうとお前の着てるそのコスプレって日本のアニメキャラのだよな?神様なんだろ?」
服装に触れてもらえたのが嬉しかったのか得意げな調子でエメがくるりと回って服を見せびらかした。
そして
「人間の文化に神がはまっていけないというルールはない!!」
「……さいですか」
というかエメは俺の部屋(まだ荷物も何も無いのだが)で一体何をやっていたんだろう。
「……問おう、貴方が噂の人間上がりの新人か?」
なんかいきなり調子変えてきたしドヤ顔がウゼェ。
「はい、この人が快く承諾してくれた"元"人間の糸島誠也さんです」
「おう、よろしく」
エメが握手を求めてきたので握り返すとエメが俺の目をじっと見つめていることに気づいた。
「あなた……もしかして日本から来ました?」
「えっと、まぁ、そうだけど……」
エメの表情がパァッと明るくなり、メリアはもう飽きてしまったのか自分の髪の毛先を気にしていた。
「日本といえばアニメ!アニメといえば日本!仲間ができて嬉しいよ!誠也!君はこの天界に新たな風を吹き込んでくれ!」
あまりの迫力におれが気圧されているとメリアが
「もういいでしょう、挨拶はそのあたりで。神成りの儀式もありますので」
「まぁ、そうだな。おい誠也、ここだけの話だが人間が神になることに未だに反対する神も少なからずいる。儀式の妨害もありえるから注意しておけ」
いや、そのなんとかっていう儀式のことは俺は今知ったんだが。
「何なんだ?その儀式、右手に魔獣を宿らせるとか?」
「簡単に言うと神ではないものを神にな成り上がらせる儀式だな。なに、難しいことじゃあない、神長に頭を下げて部屋の真ん中にあるリングに手を載せればいいだけだよ」
「なんだよ、その儀式。前例がなかったんじゃないのか?」
エメの顔がピクッと反応しメリアの方を見た。
「おまえ……言ってないのか」
「……」
メリアは俯いたまま顔を上げない。
「まぁいい、だがいつかは言えよ。大切なことだ」
エメとの会話が終わりそうな気がしたので最後に俺は気になっていたことを聞いてみた。
「……エメ、おまえはここで何やってたんだ?」
「いやぁ、ただの……掃除だよ」
エメの顔は少し寂しげだったが……
「何を意味ありげに言ってるんですか!職務をサボった罰としてホントにただの掃除させられてただけでしょ!?」
エメ……シリアスな空気を返せ。
「いやーわたしは娯楽の神じゃん?遊ばなきゃダメでしょーよ」
ため息をついて部屋からメリアが出ていってしまったので俺もエメに手を振って部屋の外に出ることにした。
次はいよいよ儀式らしいのだが神長ってどんな人なのだろう。