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夢見蛇  作者: ニジヘビ
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8.夢の守護精霊

サイファが青山さんに取り付いていた夢魔を退治すると、ミノリは青山さんが夢を治すよう導くのだった。

 「大丈夫よ、青山さん」ミノリは、青山さんの手を取って強く握った。「こんなの悪い夢なんだから」

 「青山さん、良く聞いて。これは夢なの。あなたはこんな夢を見続けたいの?」

 「こんなのイヤ!」青山さんは泣きながら首を振る。

 「あなたのお父さんとお母さんが、仲が良かった時のことを思い出せる?例えば、一緒にどこかに遊びに行ったり、一緒に食事したりした時のことよ?」

 「むか…昔は休みの日は一緒に朝ご飯一緒に食べてた…」青山さんはしゃくりあげながら答える。

 「いいじゃない、それ。いい、わたしが3つ数えたら、昔のお父さんとお母さんのことを強く思い出して。できる?」

 青山さんは2、3度しゃくりあげてから、うなずいた。

 「今は日曜日の朝。今日はいい天気よ。青山さんちって和食派?洋食派?」

 「色々…」

 「青山さんは朝はどんなメニューが好きなの?」

 「…トースト、ジャムをたっぷりつけて、後、シーザーサラダ。ミルクティーをいつも飲むわ」

 「へー。わたしもミルクティー派よ」

 青山さんの顔に微笑が戻ってきた。まだ泣いてはいるものの、悪くない顔だな、とミノリは思った。

 「いくわよ…」ミノリは青山さんの目を手で覆った。

 ミノリが3つ数えると同時に青山さんの顔から手をすっと外すと、何事もなかったように、場面が変わった。

 朝の暖かい日差しの中、うっすら湯気の立つ朝食を前に向かい合う夫婦。

 ダイニングはまるで新築のようにピカピカだった。

 あまりの変わりように、ミノリは一瞬唖然としたが、すぐに姿を消した。

 「加代子、朝ご飯出来てるわよ」

 青山さんも一瞬何が起こったのか解らないという様子だったが、すぐに顔をぬぐうと、小走りでテーブルへ着いた。


 ミノリは、そっと玄関の戸を閉めて、外に出た。

 「う~、サイッコー!!」ミノリはつめていた息を一杯に吐き出し、思いっきり背を伸ばした。

 「これで、青山さんも心がいい方向に向いてくれるといいわね」サイファもうれしそうだった。

 そう言われ、ミノリは以前サイファが話してくれた夢の世界の歴史を思い出した。そして、『ゆめつみ』と『夢見蛇』が協力して夢魔を弱体化させたことを。

 「そう、それよ。サイファ、さっき退治してきた夢魔の出所ってわかる?」

 「え、ええ、分かるけれど」

 「退治しちゃおう、今夜中に、ゼンブ!」

 「え…」無茶よ、と言いかけたサイファは思い直し微笑む。「そうね。ミノリの応援があるなら…」


 その夜、二人はあちこちの夢に出かけ、一晩がかりで夢魔を退治して回った。

 退治するのは夢の精霊ともいえる夢見蛇のサイファだが、ミノリの応援もあり、サイファはその能力を余すことなく発揮し、様々な演出を行った。

 クノイチの扮装で夢魔を一刀両断。

 戦闘機を出して夢魔を木葉微塵に爆撃しビクトリーロール。

 龍に姿を変え、空から雷を雨あられと撃ち降らせ夢魔を黒焦げ。

 凛とした女流弁護士の扮装で逆転無罪の勝訴を勝ち取り、悪徳検事役の夢魔を逆訴追。

 負けるわけがない。

 ミノリが入り込んでいる夢もまた、ミノリが観ている夢なのだ。ミノリが歓声を上げるたびに、サイファもパワーアップしてゆくのだから。

 「ハァッ!」女流拳法使いに身を扮し、必殺の技で夢魔を打ち倒す。

 最後の方では、サイファは素手で夢魔を打ち倒せるようになっていた。


 「これで最後?」

 「あなたと青山さんに関わる人の夢だけはね」サイファはさすがに夢見蛇の能力を使い切り、肩で息をしていた。「あ~、疲れた~。これだけ夢をハシゴしたの初めてよ」

 「なんだかノリノリだったけど、サイファ」

 「イイのよ。やるときはガツンとやった方が。これでしばらく夢魔も出てこれないだろうから、ノンビリと夢見を楽しめるし。あ~、1ヶ月くらい休んでいい?」

 「たまには顔出してよね」

 「当然よ。監督さんに注文付けにね」

 「またね、サイファ。ありがとう」

 「またね、ミノリ。楽しかったわ」


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