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夢見蛇  作者: ニジヘビ
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1.出会い

大島美野里ことミノリは、最近よく見る悪夢の中で、恐ろしいサルに襲われる。

そこへ薄緑のヘビさんが現れ、ミノリを救おうと、悪夢に立ち向かうのだが…。

 ミノリは、気が付くと森の中をどこへともなく歩いていた。

 ここはどこだろう?

 薄暗い森、というより、熱帯のジャングルのようだ。

前にお父さんに連れて行ってもらった植物園の熱帯雨林館とは様子が違う。

植物園は、キレイなオウムやサイチョウがたくさんいて、暑いけれど愉しい所だった。ミノリは、大きなキレイなクチバシのサイチョウをペットに連れて帰りたかったくらいだ。

 けれど、ここはぜんぜん違う。

 足元はドロばかり。

 サイチョウもオウムもいない。見掛ける生き物は、今まで見たことのないムシくらい。

 1度だけ、鮮やかな緑色のヘビが木の枝に寝そべっていたけれど、それ以外は黒くてベトベトに濡れた樹ばかり。

 -帰りたいよ。

 ミノリはそう思った。けれど、どこへ?

 自分がなぜここにいるのか、どこから来たのか、ぜんぜん思い出せない。

 空を見上げても、木の枝や葉に覆われて空は見えないし、所々に見え隠れする空は灰色だ。

 ミノリは泣きたくなって来た。

 そんな時だった。

 樹の陰から見慣れない動物が出てきたのは。

 サルのようだったが、チンパンジーではなく、ゴリラでもない。薄汚れた毛並みと黒ずんだ顔は、どこかテレビのニュースに出てくるゲリラやテロリストを連想する。

 ミノリは動物は好きだったが、目の前に現れた動物は、見ただけでダメだと分かった。

その目は、学校でよくミノリに意地悪をしてくるクラスメートに似ていたからだ。

 それでも、ミノリは泣きたいのをグッとこらえ「こんにちわ」とやさしく話しかけてみた。

 「ホガァー!!!」サルは悲鳴と怒鳴り声が入り混じったような声で吠え、そして、今にも飛びかかろうと身構えた。

 その時だった。

 途中で見た覚えのある、薄緑のヘビがするりとミノリとサルの間に割って入ってきた。

 ヘビは、サルの方を向き、鎌首をもたげた。

 「ジャマすんな!」サルが怒鳴った。

 「そういうあなたこそ、これ以上干渉するのはやめなさい。もう許しませんよ」ヘビはそう言うと、ミノリを振り返るように首を少しもたげ「さあ、ミノリ。ここはもう大丈夫だから、急いでお帰りなさいな」とやさしい声でミノリを励ますように言った。

 だが、見ただけで分かる。

 このヘビさんじゃ勝てない。運動会の綱引きに使うロープにも負ける体の細さ。長さもそんなに大きくない。

 対するサルの方は、凶暴にキバをむき、うずくまった人間の大人くらいの大きさがある。

 ミノリにとっても、ヘビは気持ち悪い生き物だ。それは今も変わらない。けれど、このヘビさんはミノリを守ろうとしてくれている。それに、声が昔かわいがってもらったおばあちゃんに似ていた。

 助けたいけど、恐い。その感情の板ばさみに、ミノリはその場を動けなかった。

 そんなミノリの隙を突いて、サルが飛び掛ってきた。

 「逃げて!」緑のヘビさんははそう叫ぶと、そのサルに飛び掛った。

 サルはミノリの前に飛び降りると、腕に噛み付いているヘビを引き剥がし、地面に叩き付けた。

 「ああ!」その時、ミノリの中に静かに熱いものが灯もった。「バカァ!なんてコトするの!」助けようとしてくれた生き物にヒドいことをしたサルを思わず怒鳴りつけていた。

 すると、サルはバットか何かで殴られたように吹き飛ばされ、少し先の地面に音を立てて落ちた。

 「よくもやってくれたな…」サルは起き上りながら、ギラギラする目でミノリをにらんだ。だが、その時、急に苦しみ始め、腕を押さえながらその場で転げ回った。

 「ぐうぅーー」サルはうめき声を上げると、黒っぽいケムリのようになって消えてしまった。

 一体何だったんだろう?

 ミノリはサルが消えた場所をしばらく見つめていたが、目の端で何かが動くのに気づいた。そこではさっきサルに立ち向かったヘビさんが苦しげに身をよじらせていた。

 「大丈夫?」ミノリは駆け寄って、ヘビさんを抱え上げた。

 「…こういうとき大変なのよね。他の生き物みたく痛い所をなめたり手でさすったりできなくて」ヘビさんは苦しげにうめいた。

 大変!手当てしなくちゃ!ウチに帰って!

 ミノリが顔を上げ、そう思ったとき、ジャングルから二人の姿が消えた。

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