出会い①
そんなわけで長編執筆スタートです。
気楽に読んでやってください。
「なぁ、図書室に幽霊が出るって知ってるか?」
と、僕は昨日噂話として小耳に挟んだ話を後ろの席の友人的な何かに話してみた。
「はぁ?」
と、友人的な何かこと、公野直人は相変わらずの主人公っぽい凛々しいお顔で答えた。
いや、答えになってないけど。
「だ、か、ら、出るらしいんだよ幽霊が」
「どこで?」
「図書室で」
「いつ?」
「さぁ…放課後とかじゃね?」
「…ふぅん…」
そう言って、公野はまた本(MOMENTとはまた渋いチョイスである)に目を落とす。
っていやいやいやいや待て待て待て。
「お前さぁ、ここは、えっマジで、じゃあ放課後は幽霊探しに洒落込もうぜって言っていざ行ってみたら異世界に飛ばされるという展開にするためにもっとノリのいい返答をするべきじゃないのか?」
「俺にはすぐにそういう発想に結びつけるお前がよく分からんよ」
「小説家になろうではよくあることなんだよ」
ランキングの8割はその手の話だしな。
「小説家になろうって何だよ?」
「いや、こっちの話だ」
強いて言うなら世界線だ。
「まあそんなことより、放課後行ってみようぜ図書室。実際見た奴も何人かいるって話だぜ」
「何で俺も行かなきゃなんないんだよ?」
「だから異世界に飛ばされて「はいはい分かったから一人で飛ばされてろ。だいたい、放課後は静と行くところがあるし、それに、お前もまだ現実が見えていないようだしな」
「え?何のこと?」
そうか、あの時いなかったんだっけとそんな独り言を公野はつぶやきながら(こいつの癖だ)改まった表情で続ける。
「良いか、落ち着いて聞いてくれ」
「お、おう…」
「お前、前に何かのゲームを買うとか言って学校フケたことあったよな?」
「あぁ~、あったねぇそんなこと…」
1、2週間くらい前だったか、俺の好きなゲームの新作が発売されたため、わざわざ学校休んで店に並びにいったのだ。
予約特典のレアカードもあったしな。
いやぁ、あの時は…恐ろしい戦いだった…
全く、お前らわざわざ店に並ばないで仕事しろよ。
通販で買えよ(憤慨)
まぁ通販は予約の段階で在庫切れになったそうだが。
「大体転売厨が蔓延ってるからこんなことになるんだ…」
「何か言ったか?」
「いいや、もう何でもないので続けてください…」
「?まぁとにかくお前がいなかった時にな、クラスで委員会決めがあったんだよ」
「はぁ…委員会決めねぇ…」
どうせ余り者は余り物の美化委員会とかその辺だろう。
委員長がソフトボール部のバカップルでないことを祈るしかない。
「それでな、お前、図書委員になったから」
「えぇ!?図書委員!?」
あの人気株の図書委員が!?
「そして後ろの黒板見てみろ」
そう言われて後ろの黒板を見てみると
『図書委員の人は放課後16:20に図書室に集合』
「マジかよ…」
「というわけで、幽霊探しは一人でしてこい」
「…………はぁ…」
「どうした?図書室に行きたかったんじゃなかったのか?」
「いやいや、同じ目的地でも目的が違うんじゃ全く以てテンションが変わるもんなんだよ…」
「何だよそりゃ…」
そうつぶやきながら前を向いて机に突っ伏そうとすると
少女がいた。
「!?…ってうおおおおおぉぉ!!!!」
ビックリして椅子から落ちそうに…いや……落ち……落ちな………落ちた。
盛大にひっくり返った。
その影響で盛大に静まりかえった雰囲気。
ああもう終わったな僕の新生活。
「……びっくりした」
ん?この全く驚いてなさそうなフラットな声は…
「何だセイちゃんか…驚かさないでよ…」
ただでさえ幽霊話をしてたんだから。
「……別に驚かせるつもりは無かったんだけど…」
そう 沼足静はやはりフラットな声で答える。
「来たのか静。じゃあそろそろ行こうか」
「……うん」
「じゃあな脇坂。異世界に飛んで結婚したらせめて式には呼んでくれよな」
「……ばいばい」
そう言って二人は教室を出ていった。
………
今の公野の発言はネタ振りなのだろうか…?
………
ダメだ、抽象的すぎて分からん。
さて、集合時間は16:20だったな。
今は…
16:15か…
………
……
…
数分後、僕は廊下を全力で走っていた。
教室から図書室まで徒歩5分はかかるんだよ!!
さて、僕が全力で走っている間にこの話の話をしよう。
僕の名前は 脇坂旬。
半分男で……て違う違う。
アニメやゲームのことを人より詳しいということ以外は普通の男子高校生だと思う。
そして公野とセイちゃんとは中学からの腐れ縁みたいなものだ。
セイちゃんは、さっきも話していた通り、まるで語頭に3点リーダーが入っているようなフラットなしゃべり方をするあまり感情を表に出さない子だ。
誤解がないように言うとセイちゃんは決して感情が無いというわけではないのだ。
実際、さっき公野の所へ向かった時、嬉しそうにしていた(ハタから見ていたらそうは見えないだろうが)のは分かるようになった。
気づいた人もいると思うが、公野とセイちゃんは幼稚園以来の幼なじみであり、今ではお付き合いをしている仲である。
そりゃあもうラヴラヴなのだ。Wuv Wuv。
で、その彼氏たる公野は一見無愛想ではあるのだが、お人好しというか何というか、身もフタもない例え方をするなら、ギャルゲーの主人公をそのまま持ってきたかのような性格をしているのだ。
いや、あながち間違ってないかもしれない。
中学の頃から数えてヤツが立てたフラグの数は数知れず。
この状態に何とか落ち着かせるまでに……本当に…本当に苦労したんだぜ(涙目)
まぁ、アイツが主人公なのかどうかはともかくとして、今まで4~5年くらいアイツと一緒にいて、世界は公野を中心にして廻っているんじゃないかって思ったことは何度もある。
そんな世界で差し詰め僕は○や梅○みたいなポジションといったところか。
まぁ彼らと違って僕は本当に一介の高校生であるのだが(ヒロインと会話するためのコツ指南書も持ってないし)
………
話をまとめよう。
これは、主人公(公野)がフラグを振りまいている裏で何が起こっているのかを脇役からの視点で記すという本編が外伝状態の話だ。
そしてあわよくば主役の座を奪おう…何ていうのは全くの嘘で……
いや、半分くらい嘘で、か。
正確にはそういう話もあるし、主人公と全く関係ない所で僕がどんな目にあったのかとかとにかく何もかも全部ひっくるめた僕の日記みたいなものだ。
日記の中でくらい、僕が主人公のように振る舞ってもいいだろう……
そして僕は女子と2人きりでいた。
……いやいや、決して僕のハーレム計画に彼女が加わったとか、倉庫に行ったら閉じこめられたとかそういうのではなく。
図書委員の仕事だ、カウンター当番。
あれから何とか間に合った僕は、諸々話し合いをして(るのを聞いて)早速今日からカウンター当番に任命された。
今日決めたんだから明日からで良いじゃんとは思ったが、図書館は平日無休なのである(実際今日も利用者結構いたし)
そんなこんなで閉館時間も近づき、図書室で勉強してた奴らとかもパラパラと帰って行くようになった頃。
「 本町さん、後の仕事は僕がやっとくから、先に帰ってもいいよ」
僕は同じくカウンター当番に任命された本町さん(ちなみに同じクラス)にそんなことを言った。
彼女は僕のハーレム計画に加わっていないが、ぜひとも加えてみようというわけだ。
「え、いいの?大丈夫?」
「いいっていいって。ちょっとチェックしておきたい本もあるしね」
「そう?じゃあありがとう、そうさせてもらうわ」
ふっ…これでフラグは建ったぜ…
「あ、そうそう」
「ん?」
すると、彼女はわずかに頬を赤らめて
「あの…その…言いにくいことなんだけど…」
「ほうほう」
わくわく
「脇坂くんって確か…公野くんと仲が良かったわよね…?」
「…………(コクリ)」
「あ、あの…特に意味は無い……何となくなんだけど………公野くんって、いつも沼足さんと一緒にいるけど…2人って付き合ってるのかな…?」
「……」
「もし知らなかったら、今度さりげなく聞いといてくれないかな?じゃあ、また明日」
「」
数分後、 きっちりと本町さんに現実を突きつけた僕は、カウンターに一人で座っていた。
6時を廻ると、いい加減だれもいなくなり、ただでさえ静かで広い図書室は、まるで世界からそこだけが切り離されたかのように、より静かだった。
そして誰もいなくなったってか。
ところで、こういうだだっ広い空間に一人でいると何か……テンション上がりません?
僕は立ち上がり、鼻歌を歌いながら適当に踊り始める。
一回こういうのやってみたかったんだよね。
とぅっとぅる~と踊りながらこの図書室についての基本情報。
うちの学校の図書室はそもそも校舎から独立したところにあり(だから図書室というよりは図書館と言った方が良いのかもしれない)
市内の高校の中ではかなり古い方の建物 だった。
そう、それは去年までの話。
元々、老朽化を指摘されていた図書室であったが、数年前のあの震災の影響を少なからずとも受け、ついに多くの人に惜しまれながらも、建て替えが決まった。
そうして今年からピッカピカになった図書室を使う次第となった。
これは、先代だった頃もそうだったのだが、独立した建物であるということもあり、無駄に広い。
蔵書数も他の高校に比べたらそれなりに多いのであるが、それでもそれなりのスペースが空いている。
そのスペースを閲覧や自習用の机で埋めても結構なスペースがある。
それはもう踊るのには十分なスペースであるわけで……
ついでに大回転もキメてみたくなるわけで……
「スティル!ア!ダッキイイィィィングッ!!!」
何て適当なことを叫びながら大回転をかましていたら、
少女がいた。
「!?……ってうおおおおおおぉ!!」
足の回転の制御が利かなくなり、大回転を超えた何かが始まった。
そのまま椅子の足に足が引っかかり、僕は宙を飛んだ………
このままI can flyと言いながら羽ばたける予感のする時の流れだったが、現実は厳しく、僕は本棚に頭から突っ込んだ。
………
……
…
「ってテテテ……あれ、ここは誰!?私はどこ!?」
………
まぁこんなベタなジョークも一人だけだと空しくこだまするだけだった。
自分の頭に異常がないことを確かめつつ(元々異常だろというツッコミは聞こえない)とりあえず本棚を元の通りにする。
それにしてもさっきの少女は一体………
見渡してみるがそこにはもう誰もいない(当然か)
『図書室に幽霊が出るって知ってるか?』
自分で言った言葉を思い出し、背筋が少し寒くなった…ような気がする。
僕は幽霊を信じますかと聞かれたとしたら、いたら面白いよねと答えると思う。
こういうのは信じる信じない以前にあまりに縁がないのだ。
だからこんな時にどうすれば良いかなんて分かるはずがない。
選択肢なんてない。
「………」
だから僕は…
「…うおおおおおおお!!」
なまはげよろしく、全力で幽霊を探し始めた。
幽霊がいないならそれで良い!!
もし幽霊がいたとしても!!
あんな恥ずかしい姿を見られたんだ!!
このまま生かしておくわけにはいかない!!
「うおおおおおおぉ!!」
走りながら高く跳んで軽く3回転半ひねりを決めながらシュタっと綺麗に着地した先には部屋のドアらしきものがあった。
どうやら、辞書みたいな大きな本を収蔵する書庫の扉らしい。
とにかく見たやつを片っ端から粛清することしか考えていなかった僕には、ここには誰もいないはずなのに、何で明かりが漏れているんだとか、やはり誰もいないはずなのに、何で鍵が開いているんだとか、いろいろとツッコむべき点はあったはずなのにそんなことすら気づかず、躊躇なくそのドアを開けた。
するとそこには・・・
誰もいなかった・・・
「・・・?」
部屋の中にはやはり大きな本を入れる本棚。
部屋の中央には長机とパイプ椅子が1つずつ。
そして、その机の上には紅茶が入ったティーカップ・・・ん?
何でこんな所にティーカップがあるんだ?
しかも飲みかけだし・・・
違和感ありまくりな部屋の様子に首をかしげながらさらに奥へ進もうとすると、
ガンッ!!とはっきり音がするくらいに何かで頭を強打された。
「がはっ・・・!!」
当たりどころが良かった(悪かった?)のか一瞬で意識が薄れていき、ひざをつく。
マジかよ・・・これが幽霊の祟りってやつか・・・?
つーか僕、幽霊に祟られるようなことしたっけ・・・?
駄目だ・・・いsきが・・・な・・・
こうして僕は最期に視界に何か足のような細いものを収めたような気がしたが、そのまま暗転した・・・
そんなわけで長編小説スタートです。(二回目)
どうも、大学生になったヤマダマヤです。
詳しいあとがきはこの出会いの章が終わったら書く予定ですのでここは簡潔に。
いきなり主人公の生死がわからない状態ですが、次は短編を挟んで投稿する予定です。
手書きの書き溜めはいっぱいあるのですが・・・デジタルデータに収めるのは難しい。
そんなわけで気軽にお待ち下さい。
授業(と書いて執筆時間とも読む)が始まって少しは書ける時間取れるかなーと思ってるので、そんなに遅くはならない・・・はず・・・
ではでは