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銀の弾丸なんてない  作者: 裃 左右
第二章 感染拡大
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第11話 仕返しという名の話し方

 更新待っててくださった方、ほんとうに申し訳ないです!

 一ヶ月以上も長らくお待たせしてしまいました。

 ぼくは階段を上がっていく。

 虚ろな窪みの双眼の、彼女の手を引っ張りながら。


 さて、そろそろ援軍は到着しただろうか?

 赤霧咲斗に絶対に(・・・)対抗出来る現在唯一の、保有戦力。

 ……赤霧咲斗、本人(・・)


 たぶん、この時間だと学校にも行かずに事務所にいるんだろう。

 最近はずっと夜出歩いていたようだから、日中は動きがあるまで休んでいるんだろうし。

 

 この所、事務所で見るたびにソファーでなぜか寝ていた赤霧先輩。その割に、日が暮れる頃にはいなかった。

 もし、巫月所長が今までの事件を全てを把握していたとして。その情報を掴み、ぼくの前ではああいう風に装っていただけだとして、ぼくにはあえて情報を流さなかったのだとして。

 当然、赤霧先輩がなにも知らない訳がない。むしろ、こんな事態真っ先に嗅ぎつけて、身動き出来ない巫月所長と共に色々やってたんだろう。

 

 言われてみれば、そんな節がなかった訳じゃない。と言うより、あっさりしすぎていたのだ。あの二人が、こんな街全体どころか、世界でも有数の現象が起きているらしき状況で傍観? ……ありえない。

 ドッペルゲンガーがどんなに『ありえない現象』なのか、それを説明したのは他ならぬ巫月所長だ。その希少性を知っているはずなのに、まったく興味がないなんておかしい。


「知的好奇心を失った時、人は死んでいるのと同義だ」


 ぼくは呟く。

 この言葉を言った、自分の上司のその顔を思いながら。

 

 しかも、だ。

 非生命体(ノーライフ)の活動が沈静化し、一区切り付いたタイミングで発生しだしたあるこの事件。

 その事件と今回の件がなんの関連性もないと言えるのだろうか。 ……次から次へとなんの関係ない事件が、こんな退屈な場所を舞台として起こるのが現実だと。

 馬鹿を言ってはいけない、それはどこのドラマだって話だ。ぼくたちは名探偵でもなんでもない、ぼくたちを中心に無条件で偶然事件が起こる訳はない。

 

 ……今までのこと全てが誰かが画策していた、と言う方が納得がいく。

 だとしたら、巫月所長がなにもせずに傍観を選ぶのは不自然だ。


 もちろん、これは飛躍した発想なのは自覚してる。

 そんな誰かがいると決まった訳ではない、だが、その可能性があるかもしれない、と言う時点で情報を集めるべきなのだ。


 先行きが不透明なら、それを知ろうとするのが巫月所長の役割だ。あの人は化け物と人間の境界線に立つ、調停者である人間(・・)なのだから。

 それを前提に、さっきの赤霧先輩を見た上で考える。

 そこから導き出されるもの、赤霧先輩が連日連夜出かけていた理由……それはこの事件の捜査か、あるいは自分の『二重身』を狩るためだったんじゃないか、と。

 ぼくは後者の可能性が高いように思う、狩りの対象を探すには空いての活動時間に動くのが手っ取り早い。もちろん、それは相手のアドバンテージが高い危険行為であるわけだけど。


 ……と言っても、赤霧先輩は本当に『ドッペルゲンガー』に関してはあまり知らなかったんじゃないか。とは思う。あれは演技でもなんでもなく、純粋な反応。

 だって、さすがにいくらなんでも、殺したら自分も死ぬって言うのに相手を殺そうなんて馬鹿な真似はしないだろう?



 *



 俺は目の前の自称、赤霧咲斗を観察する。

 なるほど、武装は同じだろう。なぜかありえないことに血汐閖咲までも。

 顔は、まあ世間に嫉妬されるほどに良い男だ。ただ惜しいな爽やかさが足りない。俺の次ぐらいの順位に甘んじておけ。

 ……って、容姿は別にいいんだよ。問題はその実力だ。


 万全な状態でないとは言え、魔術の化身(マジックアバター)であるキツキがここまでやられたつーことは、本気でそこそこやれるんだろうな。

 それも、喰らった技は炸裂杭打ち(パイルバンカー)。こんな趣味丸出しの馬鹿技(オリジナル)やるのなんて俺くらいだよなぁ。

 本気で、こいつは俺のドッペルゲンガーなワケか?

 

「しかしそれも奇妙だな、自称二重身(おれ)


 刀の背で軽く、肩を二、三度叩きながら俺は言う。問いかけると言うよりは、独り言を呟くように。

 自分の思考を言語化し、整理する。

 これはいつも俺が冷静であるためにやっていることだ。精神制御のための儀式。だが、冷静であることは、思考が冷却、ようするに『冷めている』ことを意味しない。

 自分自身を見失わなず、常に自分であること。すなわち、『覚めている』ってことだ。


「そもそも自分と同じ存在と言うがな、そんなものはありえないだろ。 人に限らず、全く同じ物体が座標の違う場所に同時にあるなんてのは絶対的な矛盾だ。 前提が論理破綻している。 なぜなら、別の身体を持ってしまった時点で、それは異なる時を刻む別人だからだ」


 時間は相対的であり、絶対ではない。

 その個体の現在位置にすら影響される程に時間ってのは曖昧な存在だ。それも宇宙と地球、なんて規模どころかこの地球のどこにいるか程度のレベルで、だ。何をどうつくろったとところで、環境や個人差、身体的精神的状態ってのも含めればそれぞれの身体が老いる速度はけして同時になりえない。

 

 同じ人間は同時に複数存在できない、存在した時点で別のモノなのだ。

 仮にこのドッペルゲンガーの現象が魔術によるものだとしたら、それは成立不可能なモノになる。破綻した魔術は構築した瞬間に崩壊するはずだからだ。

 崩壊しながら再構築され続ける魔術式はあっても、崩壊自体は避けられない。


「なら、お前はなんなんだろうな、自称二重身(おれ)


 俺はもう一人の赤霧咲斗(おれ)に観察するように、あるいはただのいしころを見るように、足元から頭のてっぺんまで見定める。

 それに対して帰ってくるのは挑戦的な眼光。

 へえ、こいつ、俺に喧嘩売ってんのか。たかだか、俺から分化しただけの存在の癖して?

 ……嘗めてんな、マジで。


 いいぜ、別に。俺はよ。

 同じ条件で戦えるってなら、楽しくやれるだろうさ。


「まあ、アレだぜ。五分と五分の戦いってのはまともにやりゃあ滅多にない話だぜ、現実的にはそんな戦闘は存在しない。なあ、ドッペルゲンガーぁ?」


 俺はそう言いながら、敵に、俺と同じ顔で全く同じ格好をしたヤツに近づく。

 俺のドッペルゲンガーと言う言葉にわずかに眼を見開く、キツキ。


 おいおい、今気付いたって言うのかよ。ドッペルゲンガーってことに?

 いや、俺なんか最近知ったんだけどよ、その単語。

 もし、俺と彼奴に違いがあるとすりゃ、俺はコートに合わせた色の帽子を被ってるってトコと、俺はまったくの無傷で相手はそうでもないってトコだ。


 俺の表情は勝手に笑みを浮かべ始める。  


 ……おもしろいな、目の前のこいつは消費した血液を回復できていない。なのにも関わらず、俺自身はほとんど血液を消費した状態にない。

 こうなるとドッペルゲンガーが保有するダメージ共有の定義に、血液は含まれていないことになる。

 ふむ。なら、失血死は狙えるな。


「でも、めんどいんでその首跳ねるけどな」


 地面に寝っ転がってるキツキからの目線がきつくなる。

 ああ、コレ。見たことある眼だ、こいつ馬鹿か、みたいな眼だ。

 なぜわかるかって? よくこういう目で見られたからだよ!


「なんだよ、キツキ。ここまでされてんだぜ? こいつ生かしとけないだろ、今すぐ殺そうぜ?」

「…………っ」

「はあ? どう考えてもオレの方が強いだろうが」

「…………っ!?」

「いやいや、俺。もっといい男だし。こいつより」

「…………?」

「眼悪いにもほどがあるぜ、話にならねえな」

「…………ぇ」

「いいからもう黙れ、さっさとこいつ殺してやるから」

「…………ぅっ」


 そんな俺たちの会話を信じられないものをみるかのように、傍観する目の前の二重身(おれ)

 言ってみれば、絶句って感じの表情だ。

 俺はまず浮かべねえな。いや、たぶん。……実は自分でも知らねえけど。

 自称二重身(おれ)は口を開く。


「いやいや。お前等、話になるならないって。そもそもそれで話成り立ってんの?」

「は?」


 なに、ぼうっ、見ているかと思えば、なに言ってんだ?


「見てわからねえのか?」

「わかるかっ!」

「どう見ても会話してるだろうが」

「片方、まともに発声してないけどな!」

「お前、会話が発声だけで成り立つとでも? と言うか、言語を必ず必要とするとでも思ってんの?」


 例えば、日本語が通じない人間相手でもその気になれば会話が出来るだろう。言葉の通じない相手でも、ジェスチャーなどがあるし、声真似や指さしで動物や作業を示すことも出来る。表情、雰囲気、時間や場所などと言った状況、そのすべてが会話のための材料だ。

 ジェスチャーが会話にならないと言う奴は、別の世界に帰れ、現世じゃやってけねえよお前。つまり『あの世』に帰れ。一言で言うと死ね。手話や手旗信号、モールスを全否定か、お前は?

 なら、いっそ間に電波やら電気やら挟む現在の通信方法すべてを否定しろ、たわけ。発声ですら、空気振動を媒体にした間接手段だろうが。

 てか、言葉が意思疎通のコミュニケーションツールにしかならない奴は、みんな死ねばいいと思う。そんなお前は、たぶん、他の奴と気持ち共有できねえよ。一生。


 と言うか、人類は誕生から人間外のものと対話するべく、憑依や解釈なんてものを用いて自分より偉大な存在から知識を得ようとしてきたんだぞ?

 自分たちがその先祖の末裔だって自覚しろ、自称現実主義者。一言で言うと、死に至るほどの馬鹿。つか、死に至れ馬鹿。


「と言うわけで、お前は死ね」

「さっきから死ね死ねって。俺を殺そうとしかしてねえよな、お前?」

「当たり前だろうが、自分と似たような顔してる奴はおおよそ気に入らん。つか、俺の人生パクンな。そして、その血汐閖咲を俺に寄越せ。……え? なにそれ、買ったの? 売ってんの? それとも全部、自分で作ったの? コスプレかお前、マジ死ねばいいのに」


 目の前の自称二重身(おれ)は、何を言われているのか即座に理解して、嫌悪感いっぱいに顔をゆがめた。

 なるほど、理解力はあるらしい。


「チッ、てめえみたいのが元々俺だと思うとマジでむかついてくるぜ」

「うっせ、お前が俺の訳ねえだろうが。俺の方が断然いい男だし?」

「顔は同じだ、バカ」

「は? なに言ってんの、お前」


 マジ、くだらない。この程度の奴と俺は戦わなきゃならんの?

 こういう時、フツーは中身が違うと言うのだろうが、そんな小さい些細なレベルじゃない。


「どう考えても、お前より断然俺の方が格好いい生き方してるだろうが」


 俺は胸を張り誇る。

 例え、数多くの俺と言う可能性があったとしても。それだけ多くの可能性があり、それがシャドウとして秘められているのだとしても。

 ――断言してみせる、今いる俺がもっとも最高の生き方をしている、とな。


「てめえは俺じゃねえ、俺のしたい欲に食らいついて生まれ出たんだとしても。俺の持てなかった可能性を秘めているのだとしても、もはやそれは俺じゃねえ。俺のなるかもしれなかった可能性? そんなもん、この世にいる全員がそうだろうが!」


 俺の殺してきた奴。

 その全員が俺のたどるかもしれなかった末路だ、俺はそのすべてを背負って今ここにいる。

 強い奴も弱い奴も、俺がそっちの方の才能を持って努力したらなるかもしれなかった可能性だ。頭のいい奴も悪い奴も、性格のいい奴も、悪い奴も。モテる奴もモテない奴も、俺のそうなるかもしれなかった他人という名の可能性だ。


「だけどな、そんなもん関係ねえ! 俺は『赤霧咲斗』、俺が『赤霧咲斗』! てめえは俺と同じ身体と中身と能力を持った、別の可能性と生き方の同姓同名の別人だっ!」


 俺はそう言って日本刀の姿をした魔剣、血汐閖咲を振りかざし、目の前の相手に叩きつける。

 鮮血沸騰(オーバーブラッド)を併用し、身体能力を遙かに向上させて。

 全身からほとばしる、赤い霧。視界を一気に染色する真っ赤な色。

 俺の視界は完全に赤に染まる、その世界のすべてが……。


「なっ! お前ぇっ!」


 奴は硬化した両腕を交差させて、魔剣を受け流す。

 全身を背後にそらし、掛かる怪力を可能な限り無効化するために。

 そのまま身体を回転させる形で放たれる蹴り、それは俺の頬をかすめるもダメージにはならない。それでもわずかな怯む隙となり、着地と同時に放たれる斬撃を許す形になる。

 許すと言っても、斬撃を放つことそのものだけだ。まともに受けてやる気はまったくない。

 俺はその放たれた刀の横っ腹を、膝をたたきつけて跳ね上げた。


「くっ」

「読みやすいんだよ、馬鹿が」


 跳ね上げられた刃が軌道を逸らし俺の肩の肉を削ぐ、かと思いきや、防刃を兼ねるコートが打撃へと変換。違和感はあるものの、戦闘に支障はない。また痛みもない、この状態で痛みという危険信号は邪魔であるために感覚から完全に除外している。

 俺はそのまま接近、刀を持つ人間にとっては動きづらいことこの上ない、肉薄する間合いまで詰め寄り。

 そのまま突進するように、硬化した肘をその左胸にぶち当てた。


「がはっ――」


 奴の胸から、バキバキッと言う気味のいい音が響くのと同時に、俺の胸からも似たような音が響き出す。

 そのまま奴は無様に転げまった。しかし、それでもなお魔剣をその手から離すことはない。

 当然だ、俺との戦いでその剣を手から離せば、勝つどころか逃げられるはずもない。


「おい、立てよ。俺はお前と違って寝てる奴を殺して楽しむ趣味はねえよ、さっさと戦え」


 さて、コイツは俺のどんな可能性なんだ?

 技量そのものはさっきの攻防からして、実質的に差はねえな。当たり前の話だが、より上の能力を持った自分って訳じゃなさそうだ。

 まあ、俺の一番やりやすい動きをしてくるんで読みやすすぎる。その上、疲労や血液量の関係で俺が上だからこそ、こうして圧倒出来る訳なんだが。


「……なんだ、そりゃ?」


 そいつはなんとか立ち上がりながらも、俺に問う。


「お前、見たろ? わかったろ? 俺に今与えたダメージはそっくりそのまま、お前も喰らってるはずだ。アバラが何本かいかれてるだろうが!」

「それがどうした。最初から承知だ」

「承知だと?」

「当たり前だろうが、てめえがキツキとの戦闘で喰らったダメージ。俺も受けてんだ、馬鹿! 拳は砕けるは、全身の筋肉は死ぬわで、あやうく激痛の余りにショック死するとこだっての」


 遠野のメールが届いてから、俺がどんなに笑えない目にあったかわかってんのか。

 意味不明だったぞ、なんでこんなに死にそうなッてんだ俺、ってな。

 その辺の地面で突然、身体のあちこちから出血かつ複雑骨折しながら、悶える人間が客観的にどう見えてるのかなんて考える余裕すらなかったわ。

 出血は即、反射的に止めたけどな。そこは慣れてるんでもう無意識に出来るレベルだ。


「まあ、アレだ。咄嗟に魔薬使って、強制的に狂的覚醒(トランス)入って、痛みを解いたから生きてるけどな。フツーの人間なら耐えきれなくてそのまま死ぬっつの。そんな理由で俺死んでみ? お前もショック死で死ぬのかって話だっ!」


 そりゃ殺意に目覚めるだろ、俺。

 いきなりそんなことになったら犯人殺していいレベルだろ、マジで。


「……ああ、そういや、お前が回復すると連動して俺も回復するのな? 勝手に身体の傷治り出すから何事かと思った。アレか? 身体の損傷度だけは共有してるってトコか?

 どこからどこまでが連動してんのか、未だにわかんねえけどよ、ただ、俺が硬化や身体強化使ってもお前がされてないからな、解釈的にはそんなもんだろ、たぶん」


 つーことは、俺が今、コイツの首はねたら俺の首も飛ぶのかね。

 ……微妙なトコだな、仮にそうならその後、俺もわずかな間は生きてるだろうから速効でくっつけたら俺は無事か? でも、そしたらアイツも治るのか? それとも術の対象がいったん死んだ時点で術が解除なのか……いや、そもそも魔術なのか、この現象?

 ……うん、不明だな。


「ま、どっちでもいいや。どっちにしても俺はお前殺すし、とりあえず」

「……つくづくイカレてやがるな、(おまえ)

「今さらだろ。自称二重身(おれ)

「だな、(おまえ)がイカレてるのは今始まった事じゃない」


 自称二重身(おれ)は、くっくっくっと肩を震わせながら小さく笑った。

 目が変わる、心地良い殺意が籠もった目。ヤツは俺と全く同じ、相対するが故に反対に見える形に魔剣を構える。正式な剣術でない、同じ我流の構えで。

 ……これでようやく俺を殺す気で来る訳だ。


「そうだ、お前がなんであるかはどうでもいい。お前が俺の可能性(シャドウ)かどうか、なんて知った事じゃない。お前がいる理由も目的すらもどうでもいい。重要なのは……」

「殺し合って面白いかどうかだろ? 赤霧咲斗。猟獣にとって狩りは食事、つまり生活の一環だが、狩人にとっては……必ずしもそうじゃねえ」

「わかってんじゃねえか、自称二重身(おれ)


 武装や術式が同じ、っても異流の鮮血魔術師である俺達が、現在保有する血液量に差があるなんてのは実際かなりのハンディだよな。

 いや、本来、鮮血魔術師なんて名前すらおこがましい。血液を付着させて、魔剣とこの身体に繋がりを得、その後直接血液を消費して魔術を扱う。亜流どころか、異流の鮮血魔術。人成らざる身、禍血(まがち)を持つからこそ使える異能。


 フツーの鮮血魔術師と違って、技量よりも血液量がその術の効果を左右する。……それは向こうもわかってやがる。

 ……いやな、そもそも鮮血魔術なんて扱う魔術師がフツーじゃないって突っ込みは、スルーだけどな。


「ならば……やる手は一つだろ」


 俺の言葉を合図にしたかのように、二重身は接近戦は不利と見て距離をとる。その上で魔術をあえて紡がずに攻撃を仕掛けてきた。

 それはそうだろう、魔術を紡ぐ間に俺は近接して高速戦を仕掛ける。魔術を一切使わせず、鮮血沸騰オーバーブラッドを使った上で連撃を叩き込み、どう足掻いても確実に斬殺するだろう。

 俺の予測通りの決断だが、それは最善の行動だった。それはその手に握った、小さな金属状の杭を一本投合するだけの攻撃。


 ただし、その狙いは俺ではない。

 ――キツキだ。


「そう来るよなっ、やっぱ!」


 俺はすぐに斜線上、二重身とキツキへ間に入り、その杭を左手で弾く。魔剣で弾けば、ヤツは必ず攻撃を仕掛けてくる。なにせ、相手は俺と同格の相手だ。油断は出来ない。

 その間に、魔術を紡ぐ二重身。それを防ぐために接近するも、キツキへの斜線をふさぐように意識しなければならないため、防御や回避もままならない状態と言う無防備な直進。

 ヤツはあえて杭を一本づつ投合していた、まとめて強化された膂力で投げれば、俺に手傷を負わせられるだろうに。時間を稼ぐために、俺の一番嫌なポイント、呼吸を計って撃ち込んでくる。

 二重身は複数の杭を既に錬成し隠し持っている。それがいくつかなのかもわからないために、どうしても俺の動きは消極的なものにならざるを得ない。しかし、かといってこの状態で相手に接近しなければ、キツキに近づけさせないように牽制が出来ない上、俺が消耗戦を強いられることになる。

 ……そう、俺はたったそれだけの手で追い詰められていた。


「狡いだろ、お前っ」


 相手は答えない。まあ、だろうな、と思う。

 俺の言ったのは戯れ言だ、実際返答を期待はしていなかったし。これは狩りだ。決闘じゃない、俺は戦士でなく決闘者でなく兵士でなく、狩り手。ならば、相手の弱点を突くのはなんら卑怯でないだろう。

 俺も相手に護るべき相手がいたら、人質にするなりなんなりするだろう。キツキを殺すなら日中を狙うに違いない。可能なら、疲弊した状態で。

 だが、相手が俺と同じ思考、狩人としての目線でいるのなら……。 

 

「――っ!」


 またも放たれた杭に気づき。

 同じように、左腕で弾く。それは自分の中での最善最速の動き。機械化されたパターン。

 しかし、同じ事をされたのではなかった。

 飛来する杭の陰に隠された、もう一つの杭。ご丁寧に、より目立たない色合いに調整された状態で。

 ……性格悪過ぎンだろ、お前っ! 上手くいっている手を変える必要はない、そんな寝言が命取りなのは俺は知ってたはずなのにっ!?


 反射的に身体を逸らそうとして、それを止める。裏にはキツキがいる。いつも通り、勘や反射神経で動くことは許されない。

 自分の冷静な思考と、本能的な動作が相反した時、人間は停止するしかない。それは大きすぎる隙だった。

 杭はよりにもよって右肩に刺さる、それは計算されたが故に。ともに杭が爆ぜた。砕ける肩の骨と筋肉。神経までもが確実に傷つけられ、俺は衝撃で魔剣を手から離れる。傷を回復させようにも、入り込んだ破片によって阻害。

 その間に呟かれる、術式。唱えずとも紡がれる、しかし、精神集中をより強固なものにするべくの詠唱。


「源は魔血解放、役は属性反転・極大解釈・霊獣使役……果は炎蛇使役(サラマンドラ)


 二重身は左手に握りしめられた魔剣を使い、術を構築。魔剣から現れる、燃えさかる炎蛇を再び使役し始めた。それは俺が一番最初にソイツにたたき込んでやろうとした魔術。

 おそらくやられた仕返しのつもりだろう、間違いない。なにせ顔が陰険そうだ。


 迫り来る大蛇、落とされた魔剣。前回の仕返し。

 ……わかる、コレでアイツと同じように(・・・・・)コートで防げば俺は死ぬ。いや、殺さないまでも戦闘不能だろう。

 なにせ、アイツは俺だ。俺と戦い方が同じなら戦術の組み立て方はアレに近い。

 ――詰め将棋(キツネがり)


 手からこぼれ落下していく魔剣を、地面すれすれで蹴り上げる。空中で回転する刃。それを術を紡ぐのと同時に、袖に仕込んでおいた呪紙を持ち左手で触れ、術式を発動。仕込んだうちの一枚に呪紙は燃え尽きた、触れた勢いでさらに回転を掛け宙に続けて浮かし続ける。


 無詠唱で即座に扱う魔術。源は魔血解放、役は属性反転・拡大解釈・従伏退散。簡易の限定的な耐火魔術、焔薙ぎ(アンチフレイム)の魔術。

 炎を扱う魔術師である以上、耐火魔術(ファイアレジスト)は基本中の基本。ではあるが、それでも単純に炎そのものを扱えない俺には難易度が高い。だからこそ、俺のコートは素材としても魔術的にも耐火に優れているものを使っているのだ。

 実際に魔術を使用せねばならない事態では、簡易な魔術に限られるが、予め術をある程度あえて未完成のまま構築しておき、札や紙などに描く。こうして回数が制限される使い捨ての道具ではあるが様々な応用が利く状態にしておくのだ。

 そのうち、一枚を焼き捨てる形で俺は術を構築する。


 炎薙ぎの術式を発動させた宙を舞う刃は、迫り来る巨大な炎蛇をいとも簡単にバラバラに切り裂く。その回転を続ける魔剣に対し、左腕を翻す形で、仕込んでいたもう一枚の呪紙を掴んだままの形で握る。

 入念に防備され、決定的なダメージを与えるのに適さない炎。回避する手段が幾重にも想定されていることが互いにわかっているはずの攻撃手段。

 では、なぜ火炎で攻撃を仕掛けたか。簡単な話だ。

 ――放たれた火炎は攻撃ではなく、目くらまし。


 炎の大蛇がかき消され、現れるのは投合されたであろう飛来する三本の小さな杭。

 そして、それに追いつかんほどの速度で迫る、二重身。

 二重どころか、三重の仕留めるための一手。

 俺の組み立てる戦術は予測出来ない奇策じゃない。予測されたところでどうしようもない、相手を追い込むための追い詰め続ける次の一手のための攻撃の連続。最後の最後で仕留めるタイミングを計るだけの作業。

 それが狩人の戦い方にして……娯楽までの繋ぎ。


 必殺技なんて狩りにはいらない。炸裂杭撃ち(パイルバンカー)なんてのは、勝ちが決まってからの遊びだ。あれが決まる段階なら、別に魔剣で串刺しにすればいいだけの話。

 そう、俺にとって殺し方なんてのはもう遊べる段階のことで。狩りってのはそこまで追い込むまでの戦術と手段をいくつ用意出来て、どんな順番でどう組み合わせるかってことでしかない。

 どう殺すか、どう遊ぶか、それを楽しみに凶器に狂気を乗せ、その命の重さを量る。仕留めるまでの苦労が多ければ多い程、殺す時、愉しい。苦労が報われるその一瞬のための努力と作業、思考と苦心の積み重ね。

 

 きっと、なんにでも同じ事が言えるのだろう。仕事でも遊びでも趣味でも。成功や完成した瞬間のために頑張っているとも言えるし、それまでの苦労が面白いとも言える。俺の場合、それが狩りだっただけだ。

 それを実際にやられてみると、ま、笑えないんだけどな。自分との殺しあい、おもしろいかと思いきやつまらない、どう殺しに来てどう殺しに行けばいいのか、まるわかりだ。


「意外と退屈だな……二重身(おれ)

「そうだな、俺。だから、さっさと終わらそう」


 言葉を交わすことの出来ないはずのわずかな時間。

 確かに俺達は意思を疎通出来た、言葉なんて必要なく。刃と刃のぶつかり合いによって。


 感覚で判断、今飛んできている杭に炸裂の仕掛けはない。アレはどうやるのか、今の俺には思いつかないが、後で考えれば分かる程度のネタだろう。それでも、おおよそ手間の掛かる仕込みなのは分かる。

 右肩が上がらないため、腕一本で出来る対応を強いられる。対応は困難、俺は武道に関しても魔術に関しても天才ではない。ただ異能に恵まれただけの凡人だ。

 では、どうするか。

 喰らおう。その攻撃。


 呪紙が燃え尽き、同時に思考が加速する、冷たいなにかが頭を流れる。なによりも熱い猛りが全身を支配する。

 そう、この世界は……真紅だ。なによりも紅く美しい、それが世界だ。これが俺の生きる戦いと狩りの世界だ。


 ……俺はおよその目測で杭が当る位置を予測、瞬間的に硬化するかどうか、しかし、当然、それは万全なモノになり得えない、強化された膂力による投合を防ぐ程の強度は生まれない。その案を棄却、次善の策を採用。

 きっちり、三発が直撃。ダメージを受けるのを前提に、全身の筋力を増加し弾力性を高めた上で、損傷部位の骨の強度を増加。

 ぎりぎり戦闘に支障はない程度に抑える事に成功したと判断し、二重身を迎え撃つ。


 視界に入る事実から情報修正。現状の状況は悪化。

 高速での思考は相手も行っているだろう、判断は向こうも正確だ。さらに相手の状態が認識よりも良いコンディションにある様子、鮮血沸騰を併用しての身体強化がされている上に、右肩が回復されている。

 相手の肩には金属の破片が存在しない、だが一方こちらには破片が刺さったままだ。この状態で相手が回復した場合はこちらが回復が適用されないと言う理屈(ルール)なのだろう。

 ようするに金属の杭での攻撃を多用したのは、相手は回復出来ないが自分は回復出来る、と言う状態を作るための布石。恐らく、その上で増血剤の服用をし持久戦に持ち込んで、短期戦で決めようとするであろう(・・・)俺をいなして、無力化しようと考えたのだろう。


「まったく……いやらしいことこの上ないな!」


 俺は相手の一撃を剣で受け止める。斬ると言うよりは、激突させられる血汐閖咲。さらにそれを全く同じく血汐閖咲で受け止める。

 銀色に輝く美しき凶器は、今の俺には紅い血に染まるような刃に見える。

 刀匠の長い年月を経て、積み重ねられた歴史ある技の結集。計算され尽くした数百数十万の魔術の結晶。それがへし折れるんじゃないか、と言う程の衝撃。

 定跡としては、背後にその攻撃を受け流すことでその力を霧散させ、押し負けや身体へのダメージを減らしたいところだ。

 だが、残念ながら背後には護るべき、有卦キツキがいる。それは不可能だ。

 

 ……と、思っているだろうなあ。


 俺は避ける、素直に。

 力を抜きすぎない程度に、適度に力の流れに任せる。歓喜の鳴き声と共に軋み、火花を咲かす刃達。

 見惚れてしまう程に、俺の愛刀達は華々しかった。

 それが俺の頬を掠めていく、その刃が肉を攫っていく熱さすら愛おしい。交差する形で、二重身を斬りつける俺の握る魔剣。予測外の動きに、まともに胴体に入っていく刃。

 硬化と対怪物クラスの防刃繊維のコート、その相互作用によって切り裂かれることはない。それでも十分に、人を超えた膂力による一撃は斬撃ではなく衝撃という形で、ダメージを与える。


 それでも、なお、二重身を行動不能に追いやるには至らず、俺はとうとう積み重なるダメージによって、それを追うことが出来ないまでになった。キツキに迫る、二重身を止められない。

 このまま斬り合えば、勝負は未だわからない。全体的な血液の保有量としては、依然として俺の方がかなり上だ。損傷は多くとも、使えるエネルギーの総量が大きい以上、逆転はありえる。

 撃ち込まれた杭は、俺の作りだしたモノ。それを分解する術もまた、俺は持っているのだから。単純にバラバラとなった細かい破片を、戦闘中という状況では瞬時に取り除くことが出来ないだけのこと。


 こういった不確定な状況で俺の取る手は、二つのうちどちらか。確実に勝てるように戦術を組み立て直すか、それが見いだせないなら逃げるかだ。

 ここで俺が取る戦術は、まずキツキを人質にする。そして、俺を殺すか、俺が追ってこれない程度にダメージを負わせて逃げるか。この場合、どちらにしてもキツキは殺される。

 

 やばいよな、うん。この状況やばいだろ?

 じゃ、お前はこう疑問に持つはずだ。

 なぜ、赤霧咲斗(おれ)がこんな下手を打った、とな。

 はい、残念~。お前が真実に気付くのは全てを失った後だよ、てめえの敗因は喋りすぎだ、馬鹿。


「ぐげゃやあああぁっ」


 突然、顔面にとてつもない衝撃を受けたような気がして、悲鳴を上げながら地面を転げ回り悶える。幸い、狂的覚醒(トランス)によって痛みはないが、鼻の音が砕け散ったような音がした。おそらく、頬の骨まで同時にイカレたと思われる。

 なんで? 不思議?

 やべえ、鼻血凄い勢いで止まんねえ。涙も鼻水も全然吹き出すように止まんねえ、なにが起きてんの? なに、どうした俺? これってすげえミステリィ。

 ……いや、原因わかってんだけどな。


 悶える俺が空を仰ぐようにして、顔面を押さえていると、空を飛ぶようにして暗緑色のコートを羽織った誰かが、マントをなびかせるようにしてスクリューしながらぶっ飛んだ。

 残念ながら、それは俺だった。

 ……これってマジ、ミステリィー。

 いや、なにが起きてんのか、すげえわかってんだけどな。ただ認めたくないだけでな。


 なにかが地面を転げ回った挙げ句、なにかぶつかる音がした。同時に俺の頭蓋骨が軋んだ。ひびが入ってなければ幸いだ。


「って、なに顔狙ってんだよ!」


 俺は起き上がる……いや、立てなかった。

 自分に妥協、這うように見上げる。

 もちろん、そこにいたのは魔術の化身(マジックアバター)こと。

 ぎりぎりの状態で、なんとか復活した有卦キツキその人《?》だった。


 それはそれはもう、輝くように獰猛な笑みで牙を剥き出しにて魅せ、見せて。

 露出の多くなった、結果ややセクシーになってしまった普段着を身に纏い、殺意満々に、ズタボロ雑巾のようになった()達を見下ろしていた。


「とりあえず、どちらでもいいからそのムカツク面張ったおそうと思ってさっ」

「いやいやいや、どっちを殺す気だよ、お前っ!」

「なに言ってんのっ、赤ちゃんっ(ベイビー)。どっちでもいいじゃんっ。どっちでもいいから攻撃したら死ぬでしょっ?」

「……だれがベイビーだよ」


相当、怒ってね? コイツ。

 いやいや、今まで俺お前のこと護ってたんだよ。いや、殺そうとしたのも俺だろうけどさ、この状況見たらみんな混乱するじゃねえかよ。

 この状況、かなりすごくやばいくらいにミステリィー。

 ……てか、俺死ぬんじゃね?



 *



「えーと、ここは?」


 ぼくは辺りを見回した。

 恐らく、フツー大神さんの部屋に入ったはず……。

 なんだけど、周囲はどこまでも黒くまっ暗な空間。

 それは、手を繋いだ状態で背後に続く、大神さんの双眼にもよく似ている。まぁ、双眼というかただ窪みなんだけどね。


 奇妙なことに、灯りの存在しない暗闇の中にいるはずなのに。自分の姿や、背後の大神さん。

 そして、目の前にいる大神アスカと同じ姿をした彼女の姿ははっきりと見えるのだ。

 ……不思議だねえ。


「あなたはもうここから出られない」


 彼女はぼくにそう告げる。

 ぼくの意思など、関係ないと言うように。

 ……ちょっと気に入らないかな。


「えーと、ぼくの質問に答えてはくれないの?」

「あなたの目的はわたしをその会話に組み込んで操ることでしょう? 残念だけど、あなたを残してわたしは消えるわ。すこし、忙しいから」

「それは確かに残念、ぼく君と話すの好きなのに」

「わたしも残念……全てが終わってからゆっくりとね」


 本気でぼくと話す気などないのだろう。

 ゆっくりとその闇に解けるようにして消えていく、彼女。

 しかし、ぼくは怖くはない。なにせ独りぼっちではないからね。


 ぼくの表情を見て、なにを思ったのか怪訝そうな顔をしたけれども、結局、それ以上口を開かずに消えていった。

 ふむ、どうしたものかな。

 

 とりあえず、アレだね。


「彼女、後ろの大神さんに気付いてなかったっぽいなぁ?」


 これはおもしろい発見かもしれない、なるほどなるほど。

 ぼくはますますその握っている手が、頼もしくなる。色白で華奢なその手はどう考えても、ぼくを護ってくれるものではないんだけど。

 そんなことはどうでもいい、女の子の手を握っている男は強くなきゃね。せめて気持ちぐらいはさ。


「さて……」


 ぼくは周囲を見渡す、完全なる漆黒の世界。

 声の響きから、部屋の広さがわかるかと思いきや、そう言った概念が通用する空間ではなさそうだ。音は間違いなく出ているのだが、響いていると言う感覚が気薄。かといって音がこもっている訳でもない。

 

 こりゃあ、アレだね。例えるなら……。

 ……うん、それはそれとして。


「――辺りに目印になるもの無し」


 では、助けは呼べるかな?

 はい、無理です。

 携帯の電源、なぜか入ってません。


 充電はバッチリだったはずなので、壊れてるんじゃなければ純粋にここじゃ使えないんだね。ここに入る前に、赤霧先輩に連絡したしね。高確率でここじゃ使えないと判断。

 あー、これじゃ巫月所長呼べないや。ま、いいか。電話したら、まずなぜ危険なことしてるって怒られそうだし。怒られたくなかったから、電話したくなかったんだよね。

 うん、非常事態に電話して上手くウヤムヤにしようかと思ったのに。惜しいっ。


 ぼくは鞄を漁る。

 使えるものはいくつかあった。異空間を脱出出来るような便利アイテムはないけど、異空間に異常事態起こせるぐらいの禍々しい呪物はいくつかあったはず。上手く使えば、この空間を悪霊でいっぱいにして、空間の持ち主の制御下から突き放すくらいは余裕だろう。

 なんだったら、キツキさんの牙、また刺せばいいや。助けてくれないかもしれないけど、巫月所長に報告くらいはしてくれるだろう。

 ……ありゃ?


「鞄の中身空っぽだねえ?」


 中身、どこだ?

 全部、鞄の中から出すとやばいものばっかなのに。あえて言うなら、某ホラー映画のビデオテープが触るだけで呪い発動するぐらいのレベルで。

 即死しないしね、せいぜい一週間以内に死ぬ程度の呪いだから、そこまでひどくないんだけどね。治すのも簡単だし、きちんと準備してやれば誰かに代わりに呪われてもらえばいいだけって言う程度の呪いだから。


 ぼくは空っぽの鞄を空いている手で振り回しながら、考える。

 この状況、どう解釈すればいい? どう考えるべき?

 希望や絶望なんてわかりやすいもの、少なくともここには無いようだった。



 基本的に登場人物頭おかしいかも、と思ったりしています。

 身近にいたら、反応できないレベル通り越して、認識を拒否するレベルですね。

 執筆、お待たせしないように頑張ります!

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