第7話 監視という名の過保護
どうしようもない物語はさらに……。
わたしにとっての当たり前の日常がいとも簡単に崩れ去った頃。
わたしにとっての当たり前が、当たり前でなくなってしまった頃に、わたしは遠野を好きになった。
それまではただの背景でしなかった彼が、いつかのあの娘と同じように、どうしようもないくらいに思い焦がれる対象になってしまった。
なぜか、と聞かれれば困る。
きっかけはいくらでもあるんだろうし、ないと言えばまったくない。
誰に対しても分け隔てなく付き合えると言う、わたしの理想によく似ているようで、その実、誰一人付き合えていない彼は、わたしにとって好きになりようがないはずだった。
父やカナのような、誰もが羨む太陽のような人をわたしは好きになるのだと、そう思っていた。
それが、どこをどう間違えてあんな冷たい人を好きになったんだろう。
太陽なんかとは全然違う、かといって月のようでもない。雪のようでもなく、氷のようでもなく、身を切るような寒さでもなく……そう、言うなれば彼は温度がないと言う意味で冷たい人間だった。
間近にある太陽の熱にうなされている人間には心地良い、そんな冷やかさがそこにはあった。それが好きになった理由か、と言えばそれもまた違うわけなんだろうけど。
でも、きっとおそらくそんなものに理屈なんてないに違いない。
自分に欠けているものを補う、自分と同じものを求めて、そんな理屈はいくらだって付けられる。でも、そんな理屈になんの意味もない。
わたしは彼が好きになったのだ。
……いや、違う。
好きに――なってしまったのだ。
わたしのこの想いがどうしようもなく叶わないものなのは知っていたから、それは仕方のないものとしてわたしは受け止めた。
同時にわたしは諦めようとしても絶対にできない自分に、そこそこ気が付いているほどには賢明であったので、せめてすこしでも彼の傍に居られるように振る舞った。
一秒でもながく隣に。
一言でも多く言葉を。
一瞬でも早くその姿を。
出来るだけ、出来るだけこの目に映せるように。
友達には他の相手を探せと言われた、他の相手に恋をして忘れろと。
わたしはまったくそれを相手にしなかった。
ほかの相手でなんとかなるなら、最初からなんとかしている。どうにもならないから、彼が好きなのだ。どうしようもない相手だとか、そんな理屈はいい。彼以外にはわたしはどうにもならないのだ。
そこをほかの相手で誤魔化しても無駄だろう。仮に誤魔化せても一時のことだし、だいたい相手にも失礼だとわたしは思う。
そんなことをカナに言ったら、「相変わらず、お堅いね」って笑ってた。
……カナだけが、わたしを止めなかった。
それはなぜかはわたしにはわからないのだけど。
どうしたって、理解はできないのだけど。
少なくとも、わたしはそれが有り難かった。
そもそもわたしは不幸だったわけじゃない、遠野がわたしを好きにならないのは理解していたけど、悲しくはなかった。
寂しくはあったけど、悲しいとは思わなかった。
どちらかと言えば、幸せだったかもしれない。
なぜ、と言われても困るんだけど。どちらかと言えば、わたしは幸せだったのだ。
だって少なくとも、遠野が他の誰かのものになるなんてことは絶対にありえなかったんだから。
この時には、それがわたしにとって新たな当たり前になっていた。
それは高校に上がって早々に崩れることになる。
わたしにとっての二度目の当たり前は、随分と寿命が身近かった。
軋呑ハミ……。
学校が始まってしばらくしてから、なぜか来なくなった彼女は……変わった。学校に再び通い始めてからその振る舞いを変えた始めた。まるで別人のように。
クラスで、いや校内でもかなり優秀な成績を持つ彼女は、それ以外の様々な意味で人の目を惹くような彼女が、今度は悪い意味で人の目を惹くようになった。
それだけなら、わたしは別によかった。
よくはないけど、彼女をただ注意したり、あるいは嫌いになるだけでよかった。
でも、そうはならなかった。
彼女はいつも、遠野の隣にいたから。
絶対に人を寄せ付けないはずの彼に、人の目を惹くことのないはずの彼に、どうしようもないくらいに思い焦がれるだけ、誰もがそうだと思ったのに。
わたしの幸せはこの日からなくなった。
彼がそう言う人間だと、わたしが諦めていただけなんじゃないか、本当はあったはずの可能性をわたし自身が勝手に決めつけて消してしまったんじゃないか。わたしはそんな考えに至ってしまった。
わたしにとっての当たり前がまた崩れた。
相変わらず、わたしをろくに認識しない彼を毎日再確認し、軋呑にだけ笑いかけ話しかけ一緒に食事をし、共に連れ立って歩く彼を毎日見て。
すこしでも、彼の傍にいたいわたしは一日に何度もそれを眺めて。
なにもかもがどうしようもなくなりそうな中。
カナだけがもう、わたしにとっての支えだった。
*
巫月は待っていた。
キツキが遠野を連れて、巫月個人調査事務所へと訪れるのを。
キツキから遠野は無事であるとの連絡を受けてはいたから、その安全については心配してはいない。その上、キツキは間違いなくその安全を確実なものとするために、ここまで遠野を連れてきてくれると言う、信頼もある。
とは言え、巫月はキツキに対して、ここに連れて来いと指示したわけではない。それでも、巫月はキツキが必ずそうすると確信していた。
キツキは狩りを行うことに関しては非協力的だ、キツキは人の都合で怪物とされたモノ達が狩られることを良しとしてはいない。
かといって狩りを否定することもないが、常に狩人による一方的な殺戮となるそれを公正でない、とそう感じているようだ。
そう、たいていの場合、狩人は圧倒的なまでに有利だ。
怪物とされるモノ達は絶対的な少数派であり、数の暴力で単純に圧倒される。もし、狩人を撃退してもそれが昼夜問わず、二十四時間交代で毎日襲い掛かってくるのだ。どれだけ強くとも必ずどこかで限界が来る。
また、狩られるモノ達は必ずしも超人的な戦力を有しているわけでもない。むしろ、普通の人間と同等、もしくはそれ以下の力しか有していないのが大半だ。
そして、数少ない力を有するものは、力を有しているが故に勝ち目がない。この長い年月の間に人間は……狩人は自らを超える怪物を、確実に殺せるシステムを完全に確立している。
強ければ強いほどその強さ故に名は知れ渡り、世界にとどろくほどに有名ともなれば、たったその一つの個体を殺すためだけに、魔術や武器、戦術が創作され、それはすぐに最前線で戦える手練の狩人に、時には同じく狩られる立場にすらあった『猟犬』へと渡される。
いまや人は神に対してですら、時間と手間さえ掛ければ一方的な暴虐が可能なのだ。
神殺しための狩りの手順は、紀元が刻まれる前に確立されたような、遠い昔の出来事なのだから。
そんな不平等な世界のなかで、キツキはなにに対しても公平だ。怪物とされるモノ達の立場を同じ目線で理解し、人間には人間の都合があることを知り、その双方の安全や生存を守ることに現実的な範囲で手を尽くす。
彼女にとってはどちらも同じ……生物だからだ。そこで競争が発生するのは当然だと人ならざる視点で、等しく扱う。それに例外があるのは、彼女個人の好悪と言う感情が入るときぐらいだ。
好きなものは好き、嫌いなものは嫌い。真に平等な主義であるからこそ、嫌いになることも好きになることにも呵責がない。
人間は可哀想だと言って、生まれた姿境遇が一般と違う者を、まるで嫌ってはならないかのように、好きにならなければならないかのように扱う。もちろん、その逆もあるわけだが。
彼女にとって、それは差別であり不自然だ。相手がなんであろうとその評価は等しく下される。
好きなものは好き、嫌いなものは嫌い。それがどんなに一般的に不幸で恵まれない状態にあろうとも、彼女は自分に嘘をつくことも、相手を可哀想だと哀れみ貶めることもない。
だから、確実なのだ、彼女はその評価を下す前にその命を見捨てはしない。その評価を下す前の存在を護るためなら彼女は信頼出来る。遠野や一般人を護ることに関しては熱心に働き、最善を尽くしてくれる、と。
……少なくとも嫌いになるまでは、だ。
それでも、万が一その瞬間が来てもその公正さで持って、ある程度は安全に対応はしてくれるだろう。
そのためこの時、巫月はまったく焦ることはなかった。
遠野の安全が確認された時点で、問題はないそう判断していた。
「……本来なら昨日の時点で、遠野を拘束しておくべきだったんだろうがな」
そう、巫月は呟いた。
むろん、それは独り言に過ぎない。
いや、過ぎな――かった。
「でもぉ、あの時点ではトオくんが傷つけられる可能性は低かったんだしさぁ、仕方ないんじゃないのぉ?」
「――――っ!?」
事務所の扉が開かれると同時に、放たれたのは間延びした声。
「気持ちはわかるけどねぇ、トオくんは大丈夫だよぉ。……ヘタにあの『すとーかーども』を刺激しなければ、だけどぉ」
「……ハミか」
目の前にいるのは、可憐と言うべき一人の少女だった。
どこにでもいる、と言うのははばかられるような容姿ではあった、巫月が知る限りハミほどに可愛い容姿の女の子はそう多くない。
だが、どうしようもなくそんな印象を抱いてしまうのだ。どこにいても目を惹く、しかし矛盾するようにどこにいてもおかしくない少女。
言うなれば、テレビにあらゆるジャンルの番組に出演しても違和感がない、ありふれているようでそう多くはない、有象無象のメンバーに埋もれてしまうような、特筆した個性のないアイドルのような可愛らしさ。
軋呑ハミはそんな雰囲気を持った少女だった。言い方を変えれば、どこか身近さを感じさせる華やかさがあるとも言える。人に距離をとらせない親しみやすい雰囲気だと。
見た目には何一つ、恐れる要素のないそんな少女だった。
だが、巫月は知っている。それが、錯覚にしか過ぎないことを。ハミ自身が自らのその容姿を完全に擬態として使いこなしていることを。
そもそも、ハミが巫月にまったく気付かれずにここにいること自体が異常なのだ。
この事務所は二階にあり、ここに来るまでの階段は必ず昇る際に軋む音を立てる。それだけでなく、本来ならここに近づいて来る時点で、巫月に気付かれるはずなのだ。
そのための仕掛けが、この事務所の周囲には張り巡らされている。
ここは魔術を含めたあらゆる手法で仕掛けられた、警報による罠が備えられた事実上の小さな要塞だった。ここにある罠はその全てが存在することを不自然でない偽装がなされている。
いや、偽装という言い方が正しくないかもしれない、なぜならその罠はその辺にあるものを、石ころ、空き缶などのゴミ、壁にされた落書き、などを利用して作られているからだ。
仮にこの周辺に罠があると知識があったモノが侵入しても、それを罠だと認識するどころか存在していることすら見逃しかねない。そして、それは命取りだ。
近辺の標的のその『現在位置』を正確に知るだけで殺せる、そんな手段がもしあるのなら、いつでも単なる警報装置はいつでも死を招く罠になりうるのだから。
だが――軋呑ハミはその一切を作動させずに現れた。
「……キミが一人でここに来るなんて、どういう心境の変化だハミ?」
「ん~、別にぃ。たいしたことじゃなくてぇ、ちょっち所長さんに聞きたいことがねぇ」
むろん、警報装置とて万能ではない。その全てを突破しうる特性を持ったモノも世界には存在するし、その罠全ても気が付いているのなら、避けることは容易だ。
しかし、絶対に偶然全てを避けて来てしまうことはありえない。あるとすれば、それはよく整備された回転式拳銃に弾丸6発詰め込んで、博打射ちをし連続で6回引き金を引いて弾丸が放たれなかった、と言うくらいに馬鹿げた可能性だ。
そこまでいけば……強運なんてレベルではない。少なくとも、机上ではその可能性は零だ。
「とは言えそんな馬鹿げたありえない可能性を、平然と『偶然に』現実にしてしまうような大馬鹿が世の中にはいるんだがなあ」
「……ん~? なんの話ぃ?」
「いや、こっちのことだよ。それよりもキミが聞きたいこととは?」
巫月はへたに話をそちらに向けることなく、彼女の求める本題へと頭を切り替えた。
ハミがその間延びした口調とは相反して、そう気が長くないことを知っていたのだ。彼女は無駄なおしゃべりは嫌いではない、だが自分の言葉が無視されることはひどく嫌がる。
「この一帯でキミが知ることが出来ないことなどそうはあるまい、そのキミがわからないことなど想像つかないが?」
「まあ、ねぇ。でも、世の中には知識がなければ理解できないことってあるからねぇ、仮にこの世にある書物すべてを読むことが出来る立場の人がいたとしてもぉ、読んで理解できるかどうかは別の話でしょお?」
「書物か、それは言い得て妙だな。言語の壁もあり、禁断の知識……魔術書に至ってはその殆どが暗号化されているからな」
「だいたいハミがわかるのは、今現在なにが起きているのかぐらいだしねぇ。そこから今までなにがあったのか推測は出来るけどぉ、推測は推測にしか過ぎないしぃ、なにが起きているのかはわかっても、それがなんなのかが理解できないからねぇ」
「それだけ理解できれば十分すぎるだろう」
「まあねぇ、お陰でいつどこに誰が何をしているのか、誰と一緒にいるのかすぐわかるよ? 知ろうとする限りはねぇ」
「ほう」
要するにハミはこう言いたいのだ。
遠野が今どこでなにをしているのか、誰といるのか、自分はいつだって知っているぞ、と。
「……なにも私に威圧を与える必要もあるまいに」
「なにか言ったぁ?」
「いや」
なんだろうか、ハミはキツキを遠野の元へ送ったのが気に入らないのか?
巫月はそう疑問に思う。
確かにキツキは遠野に興味を持っている、だがそれは同じようにハミにもだ。彼女は人間のその一個体に興味が限定されない。
事実、ハミはキツキとはそれなりに打ち解けている、少なくとも表面上はそう見える。
「あ~、でも本当にハミも思うよぉ、所長さんといっしょだよ」
「……なにがだ?」
「いや、さっき言ったじゃん? トオくんを昨日の時点で拘束しとけばよかったって」
「……ん、ああ、確かに言ったな」
だが、あの時点でそれは逆効果だ。
一度でもそういうことをすれば、その可能性を考慮して今後遠野が動くようになる。今回はよくとも、一度でも警戒させてしまえば次に遠野の安全を確保することが一層困難になるだろう。
それに、あの時点では遠野の危険は少なかった。本当なら送り犬の出現程度、キツキが動くことでもなかったのだ。
万が一の場合でも、遠野に渡した呪具が機能すれば送り犬の攻撃ならばある程度の時間があれば防げる。そして、稼ぐ時間は僅かでもあれば十分なのだから。
……余程のことがない限りは。
「それでも、そうしなかったのは私の甘さなのだろうな」
結局のところ、私は誰一人、ここにいるメンバーを制御できていないのだ。……私自身も含めて。
「ま、仕方ないよ。トオくんの動きが読みにくいのはいつもだしぃ、今回は二重身が二重どころじゃないなんてこともあったからさ」
「……それは可能性として考えられたことだ」
「それでも、だよ。二重身がどう動くかは動いてみないとわからない、人が封じ込めた自分の可能性なんて、無数に存在するんだからそのうちのどれが出現して、どう動くかなんて予測しようがないよ」
それはその通りだ。
だけど、まさか……異なる複数の可能性が遠野に執着を見せるなんて。
「異なるって言うけど、結局は同じ人物の……だからねぇ、ある意味当然っちゃ当然なんだけどねぇ。まぁ、絶対に予測できなかった事態だ、と言えば嘘になるのかなぁ」
「……だからこそ、私には遠野の安全を確保する義務があった」
「だから拘束しておけばよかったって? まぁ、そこは同意するんだけどねぇ。トオくんったら無茶するからねぇ、本当ならトオくんの両手両足切り落としてぇ、大事に二十四時間保護したいくらいだよぉ」
「それはもはや拘束とは言わない」
「身動き出来ない状態のトオくんを想像するだけで楽しくなっちゃうなぁ、完全に独占状態だよねぇ、誰の目にも触れさせないってすごく甘美な響きぃ」
「誰にも姿を見させないのは共通しているが、明らかに私とは目的が違うよな?」
……よく遠野はこのハミを上手く扱えるものだ。
どう考えても、遠野の最期がありありと想像出来るような、そんな発言しか聞こえてこないように思う。これをどういなしてるんだ、奴は。
「あ、もちろんアレだよぉ? 切り落とした手足は後でスッタフが美味しくいただきましたぁ、みたいなぁ? ……血の一滴たりとも無駄にはしないから安心してねぇ、所長さん」
「……心配しているのは間違いない、が少なくともそちらの方ではない」
いや、遠野は本当に上手く扱えているのか?。
巫月にとって、もはや二人が日々どんなやりとりを繰り広げているのかは、理解の範疇をはるかに超えていた。
「ま、腕なんか取っちゃったら手も繋げないしぃ、抱きしめてもくれないしぃ、足なかったらお姫様だっこも出来ないしねぇ」
「……と思ったらなんとなく見えてきた気がするな」
意外と柔軟に柔らかく対応しているらしい、もしかしたら軟派という意味で柔らかい対応なのかもしれない。とは言っても、実際に実行しているかどうかはまた別の話だろう。
「それで、所長さん。話は戻して質問なんだけどねぇ、ちょっと教えて欲しいんだけど」
「答えられる質問なら」
「あ、大丈夫ぅ。全然たいしたことじゃないからぁ」
たいしたことではない。
ハミはそう言うが、巫月はこう見えてハミがかなりの知識を有していることを知っている。その知識を有効に行かせるほどにその能力が高いことも。
そのハミが質問することなど限られている。ハミの知識にないこと、巫月に聞かなければ、知りようのないこと。
それは……怪異か魔術に関することぐらいだ。
「あのねぇ、大神アスカのことなんだけどねぇ」
……やはりか。
「ああ、なにが聞きたい?」
巫月はその質問の内容をある程度想定しながら、その質問に耳を傾ける。
――が。
「どうやったら………………ぇるの?」
「……なんだって?」
「いや、だからぁ、どうやったら………………ぉせるの?」
別に聞こえなかったわけではない、意味が理解できなかったわけでもない。
聞こえたからこそ、理解できたからこそ、巫月は聞き返したのだ。
「いやぁさ、どうにも自信がなくてさぁ、だんだん増えてくるしぃ、いまいちね手応えがなくてぇ。どうせやるなら確実にやっときたくてさぁ。別に全部やっちゃってもいいんだけどぉ、それでおっけーなのかどうか確認をねぇ」
「確認?」
「そう、所長さんに聞けば確実でしょ。だから教えて」
ハミは再び、言う。
次に聞き返すことは巫月には出来ない。
「ねえ、どうやったら大神アスカを殺せるの?」
軋呑ハミは巫月に頼んでいるのではない。
ハミは遠野のためならなんでもする。だからこそ、自分に拒否を許そうとしないのを巫月は知っていた。
愛されてるなぁ、遠野。って話。