鐘の鳴る街
「返せ! バカ犬!」
黒い木のボールを加えた犬を追いかけていた。そして息も絶え絶えだった時、金属の鈍い音が街に響いた。
犬がボールを落とし、立ち止まる。俺はボールを必死に掴み上げ、息を吐く。
そして顔を上げると、街が静かになっていた。
空は曇り、黒い鳥が飛び回っている。
いつも揶揄ってくる露店の店主が呆然とした様子で丘の方を見上げている。
「ああ、姫様!」
笑顔が綺麗なお姉さんが、突然涙を流して蹲っている。
「皆? どうしちゃったの……?」
俺は犬と触れ合うように立ち、急変した街に冷や汗をかいていた。足に犬の温かい身体が押し付けられているのを感じる。
そして街のみんなが同じ方向に歩いて行った。
犬と共に取り残され、犬と顔を見合わせる。
「何があったの? ついていこうか」
犬に言って歩き出す。俺の傍に犬が付いてくる。
そして広場にたどり着いた。
いつもは吟遊詩人が歌ったりハーモニカを奏でてたり、ベンチで男女が談笑してたり、俺たちのボール遊びの場にもなってたりともっと賑やかな場所だけど、今は暗い。人はいつもより多いのに、活気がない。
白い服を着た一団が広場の中央にいた。
時々街にやってきては僕らにパンを振る舞ってくれたりする人たちだ。いつも優しいけど、パンの量が物足りないんだよね。
その中から一人の男性が前に出てきた。赤い布を服の上に巻き、ひげも腰まで蓄えている。
彼は手に持っていた羊皮紙を広げると、言葉に詰まりながらも読み上げた。
「先ほど、……姫様が亡くなられた」
その言葉で皆が俯く。
「姫様が? 死んだ?」
俺はぽかんと口を開いてしまった。あのかっこいい姫様が?
犬もクーンと悲しそうに鳴いた。
「姫様はこの国を想い、この街のために戦い、その身を犠牲にした。西の沼地で患った病にも諦めずにいたが、ついに力尽きた」
俺は他の人たちと同じように、言葉を呆然と聞いていたのだった。
***
やがて時が流れた。
姫様の墓が作られた。
そして俺は戦場にいた。
鎧を着こみ、長い槍を持つ。
周りにも俺と同じような格好をした兵士たちがいる。
そして沼地の奥に敵の軍勢がいた。
姫様に抵抗した蛮族ども。
俺たちが槍を構え、準備していると、遠くから鐘の音が聞こえた気がした。
「突撃ーーー!!」
将軍が叫ぶ。
俺たちは槍を構え駆けていく。
今度こそ、終わらせてやる。
お前らをこの地から消してやる。
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