最古の神
オオトノ2柱に誘導されいざなみと共に建物の中へ入っていく。
建物は周りの壁ほどではないが頭上の青を遮ってしまうほどには高く作られており、幅さえも今までに出会った神々が寝そべったところで余裕しかないほど広い場所だ。
「この建物は何のために築かれたのだ?」
「神々同士で混ざり合わないように分けるため。あとは…」
「力の衝突をできる限り防ぐためよ。」
男神の言葉に付け加えるように女神が付け足す。
これから会う造化三神は自分たちよりもいくらか上位の存在らしい。
その存在がいるだけで周りの実態はかすんでしまうから物理的な隔たりがあるのだ。
自分たちは会いに行っても大丈夫なのか考えているといざなみが声をかけてくる。
「どんな存在でも大丈夫。肉体がかすんでしまっても元のあやふやな実体に戻るだけだもの。」
「ああ、そうだな。」
だが、それは大丈夫になるのか。意識が芽生える前の状態を思い出してみる。
俺はどんな形だ。私は何を考えている。僕はどこにいる。自分は何ができる。
いや、疑問すら持てない。そんなことも考えられないから何もできないのだ。
実体がないから動けない。自我がないから思考しない。
認識できないから区別しない。生きていないから行動しようとしない。
その状態に戻ることは大丈夫なのか。
それは生きているのか。
新たな疑問を抱きつつ、目の前の2柱についていく。
建物に向かえと言われた、造化三神に会えと言われた。
次は何を言われるのだろう。
自分でもできることなのか。いざなみと共にいられるのか。
建物とは違い大きくはあるが目線を挙げるだけで視界に入りきる扉がある。
オオトノ2柱はこちらに振り替える。
「こっからは君たちだけだ。俺たちは行けない。許可されていないからな。」
「貴方たちは生まれた時点で許可されてる。入っても離散はしないでしょう。」
問題しかない発言を残して2柱は道を戻っていく。
質問はしなかった。彼らよりも扉の向こうから感じる存在感に意識を奪われるからだ。
いざなみが自分の背を押す。入ろうと意思を塗り替えられた気分になりつつ、扉を開く。
見た目に反して軽い扉はその中へ自分を誘導する。
中には壁よりも薄いが互いに視覚による認識を妨げる板のようなものがあった。
布とは違って板は形を一切変えず向こう側の形をうつす。
向こうも互いの間に板があるのだろう。距離をあけながら3柱の神がいる。
「やあ、やあ。よく来たね。私は高天原の…う~ん、王?主…うん!偉い存在だよ。」
「御中主。何も伝わっていない。もっと具体的にわかりやすくできないのか。」
「もっとかい?難しいことを言うね。私は全能ではないんだよ。できないこともあるさ。そう!例えば私の説明とかね。」
「2柱とも初めまして。少しは楽にするといい。椅子もなければ、茶もないけれど。」
「いや、いらないといったのはお前だろう。なんで申し訳なさそうに言ってるんだ。」
「そうだよ。ほら、見たまえ。困惑しているじゃないか。かわいそうに。」
「君たちのせいさ。造化三神とか偉い名前しておいて客をほっといて喧嘩しているんだから。」
造化三神は板越しに口喧嘩?をしている。
緊張をほぐすためか、この雰囲気が当たり前なのか。少なくとも演技といった雰囲気はない。
だが、この3柱はこれまでにあった神よりもずっと強く圧倒的だ。
造化と名乗る理由はあるだろう。誰かに教わったわけではないが彼らこそすべての始まり、規則であると。
ー実際、自然の法則、理を定めたのはこの3柱だ。
ほかにも2柱いるが彼らでも法則性を強めたぐらいで変えてはいない。
ほかの神はその法則の範疇で新しいものを作っただけ。
別枠なんだよ。存在自体が。
人間らしく言うなら製作者だよ。
宇宙はゲームでしかなく、プレイヤーはプログラム内でしか活動できない。
バグだってその仕組みがあるからできるんだ。
無い動きは出来やしない。
だから嫌なんだ。彼らを批難できない。してはいけない。
生き地獄ってやつさ。何のことかって?
読めばわかるよ。読み切ってくれるならな。