初の客神
初めての食事のあとは神域で休んでいた。長い時を神域で過ごしていたためイザナミも自力で外出するほどになった。互いの思いを話し一休みしてから高天原に行こうと決まった。
ただ、先生の件は気になるが、それよりも模擬自然について考えてしまう。
あの時は疲れていたため天之常立や角杙と活杙に会っていないのだ。
角杙と活杙はあの場所を気に入っているようだったし、天之常立の神域でもあるのだ。
その一部分と生物の消し飛ばしたとなると、さすがに罰があるだろう。
イザナミには関係のない話であったため、あの場所で起こったことは詳細には話していない。
もし、罪があり罰を与えられるなら僕だけにしてもらいたい。
高天原に行くことに不安を抱えながら僕たちは寝ることにした。
イザナミと部屋で寝ていると誰かが神域へ入ってくるのが感じられた。
イザナミも感じたのだろう。目を開けて外の様子をうかがっている。
外からやってきた者は正門から動かずにいる。
誰かがやってくるとは聞いていない、しかし、今の地球には神域に自力で入れる存在はいないはずだ。
「僕がみてくるよ。君はここに…いや上に行けるように準備をしておくんだ。」
「どうしてですか?一緒に見に行けば」
「誰かが分からないんだ。…元気になったとはいえ、まだ本調子ではないだろう。大丈夫、戻るから。」
イザナミを部屋に残して門へ向かう。
入ってきた時点で感じてはいたが、近づくたびに相手が神格であることを理解していく。
もしも角杙や活杙であれば先に行かせることだけは駄目だ。
他の神であってもこの状況で会いに来ることは理解できない。
今、可能性として高いのは高天原での出来事についてだろう。
何の説明もなくやってくる時点で嫌なことばかり考えさせられる。
やっと門が見えてきた。確かに門の近くには誰かが立っている。
土のように茶色くまとまりのある髪、一点を見つめ続ける黄色い両目。
…見た目は全く違うが、あの神は淤母陀琉だ。
驚きを心のうちに留めておきながらおもだるに近づいていく。
僕に気が付いたのか、こちらに目を向けて一息ついた。
「よお。どうだ元気になったか?」
「ええ、イザナミも問題は無さそうです。…それで一体、何の用でこちらへ。」
「落ち着けよ。悪い話じゃない。特にお前は喜びそうな話だ。」
「喜びそうな、いや、まずはその姿について聞いてもいいですか。」
「その姿?ああ、そういやお前には話してなかったな。俺は自在に姿を変えられるんだ。まあ、制限はあるが、色を変えるくらいは簡単だ。」
そう説明している間、おもだるの髪や目は赤、青、茶、黒と変化している。
髪や身長も僕よりも小さく、門よりも大きく変化しているため、制限があるとはいっても出来る範囲が大きいのだろう。
イザナミと同じ黒髪黒目で終わらせ、話について詳細を求める。
「制限についても気になりますが姿が違う理由は分かりました。次は僕が喜びそうな話について教えてほしいのですが。」
「聞くだけ聞いて興味なさげだな。話っつっても角杙と活杙は御中主から命を受けていなかったんだ。」
「はぁ!?では、教わりに来たこと自体を知らないまま合わせられたということですか。」
「そうなるな。御中主は先に伝えておこうとしたんだが、他の神に会った時に説明された方が良いと言われたらしくてな。」
「他の神、ですか。」
「それについては教えてもらえなかった。予想はつくがな。まあ、御中主から伝えられてないから傷つけてもいいとはならない。それなりの罰は与えられることになった。」
「…それが喜ぶ話ですか。僕たちに罰がないのはよかったですが、他の神が苦しむのを喜ぶほど悪い心は持っていません。」
「違うさ。いや、喜びそうではあったが、肝心なのはこの後だ。」
「この後…あの2柱に代わる先生についてですか。」
「な、なんでわかるんだよ。それもあれか、運命を見定める力のせいか?」
「運命…何の話ですか。ただ、流れ的に触れていなかったから言っただけです。」
「流れ的にって。いや、いい。合ってるよ。後任の先生についてだが、俺になった。」
「おもだる、ですか。」
「そうだ。なんだ嫌なのか?」
「いえ、いや、まあ、そうですね。」
「なんでだよ。教えるのが下手そうに見えるのか?」
「説明は上手な方だとは思いますよ。ただ、あの2柱に比べると力の在り方が遠い気がして。」
「ああ、そういう。間違ってはいない。だがな、お前は勘違いをしている。」
「勘違いですか。」
「俺は不備がないことが取り柄の神だ。異なる力を教えることも出来るに決まっているだろう。」
「………なるほど。」
「とにかく!伝えたいことは伝えた。妹さんの用意が済んだら模擬自然へ来い。この俺が教えてやる。」
「模擬自然で行うのですか?」
「は、イザナミ来ていたのか。」
「準備が終わってしまったので、呼びに来たのですが。この神が先生ということですよね?」
「話が早いな。この淤母陀琉が先生だ。好きに呼べばいい。それとあの2柱は模擬自然を出禁となった。」
「出禁ですか。今回の件があったとはいえ、突然ですね。」
「もともと話題には上がってた。今回が決定打になっただけさ。お前たちが気にするようなことはない。」
おもだるの色替えといい気になる話題が多かったが、イザナミが出てきたため続きは模擬自然で行うことにして別れていった。
あの神からは色んなことをすでに教わっているが、感覚で理解させてくることが多かった。
実際、それで出来たこともあるが、より繊細なことを学ぶことができるのか。
部屋にいたときとは違った不安ができてしまったが、後でわかることだ。
イザナミにおもだるから聞いた話を伝え、荷物を取りに部屋に戻ることにした。




