自分はだれ?
認識できたのは白、他には上の方に青
遠くの方では周りから遮断するように大きな壁があった
ーただそれだけであった。なんと寂しい空間であったか。
ずっと触れていたくなるような布を撫でていると近くで似た声が聞こえた
ー実はあの時には恋におちたのだろう。
振り向くと全体的に滑らかな輪郭で作られた生き物がいた
それが自身に声をかけていると気づいたのは、目線があってからであった
「ねえ、あなたはだれ?私の事、知ってる?」
自分がだれか、その質問により周りから自身へと認識の先を変えた
目の前の生き物とは違い一画に大きな角度があり、硬い質感である
ー肌触りは悪くはないが、節にあたるたびに止まるのは残念に感じていた。
肌に触れた後はずっと服を触っていたほどだからね。
質問に答えられるほどの知識がなかった
しかし、自身にしかわからず絶対ともいえる答えが一つだけ
「自分は伊邪那岐。これが名前だ。君のことは知らない」
ー可愛くないな、こいつ。もっと愛想よくやれないものか。
まあ、無理だな。生まれたての存在に社交性は難しすぎる。
地面を白と思えたように、上を青と思えたように
当たり前のような感覚で自分の名前を知っていた
しかし、目の前の存在、神のことは知らない
異なる形ではあるが魂の形は近い、ただそれだけで目の前の存在を認識した
「そお?私は伊邪那美。私はねあなたよりも一つだけ多くのことを知ってるの」
いざなみと名乗る神格は自分に近づき、右の手を取る
手を絡ませ合い、ゆっくりと目を閉じる
「私たちは運命。とっても強い縁でつながってる。きっと兄妹ね。」
「ああ~、間違ってはいないが、それだけじゃないぜ」
いざなみの言葉について考えようとしたが、別の声により思考が散っていった
ー先代はこの時から空気が読めない存在だった。
憎むほどではないが、たまに邪魔だと感じてしまう。
この時は何にも知らない無知の集まりだったから、とても助かったけどな。




