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大作戦! 閃激スパイシー★★★★★

しいなここみ 様主催、華麗なる短編料理企画への一皿です。

 昼下がりの広場で逃げ惑う人々の悲鳴が響き渡る。

「ワーハハハ! 遠慮するな。みんな甘いモノだ~いすきだろう?」

 シュークリームから生み出されたモンスター、クリームゾン・キングがカスタードクリームを辺りに撒き散らす。戦闘員のアマンダーが人々の口にシュークリームを詰め込む。「スィーツ!」「スイスィーツ!」

「やめてー! あたしダイエット中なの、もが……も、もっと! もっとちょうだい!」

「わ、ワシは医者に甘いものを控えろと……美味い! こいつは絶品じゃあ!」

 クリームゾン・キングのシュークリームを食べた人々は恍惚の表情ですすんでクリームまみれになっていく。

「ホーッホッホ! どんどん食べなさい。そして日本中私の奴隷となるがよい!」

 ムチを手にした軍服のマッドサイエンティスト、Dr.エビルが姿を現す。彼女の目的は人々を甘党に洗脳して、労せずスパイスを独占すること。彼女は大の辛党なのだった。

「待て、海老名ルミ子! 日本をお前の好きにはさせん!」

「なっ! 本名で呼ばないで欲しいんだけど! 一体誰よアンタ」

 Dr.エビルが振り返ると、そこには逆光の中に立つ男が。

「ぬうっ! 誰だキサマは!」

 クリームゾン・キングが問うとその赤いシャツの男がくるりと回転し、戦闘服に早変わりする。

「俺は赤カレーンジャー!」

 決めポースの後ろで赤い爆煙があがる。

「なにをこしゃくな! ええい、アマンダーども、かかれ!」「スィーツ!」

 向かってくるアマンダーに赤カレーンジャーの銃、レッドビュートから赤い液体スープがほとばしる。それを顔面に浴びてアマンダーが地面にのたうち回る。「スイスィーツ!」

「とくと味わえ。赤唐辛子の本場の辛さ、赤カレーンジャー!」

(この香り、タイの代表的なカレーであるレッドカレー。その名の通り乾燥した赤唐辛子を使用しレモングラスやココナツミルクを加えることで複雑な味に仕上がっている……)

 漂う赤唐辛子の香りにDr.エビルの腹が思わずぐうと鳴った。

「おのれ赤カレーンジャーめ! だが一人で」「ここにもいるぞ!」

 クリームゾン・キングが目を向けると、緑色のスカーフの男がくるりと変身する。

「俺はミドカレーンジャー!」

「何ぃ! 今度はみどり?」

「間違えるな、ミドカレーンジャーだ! 食らえ、ミドスナッパー!」

 放った豆さや型のブーメランが、アマンダーを次々となぎ倒していく。「スィーツ!」

「インド帰りのヘルシー野郎ガイ。キレのあるヤツ、ミドカレーンジャー!」

(サーグとも呼ばれる青菜や豆や芋、そこに青唐辛子とチーズを加えたインドカレー。女性にも人気があるのよね……くっ、食べたい!)

「お次はおいらの番だ、とぉー! 黒カレーンジャー、リングキャッチャー!」

 輪切りの巨大イカリングがアマンダーをまとめて拘束し、締め上げて地面に転がしていく。「スィーツ!」

「イカスミ濃厚シーフード。隠し味は秘密だよ(笑)、黒カレーンジャー!」

(子供にも人気のシーフードカレーね。隠し味?イカスミのコクだけじゃないってことね(ペロッ)……これはゴマペースト! 甘味の他に焦がすことでいいアクセントになっている……フフフ、見破ったわ! さて赤、緑、黒ときたら次は定番の……)

「華麗なピンクが恋人たちにも大人気、桃カレーンジャー!」

「何だよそれぇぇぇー!」

 Dr.エビルが思わずムチを地面に叩きつける。

「ピンクの色の秘密はボルシチに使う野菜のビーツよ。それをホワイトソースに混ぜてるの。勉強になった、ルミ子さん?」

「だから本名で呼ぶなー! そんな……そんな色のカレーなんて」

「まだまだ甘いぜ。だったらこれはどうだ? 澄み渡る空と地元愛、青カレーンジャー!」

「は? え? あ、青いカレーですってぇー!」

「インドのクチナシから抽出される青色素で琵琶湖や北海の流氷を表現しているのさ。郷愁にむせび泣くがいい」

「泣けるかぁー! 私は長野県民だ。◯ーモンドじゃなくてもカレーにリンゴが入ってるんだからな!」


「もう残るはお前たちだけだ。観念しろ!」 

 アマンダーどもは全て倒され、クリームゾン・キングとDr.エビルは5人に取り囲まれている。

「ひとつ訊きたいんだけど、黄色はどうしていないのよ?」

「ん? リーダーは今インドの山奥で修業中だ。オレたちが相手で何か問題でも?」

「そ、それは……くっ、あとは任せたわよ、クリームゾン・キング!」

 Dr.エビルは竜巻きを発生させて姿を消した。

「なっ! そんな殺生な、エビル様ぁー!」 


 そしてクリームゾン・キングは5人の合体究極カレー、デリシャストロピカルサンシャイン(おかわり)で倒されたのだった。最期に「ハヤシモアルデヨ〜」の叫びを残して。


(ゼェハァ……他はともかく、ピンクやブルーにやられるわけには……それよりも……ああもう! 無性に黄色いカレーが食べたくなったじゃないのよぉぉぉ!)


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― 新着の感想 ―
青は……やめて(´;ω;`)きも
 家庭の味のゴールデンとかもいそうですね。(笑)
調べてみました所、ピンク色のカレーは鳥取県の御当地カレーとして存在するみたいですね。 そして青いカレーは富士山をイメージする形でも販売されているのですか。 しかもホワイトカレーという北海道の御当地カレ…
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