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記録01

オリロボ二人でもっと楽しく妄想するため考えた、背景ストーリー的なやつです。

肩の力を抜いて気楽に読んで頂ければ......。

 ──なぁ、お前は人工機械ってマジだと思うか?いやなに、俺だって信じちゃいないさ。でもよ、この世のどこかにはいたはずなんだろ?俺達を一番最初に作った奴がさ。

古びた記録媒体より


22時13分(晴れ)未開地域


 走って、走って、走り続けた末に、安い規格品のプレートは穴だらけになり、半分が無くなっていた。

 股の間に挟んでいた一輪バイクを仕舞うと緊張が一気に解けていく。

 安堵した体を熱が駆け巡り、思考がゆっくり、ゆっくり、ゆっくりになっていく。胸部の輸水タンクが、沸騰した冷却水をゴボ、ゴボと循環させているのが分かる。

秒間描画フレーム数の落ちた視界の中、手探りでメインパイプを探り、吸熱剤を注入する。

[シュッ────]

 途端に冷却水の沸騰が止まる。ギュウッ、と頭が冷える感覚がする。一瞬、視界が真っ赤な警告と赤黒い不快情報で埋め尽くされてフリーズ、したかと思いきや、次の瞬間には視界がさっぱりと晴れていた。

『ふふ。』

 快情報が体を駆け巡り、頭の全てを充足させる。今日は大儲けだ。


7時00分(晴れ)産業地域


 名前はリッター、『ゴミ拾い』のリッター。社会貢献としてハンターを、文化貢献として無駄遣いをしている。

 『ゴミ拾い』と呼ばれる仕事─―ハンターは、ロイドとしての義務を果たす中でも、一番楽しい仕事だと自負してる。毎日働くのは面倒だし、かといって何か楽できそうなアイデアもない。生まれてすぐ社会貢献や文化貢献が求められる中で、僕にできる事は少なかった。

 煙を吹く工場の街に足を踏み入れた僕は、素材を納品するために取引所の門を潜った。

 鉄板に取手をつけただけの物言わぬ扉を潜り抜け、汚い素材が散らばるカウンターへと歩みを進める。そこには換金を行う爺さんがいる。

 目の前の爺さん─―錆びついた産業規格パーツで構成される、古い精密作業用アーム―─にカバンを渡した。

 汚染地域に出かけて、前時代の遺物や結晶、外部資材、汚染種族のパーツや装備、内部データなどを拾って帰る。そして素材屋で、売る。それがハンター。

『またまた沢山拾って来ましたね、金属、鉱石、ガン、ガンクリップ、内部データ……あなた何匹殺したんですか?』

 そこそこじゃないか?

『装備は?』

 ボロボロの亀屋の05−01プレートを引っ張りだし、見せた。

 汚染種族は強い。汚染地帯の資源をフルに活用した装備を駆る、恐るべき鋼鉄の軍団。彼らの掃討、そして汚染地域の開拓を目論む軍隊は数え切れない程沢山いるが、彼らの力をもってしても、まだこの星の1%程しか開拓されていない。

 完全装備の軍隊が突入しても毎度集団リンチに遭って酷い損害を出す。うまく一人が帰って来たかと思えばポッケの変なゴミを持ち帰っただけ。それなら最初からエリート一人で良い。

 そこで僕達ハンターの出番だ。ある者は依頼人に傭兵として雇われ、決まった物を持ち帰る。ある者は雑多に持ち帰ったものを直接持ち込み、売却交渉する。

 ちなみに僕は商人のギルドと契約してる。彼らに任せれば素材も適当な値段で売ってくれるし、『お得意様』ってことで装備も安く買える。控えめに言って最高。

『そんな安物…全く無茶しますね。それも資源として回収しましょうか。もうデータは取りました?』

 もう取ったし、お会計でいいかな。

『はい、では全部で501,880コインでどうでしょう。』

 これは中々。粗製の風味棒なら50,188本買える。今は値上がりしてるんだったか。

 羽振りいいね、と伝える。

『お陰様で。また来てください。』

 また来るよ。

 簡単だけど危険な仕事、危険だけど儲かる仕事、つまり簡単で儲かる仕事。これ程良いものはない。

 さて、帰ろう。使いたいコインが山ほど残ってる。

 青い星空を見上げながら、僕は煙を吹く町へと歩いていった。


1:05(曇り)中央街


 鉱石と遺物が転がる汚染地域からも、工場が煙を吹く産業地域からも随分離れて、段々と人通りが増えてきた。

 どこまで歩いても露店が立っていて、変な物や珍しい物、産業的価値の無いものが売買されている。珠の根付、刺繍のパッチ、それに綺麗な青い輸水管。面白いものだと彫刻の施された指なんかもある。

色とりどりのテントの中、僕は粗製の風味棒を楽しみながら流し見して歩いた。

 色々と目移りするが、今日はこのまま休みたい。いくつかの歓声や人混み、路上ライブを抜けると、見覚えのある建物が見えてきた。灰色のコンクリートが全面を覆い、内側からは淡い結晶核の灯り。ベッドブロックだ。

 ただいま。

 門を潜ると、いつも通りの格好をした受付がいる。彼女のランタンを模した胴体は透けていて、その胸部で結晶核が赤々と燃えている。それがとても温かい。

『おかえりリッター、今日は空いてるよ。どこでも好きな番号をどうぞ。』

 じゃあ777。

『はい、じゃあそこ立って。』

 受付が指で示した壁際のラックに立ち、首のコネクタを開く。と、同時に足が固定され、コネクタにプラグが挿される。

『ふふ、おやすみ。』

 受付の声を聞いた次の瞬間、僕の意識は身体を遠く離れて、電子の宇宙に打ち上げられていた。


2:14(天気なし)ベッドブロック


 今、僕は大型コンピューターに接続したままベッドブロックのハンガーに吊るされている。

 自分の身体の操作から切り離され、より高性能なコンピューター上に構築された仮想空間の中を彷徨っているのだ。

 さて何しよう。

 この仮想空間ではあらゆる娯楽が楽しめる。何か玩具を作ったり、遊んだり、ゲームを作ったり、遊んだり、現実と遜色ない疑似体験をしたり、あとは……仮想感覚を弄って擬似的に感覚機関を破壊したり。

 そういや買ってたな。

 実を言うと仮想感覚を弄るのは色々とマズい。これは僕達の体にも備わった中枢プログラムである感覚機関を仮想再現したもので、現実では味わえない快楽値を設定するとトンデモナイことになる。この感覚に慣れて現実でも弄ってしまう人が後を絶たない。(べつに死にはしないけどさ。)

 逆に言うと、そんだけキモチイイ。

 まぁ、折角(?)だしな。

 あんまり良くはないだろう…とは思いながら、フォルダの疑似快楽調節ギミックに手を伸ばしたその時。

─通知音。

 うわっ?!

 急な音に僕は仰け反った。急いでフォルダを閉じ、振り向くとそこには白いロイドがいた。

『ヨォ!リッター?』

 と彼は言う。

 低い等身、トゲトゲ頭、そして悪戯っぽい瞳。ひと目で分かる。クソガキだ、と。

『ナァニしてんだよ?』

 急に入って来るんじゃない、センチ。

 それを聞いて、彼は大きな目玉をぐるりと回し、ため息を吐きながら言った。全くわざとらしい。

『はァ…もうちッタァ面白ェ反応しろよナ〜〜。』

 そしてコロリと態度を変えて言ってきた。

『でも、オレ知ってるゼ?お前は嘘が上手ェんだ。今回はなンだ、エッチなモンでも隠してンのかァ?それとも…アレか、仮想感覚か。ククッ、そんな事までして気持ち良くなりてェのかァ?』

 なんでコイツは勘が良いんだ?

 そんなわけ無いだろ、とは言ってみる。

『フゥ〜〜〜ン…?まっ、いいワ。そんな嫌わないでってば、ザ〜ンネン。』

 満足げに言うな、本題を早く話せ。

『あっ、そうそう!忘れるトコだった!…コレなんだけどサ?』

 そう言うとセンチは、自身のフォルダから何か取り出した。見てみると、見た事もない形式で圧縮された古いファイルだ。 

『リッターはこういうの、得意でショ?』

 得意と言うか…まぁ、貸せ。

『ン〜〜……イイ子!!』

 別にこういうのが得意な訳じゃない。

 ファイルの解凍・開封なんてコツを掴めば誰だってできる。その型のルール通りに進めるだけだ。

 と、解析したファイルを渡す。

『はッや!!』

 一瞬驚愕を見せたと思うと、顔がコロコロと入れ替わり、やっと、嬉々とした表情で止まる。センチは表情設定が多いクセに、使うのが下手だ。そんな面倒なの、全部無表情で統一すればいいのに。

『なァ、ココで開けてイイか!?』

 ダメだ、爆弾だったらどうする。

 こういう出処不明のファイルにありがちなのが、無駄にサイズのデカいファイルを限界まで圧縮した「爆弾」。ラグくなるのでシンプルにやめて欲しい。

『ン、爆弾じゃねェな、コレ。』

 うわ開けてるふざけんなお前

『オイ、再生できるぞコレ!!』

 話を聞け!!

[—ザザッ]

 古いファイルが再生され、ノイズの走る破損した動画が辛うじて動き始める。

 なんか...見ちゃいけないプライベート内容だったりしたらどうする!!

『オモロいなソレ!!』

[ザッ——ンッ…あァ、あ…うぅッ———]

 おい!!!!!!

[ふふ、な…なぁ…]

 止めろ!!!!!

[なぁ—ザザッ——お前は人工機械ってマジだと、ンッ…思うか?]

『おい見ろってリッター、濡れ場濡れ場!!』

 バカ、失礼だろ!!!

[ナニ…俺も信じちゃいないさ。]

 切れ、早く!!!!!

[でもよ…この世のどこかには居たはずなンだろ?]

『ハッ、ガン見しながら言われてもナァ?』

[こうしてオレ達を、最初に作った奴がさ…。]

 とその時、ノイズが晴れる。喋っていた音声が何か聞き覚えのある声だと気付く。そしてそこにいたのは…。

[リッター……ン、あ、あァ……ッ————]

 見覚えのある、等身の低いロイド。そして、それを優しく抱きしめる腕。

 僕は激しく動揺した。見ているものは自分が全く知らない場面だが、どうもこの動画は僕の視点から切り取られた物らしかった。

 そしてもっと奇妙なのは、画面の中のトゲトゲ頭で悪戯な瞳のロイドが、僕の名を呼びながら恍惚とした表情を浮かべているという事だ。

 センチの方を見ると、絶句している。

[頼むよ……ソレ、早く挿れ—ブ、ブン—]

あ切れた。

何だったんだ?今のは。

『は?』

 物理的に何かファイルサイズが大きかった訳ではないのだが、異常なまでに情報量が多い。僕の脳が高速で回転し始めるが、あまりの難解さから全く結論が出ず、ある種の思考停止状態になってしまった。

 もう一回見ていい?

『──アレは俺じゃねェ。』

 それは知ってる。僕はあんなに乱れたセンチを見た事がない。

『俺、あんなコトしてねェからな?』

 僕も全く身に覚えがない。しかも、あんな古い圧縮方法となると相当昔という事になるが、僕達はまだ生まれてそれほど経ってない。

 とりあえず、もう一回みないか?

『いッ、イイ訳ねェだろ!?!』

 見ないなら、せめてそのデータが欲しい。

 あの動画には不可解な要素が山程あった。

『バッ…この、クソッ……帰る!!!』

 ログアウトしてしまった。仕方ない。

 コピーで我慢するか。


これ続くんでしょうか?

真実は俺のみぞ知る......。

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