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悪魔に捧げる鎮魂歌  作者: 西季幽司
第四章
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誰が悪魔を殺したのか?②

「辻花大悟って、誰でしたっけ・・・」

 名前に聞き覚えがあった。だが、思い出せなかった。

「兄ちゃん、あんたはこっちで会っとる。事件当夜は、死んだことになっとったが、翌日、あんたが辻花家に押し掛けた時に、出て来て追い返した、あの男や」

「ああ~高寛君のお父さん」鷲鼻の中年男性の顔が頭に浮かんだ。

 そう言えば、井上輝秀と名乗っていた辻花大悟の弟、公正も鷲鼻だった。二人は兄弟だ。

「事件の背後に辻花大悟がいたって訳よ。やつが裏で全てを操っとった。黒幕よ。イカスミくらい――」と言い出したので、「真っ黒なんでしょう」と先手を打った。

「でも、辻花大悟氏が黒幕だったとしたら、何故、一度、弓月を開放したのでしょうか?命を助けておいて、また殺したのですか?」

「そうやあらへん。恐らく、代替案やったのや。最初の案では、辻花大悟は黒幕として表に出て来んと、弓月を殺害する計画やったのやと思う。その案がヘタこいた時の為に、代替案を用意しとったのや」

「バックアップ・プランがあったと言うことですね。プランAとプランBを用意していて、プランAが失敗した時の為にプランBを残しておいた」

「横文字は兄ちゃんに任せる。まあ、そういうことや」

 鬼政の眼には、筋肉バカに見えているのだろうか。

「関係者を集め、弓月をおびき寄せて殺害する計画やったのや。口で言うほど、簡単に人など殺せへん。弓月に恨みを持つ人間を、あれだけ集めておけば、しくじることはないと思とったんやろうが、関係者を集め過ぎたんや。意見が合わんと、弓月を開放してしもた。辻花大悟にとっては、なんでや!と叫び出したくなる事態やったやろう」

「そこでプランBを発動させた」

「そういうこっちゃ。弓月を開放したことを知った辻花大悟は奥の手を繰り出したのや。蛭間朱里をつこぉて、弓月を呼び出し、殺害し、ため池にほった」

「辻花大悟を逮捕したのですか⁉」

「まだや。まだまだ、わいの想像やが、大体、そんなところやと思うとる。蛭間朱里の身柄も確保できておらへんし、車も見つかっとれへん。捜査はまだまだこれからや」

 どこからどこまでが内部情報で、どこからが鬼政の想像だったのか分からない。

「なんだ~」と不平を漏らすと、「兄ちゃん、そう言わんといてや。かつては府警のエースと呼ばれたわいやけど、今や飯を食ったかどうかも覚えておらへん呆け老人の一人や。かつての部下の靴を舐めるようにして、苦労して手に入れた情報やで」

「そんな。部下の靴を舐めたのですか?」

「アホ。例えや。まあ、待ってな。またどかんと情報を仕入れて来たるからな。しかし、兄ちゃん、ビデオ通話って、おもろいな~また、相手してな~ほなな~」

 鬼政は通話を切ろうとして、「おお、そうや」と何か思い出した様子だった。「兄ちゃん、今度の事件は、辻花家に弓月を誘い出せるかどうかが重要な鍵やった。その為に、実際にあった事件を巧みに利用した訳やけど、それにしてもいとも容易く引っ掛かったもんや」

 側近くいた俺には弓月の気持ちが分かるような気がした。名を売った事件は過去のものとなり、華々しい成果に飢えていた。しかも、相談相手は裕福な一家だ。欲に目が眩んだ弓月が騙されたとしても不思議ではない。

 だが、鬼政は言う。「あんたの事務所にスパイがおるんちゃうか?辻花大悟の意を受けて、弓月に偽の情報を流し、大阪に出向くよう細工した。そんな人物がな。兄ちゃん、あんたがそのスパイかとも思うたんやが、あんたやないな」

「ひどいな。僕のことを疑っていたのですか?」

「気ぃ悪うせんどいてや。あんたがスパイなら、偶然を装って、わいを訪ねて来て、わいと一緒に捜査の真似事なんぞせぇへんやろうから。弓月は行方不明のままやった方が、良かったんちゃうか。まあ、兄ちゃんに腹芸は無理やな。だがな、兄ちゃん、この商売、全ての人間を疑う必要があるんや。それが嫌なら、犯人捜しは諦めることや」そう言って、鬼政は通話を終了した。

 口は悪いが鬼政の言う通りだ。うちの事務所にスパイがいる。その可能性があるような気がしてきた。

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