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悪魔に捧げる鎮魂歌  作者: 西季幽司
第三章
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あるべきはずのもの④

 鑑定により白骨遺体が十代の少女であることが確認された。

 あれから、青木涼香の遺体を探していたことを千葉県警に打ち明けた。「困るねえ~君。そういうことは、事前に言ってもらわないと」と油を搾られたが、勝手に他人の家に押し入って庭を掘り返すことを警察が認めてくれるはずがない。これで良かったのだ。

 DNA鑑定が行われている。遺体が青木涼香であることが分かるのも時間の問題だろう。

 弓月、辻花、蛭間の三人はスキー旅行の帰りに青木涼香を車で撥ねた。

 あろうことか、瀕死の重傷を負った青木涼香をトランクに押し込み、死なせてしまった。そして、遺体を弓月の実家近くの流山の小山に埋めた。

 やがて辻花良悦が良心の呵責に耐え切れなくなって告発文を書いて、自首しようと弓月に訴えた。生かしておいてはマズいと弓月は考え、良悦を殺害し、その罪を蛭間に着せ自殺に見せかけて殺した。全てを闇に葬った――はずだった。

 天網恢恢疎にして漏らさず。悪事は必ず露顕する。

 何時だっただろう。弓月と映画を見に行った。どういう経緯だったか忘れてしまったが、二人きりだった。当時、流行っていた映画で、孤立した洋館に呼び寄せられたゲストが一人、また一人と殺されて行くミステリー映画だった。

 映画の途中で、「誰が犯人だか分かりますか?」と小声で尋ねた時、弓月は憮然とした表情でこう答えた。「誰が犯人だとしても、頭が悪いよ。洋館に集まった全員を殺せば良い。皆殺しにするのさ。そうすれば、誰が犯人かなんて、関係なくなる」

「そんな小説が海外にありましたね。でも、それだと生き残った人間が犯人だということになりませんか」

 そう言うと、「馬鹿だな。皆殺しにした後で、自分がいた形跡を徹底的に消せばよい。どの道、目撃者はいないのだ。自分がその場にいたことを、誰も証明できないだろう。これで完全犯罪の成立だ」と嘲笑された。

 弓月の声が大きかったので、前列に座っていた男性が振り向いた。

 皆殺しなんて無茶苦茶な発想だと思った。弓月のことが怖くなった。今になって思うと、弓月は青木涼香の事故のことを知っている人間を皆殺しにしている。それも友人たちを。しかも、その一人に罪を押し付けて。

 弓月はモンスターだった。

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