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悪魔に捧げる鎮魂歌  作者: 西季幽司
第二章
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不意打ち⑤

 日が暮れた。

 家路を急ぐ人波が地下鉄駅の出入り口へ飲み込まれて行く。しっかり見張っていないと、辻花高寛を見逃してしまいそうだった。

 車から加美支店を見張っていたが、帰宅時間となり駅前通りに人が増えてきた。車を出て鬼政は地下鉄の出入り口を、俺は加美支店への階段を見張ることにした。

 残業なのか、なかなか出て来ない。

 夜の七時を少し回った頃、階段を降りて来る高寛の姿を捉えた。

 来た!思わず身構えた。十分、距離を取りつつ、見失わないように後をつける。尾行は素人だ。見つかっては一大事だ。慎重に後をつける。幸い、地下鉄駅へと急ぐ人波に紛れて、気づかれていない。考え事をしているようで、高寛は俯き加減で足早に歩いて行く。

 地下鉄の出入り口が近づく。

 入口近くに立っていた鬼政と目が合った。鬼政は軽く頷くと、「辻花高寛さんですね。お時間、よろしいでしょうか?」と高寛の前に立ちふさがった。

「えっ⁉」と高寛は足を止めると、踵を返して逃げようとした。その前を、俺が塞ぐ形になった。

「お時間、取らせませんよ」

 鬼政は満面の笑顔だ。サドっ気があるのかもしれない。

 案の定、「うぐ・・・」と呻くと、高寛は「さっきも言いましたけど、僕は何も知りません」と開き直った。

「何も知れへん?ほんまに?兄ちゃん、あれ、見せてやりな」

 ポケットから携帯電話を取り出すと、保存しておいた画像を高寛の鼻先に着きつけた。平野署に頼んで鬼政が送ってもらったものだ。携帯電話は苦手だと言うので、鬼政に代わって保存しておいた。

 画像に焦点が合うと、「うぐぐ・・・」と高寛は再び呻いた。

 ホテルの防犯カメラの映像のワンショットだ。二人掛かりで俺を地下駐車場からホテル内へ運び込んでいる時の映像だ。そのシーンを静止画にして、平野署から送ってもらった。俺の両腕を支える弓月と高寛の顔がはっきりと映っていた。

 これが鬼政の言っていた、ちょっとした仕掛けだ。この画像を見せられては、弓月や俺のことを知らないと言い逃れは出来ないはずだ。

「辻花さん。これ、あなたですよね?知らぬ存ぜぬでは通らないこと、分かって頂けましたか?あの夜のこと、話して頂けますよね?」

 高寛は顔を真っ赤にして、俺を睨んだ。そして、次の瞬間、「ふっ」と大きく息を吐くと言った。「分かりました。全てお話ししましょう。正直、黙っていることが苦痛だったのです。実は僕にも、あの夜、何が起こったのか分からないのです。弓月さんが何故、死んだのか?誰に殺されたのか?分からないのです」

 今更、何を言っているのだ。弓月はため池から死体で見つかった。辻花高寛は弓月の死に関与しているはずだ。

「ほな、話を聞かせてもらおうか。そう言えば夕食、まだやった。腹が減った。あんたも食事はまだやろう?飯でも食いながら話を聞こうか」

 鬼政が高寛を促す。「ええ」と高寛が頷いた。逃げ出さないように、俺と鬼政で両脇を固めて歩き始めた。

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