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悪魔に捧げる鎮魂歌  作者: 西季幽司
第二章
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処刑スタイル④

「殺人!」飛車が目を見張る。

「そや。ちょっと見せてもらうだけや。協力したってや」

「そう言われましても・・・」迷っている。

「あんたに見せてもらったことは、誰にも言わへん。ちょっとでかまへん。防犯カメラの映像を見せてくれまへんか」

「今からですか⁉」

「ああ、今からや」

「分かりました。では、こちらへ」飛車は観念したようだ。

 飛車は俺たちをフロント裏の管理室へ導いた。

 結構、広い。ごく普通の事務所だ。一角にモニターがあった。防犯カメラだ。画面が四分割してあり、ひとつはフロントの画像だった。

「弓月様がチェックアウトされたのは昨晩の九時過ぎですから・・・」と飛車がモニター前のキーボードを操作して、画像を巻き戻した。暫く、客のいないフロントが映っていたが、やがて、「ああ、これのようです」と飛車が言った。

 フロントに若い男がやって来る。弓月だ。

 弓月はゆっくりとした足取りでフロントに近づくと、二言、三言、話をしてから、カードキイを置いて、歩き去って行った。ほんの数分の出来事だった。

「兄ちゃん、あんたのボスか?」

「弓月です。間違いありません」

 間違いない。弓月だ。誰かに脅されてチェックアウトをした――といった気配は感じられなかった。

「被害者が自らホテルをチェックアウトしとる。自分の意志で出て行ったと言うことや」

「どういうことでしょう?」

「ううむ・・・・」鬼政が唸る。

 チェックアウトをしたのは別人、そう考えていたようだ。忌々しそうに言う。「被害者は生きて井上家だか辻花家だかを出てん言うことやな」

 となると、犯人は井上家、いや辻花家の人間ではないと言うことだろうか?じゃあ、何故、辻花家の人間は井上家を騙って弓月を呼び出したのだ。弓月を殺害する為では無かったのか?どういうことだ?

「くよくよ考えてもしゃあない。次は、このお兄ちゃんがホテルに運び込まれるところや。防犯カメラに映っとるはずや」

 それもそうだ。弓月がチェックアウトした場面から巻き戻して、防犯カメラ映像を確認したが、俺がホテルに運び込まれる場面は映っていなかった。

「変やな。なんで、防犯カメラに映っとれへんのや?他に入口があるんかいな?」

「地下駐車場からなら、フロントを通らずに部屋に行くことができます」

「その地下駐車場からの入口にも当然、防犯カメラはあるんやろうな」

「ございます」飛車が映像を切り替える。

 画面には廊下が映っており、先にステンレス製のドアが見える。駐車場の入口のようだ。

「このドアはどないなっとんねん?自由に開け閉めできるんか?」

「外からはルームキイで開くようになっています。当ホテルにご宿泊の方以外、出入りは出来ません」

「関係者以外は使えへんって訳や」

 同じように、弓月がチェックアウトした時間から画像を巻き戻す。暫く早送りすると、「ああ、これみたいです」と飛車が画像を止めた。

 再生する。ドアが開いて、男が三人、入って来た。真ん中の男は気を失っているのか、ぐったりしており、両脇から男が抱えている。

「これ、弓月です!」一人は弓月だった。

「ほう~ほな、隣の若い兄ちゃんは誰や?」

「これは・・・・確か・・・・あの晩は、井上晃と名乗っていました。井上家の次男坊です。多分、偽名でしょうが」

「被害者は、あんたを抱えてホテルに戻って来よった。その後、一人でホテルをチェックアウトして出て行ってんな。うん?このドア、入る時はルームキイが要るんやったな。ほな、出る時、どうや?やっぱりルームキイが要るんか?」

「出る時はドアノブを回すだけでドアが開きます。ルームキイは必要ありません」

 ホテルの部屋のドアと同じ作りだ。

 画像を暫く早送りすると、井上晃と名乗った若者が駐車場へ出て行く姿が映っていた。俺を部屋に運んでから、直ぐに降りて来たようだ。

「よお分からんな。井上、いや辻花家のやつら、手の込んだやり方で被害者を呼び寄せたにも係わらず、そのまま開放しとる。被害者を恨みがあった訳じゃなかったってことか?ほんでもって、被害者は殺害されとる。それも処刑スタイルで。変な事件や」

 何故、弓月は俺をおいてチェックアウトしたのだろう?ひょっとして弓月は逃げ出そうとしていたんじゃないだろうか?俺を置いて。弓月なら、十分、考えられる。

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