KING考 中編
そこで注目したいのが、シン配下にしてKING幹部の四人 ー スペード・ダイヤ・クラブ・ハート様の四人 ー である。
いったい彼らはどのような素性の人物なのだろうか?
まずスペードは、仲間とともにバギーを操り縦横無尽に走り回るところから見て、ジードと同じ暴走族あがりと考えられる。
ダイヤは棒術使いなので、自分の道場が戦争で潰れて困窮し、悪党の群れに身を投じた、そんなシンに似た境遇の男かもしれない。
クラブはどうだろうか。
クラブは、手に巨大な鉄爪を装着し、それを使って戦う男だが、彼はこう言っている。
「スペードやダイヤはやられたが、おれ様はちがう!!
やつらは修行をおこたった
おれは毎日修行を重ねている」云々と。
つまり、クラブの言によれば、彼が鉄爪を振り回すのは、修行なのだそうだ。
しかし、素人が手に鉄爪を付けて適当に振り回しているだけなら、それは修行とは言わない。
鉄爪を使う武術というのが存在し、クラブはその武術の修行をしていたと、そう考えなければ、この「修行」という言葉は理解できない。
以上から、このクラブもダイヤと同じく武術家崩れと見たい。
ハート様はどうだろうか。
ハート様は暴走族あがりではない。
なぜなら、太り過ぎてバイクに乗れないに違いないからである。
また、特に技は持っていないようだから、武術家でもなさそうだ。
それでは何者だろうか。
サザンクロスの酒場で、シンの部下たちが乱暴を働いていたところへ、ハート様が来て彼らを制止する、という場面がある。
酒場で暴れる酔っぱらいを制止する者とは、何者か?
それは、酒場などの飲食店から用心棒代を取って、用心棒を努めるヤクザではないだろうか。
(店の従業員や警備員でも、酔っぱらいを制止することはあるだろう。
しかし、もしハート様が従業員か警備員だとすると、彼が店のバーテンより偉そうな態度を取っているのは、極めて不自然だ。
ハート様が店の経営者という可能性も考えられるが、もしそうだとすると、シンの部下たちがハート様の店で暴れるわけがない。ハート様の怒りを買うことが目に見えている。
そうした状況から考えると、ヤクザという線が一番濃厚だと思う。)
しかし、ハート様の場合は、血を見ると逆上し、敵味方の区別なく殺してしまうというのだから、手に負えない。
酒場で何かトラブルが起こった場合でも、こんな用心棒を呼びたいとは誰も思わないだろう。
結局ハート様は、人を脅して用心棒代を巻き上げるだけで、実際には用心棒として機能しない、ただ迷惑なだけの存在だったに違いない。
そう考えていくと、シンの配下になった連中は、暴走族と武術家とヤクザということになる。
彼ら三者が結託して、どこかから流れてきたシンを、自分たちのリーダーに擁立した。
どうして、そんなことをしたのか。
(後編に続く)