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北斗の拳考  作者: 宇占海
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修羅の国考 後編

 それはさておき、羅将たちは権力を握ると、国家改造の第一歩として、こんな布告を出しただろう。

 曰く、この国の男性は全て、百回の死闘を繰り返して修羅を目指さなければならない、と。

 そしてこの布告が国中に相当な恐慌を引き起こし、反対の声が方々で上がったことは、想像に難くない。


 反対や抵抗を試みる者がいれば容赦なく弾圧し、

そうして反対派を黙らせたとして、

次に、国中の男性全てに百戦させるためには、

そのための会場を、国内の全国各地津々浦々にまで造らなければならない。

 それにはどうするか。

 どんな田舎にも小中学校はあるだろうから、それを活用するのが一番の早道だろう。


 小中学校の体育館を転用して臨時の会場を造り、そこに地域の男性を集めて百回戦わせる。

 そんなことをしたら、どんな人が勝ち残るだろうか。


 まず、プロの拳法家や格闘家は残るだろう。

 百回戦うと言っても、戦う相手の殆どは一般人男性、つまり戦いの素人だから、楽勝だ。

 途中で運悪く、自分より強い男にぶつかる、ということがない限り、安泰だろう。

 また、現職の軍人や警察官は、職業柄、格闘術や逮捕術などを心得ているだろうから、こちらも有利と思われる。


 かくして拳法家・軍人・警察官といった人々が勝ち残り、初代の修羅になったとして、

その場合、拳法家より軍人や警察官の方が人数が多いだろうから、

結果的に、初代修羅の多くを軍や治安機関出身者が占めることになったのではないか。

 だから修羅の国の新政権は、事実上、軍事政権のような性格を帯びていたかもしれない。


 そうやって軍や治安機関出身者などが良い目を見た一方で、それ以外の一般人男性は、はなはだ困惑しただろう。

 百戦して勝ち抜くなんて、素人にできるわけないし、上から命令されたとおりに百回戦っても死ぬだけじゃないか・・・。

 結局、どこかのタイミングで、死なないように上手に負けて、ボロになって生き延びる。

 それが賢明というものだろう。


 また、この状況を、百戦百勝できるような強い人の立場から見たら、どうなるだろうか?

 恨みがあるわけでもない相手を殺すのは

寝覚めが悪いから、

相手が死なないように手加減して勝ってやる。

 そうすれば相手はボロになって生き延びるわけだから、両方にとって良い。

 そう考えるのではないか?


 かくして、強い人と弱い人との思惑が

一致するわけであり、

あとは両者がお互い阿吽の呼吸で

出来レースの戦いをすることにより、

お互いに助けたり助けられたり、

そんな光景が方々で見られたことだろう。


 さらに一歩進んで、

地域の皆で相談して一番強い人を選ぶ。

 そして、その人が百戦して勝ち残ったのだと、

上には報告しておく。

 実際に戦うより、その方が丸くおさまって良い。

 そのように談合で修羅を選んだ地域もあったかもしれない。


 そう考えると、修羅の国の民は、

そう簡単に羅将たちの思惑どおりにはならない、

ある意味、たくましい人々だったのかもしれない、

と想像できる。

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