「南斗最後の将」考 後編
まず、ユリアは南斗聖拳を習ってはいないが、何らかのかたちで日頃から南斗聖拳と関わりを持っていたものと思われる。
もし彼女が、南斗と全く関係のない所で生活していたのであれば、兄リュウガと同じく南斗の世界から出て行った人間と見なされ、南斗最後の将に選ばれなかっただろう。
では、どのように関わっていたのか?
そこで作中のユリアの行動を見ると、彼女が怪我人の手当をする場面が何度かあるのが目につく。
ラオウに包帯を巻いたこともあるし、ラオウの部下の手当をしたこともある。
だいたいユリアという人は、シンに拉致されたりラオウに捕まったりと、終始他人に振り回されてばかりで、彼女が自分から行動を起こす場面というのが、あまり無い。
自分の意思で動く機会すら充分に与えられなかった、非常に可哀想な人なのだが、その中にあって、自分の意思で何度も怪我人の手当をしているということは、きっと、手当が上手なのだろう。
よく考えたら、怪我の手当をする人というのは、拳法家の世界に必要なのではないか?
何しろ若者が大勢集まって拳法の稽古をしているのだから、打ち身、捻挫、生傷など絶えないに違いない。
だから南斗聖拳専属の救護係のような人がいたとしても、あまり不自然ではないように思う。
ユリアは南斗正当血統の家に生まれたものの、大人しい性格で拳法家には向かない。
それよりは拳法の修行で怪我した人を手当する係になる方が良い、と考えたのではないか?
そうしてユリアが救護係として働いてみると、周囲の人たちはすぐに、彼女がただ手当が上手なだけではない、ということに気がついただろう。
作中で少女時代のユリアが、ラオウの手当をする場面があるが、この時は彼女が手を触れただけで、ラオウは傷の痛みが引いたという。
どうやら彼女は、怪我人の身体に触れるだけで痛みを和らげるという、不思議な治癒能力のようなものを持っていたらしい。
南斗の人びとは、これに注目したのではないか?
みんなが尊敬する南斗正当血統の家に、不可思議な治癒能力を持つ奇跡の人が現れた!
その事実を重く見て、特例的にユリアを南斗六聖拳の一人とした。
おおむね、そのような事情ではなかったか。
ただ、もしこの想像が当たっているとすると、
ユリアに南斗六聖拳の称号を与えるのは、
例えて言えば、
両国国技館にある相撲協会診療所の医師に
大関の位を与える、というのに近い。
(横綱はサウザーだから、ユリアたち5人はさしづめ大関だろう。)
そんなことを公表したら、かなり物議を醸すだろう、ということを関係者たちは危惧して、ユリアが南斗六聖拳になったことを秘密にしたのではないか、と想像できる。




