ユダ考 前編
ユダは配下の二十三派を率いて「南斗聖拳協会」の組織を割り、自分の派閥を立ち上げた。
よって、ユダが率いていた集団は「南斗聖拳協会ユダ派」とでも呼ぶべきもので、その実態は拳法家の団体だったということになる。
が、しかしそれにしては、おかしいところがある。
それというのも、ユダの配下には、とてもじゃないが南斗聖拳の拳士とは思えない者がいるからである。
例えば、ユダとレイの決闘の前に、ユダが配下の二人をけしかけてレイと戦わせる場面があるが、この二人はどう考えても南斗聖拳の拳士ではない。
もしこの二人が南斗聖拳の拳士だったら、当然、相手が南斗水鳥拳を極めたレイだということを知っているはずで、恐ろしくて打ちかかることなどできないだろう。
ユダの配下に南斗聖拳とは無縁の者がいるというのを、どう考えたら良いのだろうか?
まず、ユダが元々属していた「南斗聖拳協会」はおそらく、南斗聖拳の普及を通じて心身の健全な発展を図るというような目的を掲げた、真面目な団体だっただろう。
しかし、そこから分離独立して自分の団体を立ち上げたユダがやったことは、女漁り、それもただの女漁りではなく、女性を何人も暴力で拉致して身辺に侍らせるというものだった。
ユダについていった拳士たちは、失望しただろう。
真面目に拳法に打ち込む者は勿論、ユダとともに覇権を目指すつもりだった者でも、失望して去った者は多かったのではないか。
その結果ユダ派は、人材不足になったと同時に、資金難にも悩むようになったと思われる。
なぜか。
ユダ派は二十三流派の連合体だから、
その二十三流派からの拠出金で運営していたものと想像される。
それでは二十三流派の財源は何かと言えば、
各々の流派の道場に通う弟子たちが支払う受講料だったと考えられる。
従って、各流派の道場に通う若者たちがユダを見限って辞めてしまうと、それがそのままユダ派の収入減に直結することになる。
これには知恵者のユダも困っただろう。
窮したユダが、地元のヤクザを傘下に入れることを考えたとしたら・・・?
ユダの腕をもってすれば、ヤクザを屈服させることぐらいたやすいだろうし、ユダ本人がヤクザの親玉に納まってしまえば、地元の住民を暴力で支配し、みかじめ料を徴収することもできる。
ユダの街で、ユダ配下の「ぺがふ男」たちが、靴磨きのおじさんを捕まえて、靴を舐めさせようとする場面があるが、あれは、みかじめ料を払えない住民に制裁を加えていたところではないか?
かくして、健全な拳法家団体の代表になったはずのユダは、いつの間にかヤクザの親玉に堕した。
・・・と言いたいところだが、ユダの名誉のために、急いで付け加えなければならないことがある。
実は、あまり知られていないことだが、ユダにはもう一つの顔がある。
(後編に続く)




