ウイグル獄長考
前に、ウイグル獄長について、元は普通の刑務所長だったと推測した。
この推測が正しいとすると、若き日のウイグルは刑務官として働いていて、そこから所長に昇進したという可能性が高くなる。
そのまた前には、おそらく修行時代があり、そこでウイグルは泰山流双条鞭とか蒙古覇極道などの闘技を覚えたのだろう。
(蒙古覇極道は、ウイグルの言によれば先祖から伝わった技らしい。だからこれについては、ウイグルは自分の両親や祖父母から教わったのかもしれない。)
そうして苦労して数々の闘技を会得した後、ウイグルは何か思うところがあったのか、国家公務員採用試験を受けて刑務官になった。
ではそこで新人刑務官ウイグルには、せっかく覚えた闘技を仕事に生かす機会があっただろうか?
まず、ウイグルは泰山流双条鞭など鞭の技を使うが、もともと鞭という物は、鞭打ち刑や拷問に使われるものである。だから刑務官ウイグルは、得意の鞭を使って囚人に拷問を加えていたのだろうか?
いや、それは無いと思う。
核戦争前の平和な時代に拷問や鞭打ち刑が行われていたとは考えにくいからだ。
第一、泰山流双条鞭で拷問をやったら、相手が死んでしまうではないか。拷問というのは、相手から自白を引き出すのが目的なのだから、殺してしまったら拷問の意味がない。
(ただ、過去に拷問や鞭打ち刑が行われていたとすれば、昔の刑務官は鞭を使ったということになる。だから新人刑務官の時のウイグルが、職場の先輩などから鞭の技を教わったという可能性はあると思う。)
では蒙古覇極道はどうだろうか。
囚人が暴れたり暴動を起こした時に、それを制圧する目的で蒙古覇極道を使うということは考えられないだろうか?
なるほど、蒙古覇極道を使えば、暴動もたった一人で鎮圧できるだろう。もっとも、相手が死なないように手加減はしただろうが。
それではウイグルは、蒙古覇極道で囚人の暴動を鎮圧し、その功績を認められて所長に昇進したのだろうか?
うーん、暴動はそうたびたび起こるものではないから、それだけで所長に昇進するのは難しいだろう。
やっぱり所長まで登り詰めるからには、官僚としての手腕も優れていて、それを評価されたとみるべきではないか。
だとすると、筋肉だけが取り柄のような連中ばかり揃っている拳王軍にあって、ウイグルの実務能力は貴重だったに違いない。
ウイグルは、北斗の拳の登場人物には珍しい、文武両道の人材だったのだ。
おそらくウイグルは、その実務能力を評価されて所長まで登り詰めながら、若い頃に覚えた闘技を生かせないことで鬱々たる日々を送っていたのではないか。
それが核戦争で、図らずも闘技をおもいっきり使える状況が出現した。
それで喜んで大暴れし過ぎたために、ケンシロウに倒されてしまった。
ウイグルほどの人物でも、慢心しては身を滅ぼすということであろう。




