知らない設定④
さて、廊下にでてきたはいいもののどうしよう。
キャルシーにあってそれとなく探って見るのもいいけど、ボロが出たら怖いしな……
顎に手を眉間に皺を寄せ当て悩んでいると、
えいっ
「!?」
「女の子がそんな顔してたらダメだよ。それよりレイ、お話は大丈夫だった?」
とキャルシーは私のシワの寄った眉間をグリグリと指で押しながら話しかけてくる。
「全然何ともなかったわ。それよりこれやめてくださる?」
キャルシーの手を掴み無理やり下ろす。
「あ!ごめんごめん!」
キャルシーは下ろされた手を首に回し手を組みながら口笛をひゅいっと鳴らしおちゃらけて見せた。
「本当に、他の女性にやったら怒られるどころかビンタまで食らうんじゃないの?」
やれやれと肩をすくめ、
「それより私に何か用?」
と尋ねた。
「元々は君の父親に用事があってね、立て込んでたからまた後日にと思っていたら何やら面白そうな気配がしたから話しかけてみたんだ。」
「そうだったのね、キャルシーが私に用事があるならお茶でも用意しようと思ったのに。またの機会ね。」
バイバイと角が立たないようにやんわりさようならを伝え去ろうとキャルシーに背を向けると、
バシッ
「まって、今できた用事。」
と少し慌てた顔で私の手首を掴みながら言った。
「ええ?どんな用事よ。」
「それもお茶をしながらゆっくり話そう。」
さっきより落ち着いた声色で諭すように話しかけてくる。
うーん。私としてはキャルシーのことをよく分からないまま話すとどこかで辻褄が合わなくなりそうで避けたいところだが、この男は私が頷くまで手を離さなさそうなので、
「私も用事があるから少しならね。」
手を離せよという視線を送りながら言葉を返す。
「わかった。」
「わっ!」
キャルシーは同意したと思えば勢いよく私を引っ張りずんずん進んでいく。
連れて行かれたのは庭だった。
よくゲームで姉が主人公と会話していた場所で少し感動していたのだが、
「座って、僕はメイドにお茶を持ってくるように言うから。」
と連れてきた本人はメイドを呼びにどこかへ消えていった。
急な態度の変化は何だったのだろう。彼が帰ってくるまでに考えよーっと。と、このあと彼に質問攻めにされるとは知らずに呑気に待っていた。