知らない設定③
「父様お話って?」
私はメイドが淹れてくれた紅茶に口付けながら話を待つ。
「いやいや、そんなにかしこまった話でもなくてね。今日キャルシーが来ているからね、大丈夫かなと思って心配だったんだよ。」
困った顔でこちらを伺っている。
スレイのタイミングの良さもきっと父様がキャルシーに絡まれてたらどうにかしてこいと頼まれたのだろうと思った。
ん…?
キャルシーは私と親しそうに話していた、しかし父親は私とキャルシーの関係性を不安に思っている。
私とキャルシーの間に何かあったのか?
原作には描かれていない何かが?
困惑しているのが伝わったのか父様は続けて、
「過去のことに囚われているのは私だけだったのかもな、フレイシアは強い子だ大丈夫。何もキャルシーと話すななんて言っていないよ。」
ニコリと微笑みながらズズッと紅茶をすする。
違う。
困惑しているのはキャルシーとの仲を引き裂かれると思っているからではなく、なぜそんなに心配されることが起きているのかなのだ。
しかしそんなことを言ったらこの娘溺愛の父はすぐさま医者を呼び、徹底的な検査をするだろう。それは困るのだ。
私には時間が無い。とりあえず話を合わせとかなきゃと思い、
「そんな心配しないで父様。私なら大丈夫ですから。」
と困った様な表情を作り席を立ち上がる。
「さっき父様に呼ばれていると言って無理に話を切り上げてきてしまったので、キャルシーを探しに行くわ。」
ガチャ
そう言って扉を開け部屋の外に出る。
部屋に残されたスレイとメイドと父親はキャルシー…?と首を傾げていた。
このあとすぐ分かることなのだが、フレイシアはキャルシーのことをレイと愛称で呼んでいたようで切り抜ける作戦はあまり成功していなかった。