知らない設定①
ユードリックに腹立てドスドス歩いていると、
「ぞうでも歩いてるのかと思った!!」
愉快そうな声が聞こえた。
しかし私はこの声の主をしらない。
振り向くと茶髪のそばかすがついた人当たりの良さそうな少年が立っていた。
ゲームキャラクターにこんな人物いたか…?
首を傾げる。
「おーい。俺の話聞こえてる?」
ブンブンと私の前で大きく手を振り存在をアピールしてくる。
こんなに人懐っこいフレイシアの友だちなら少しくらい覚えていたっていいのに、本当に思い出せない。
思い切って、
「えーと、どちらさまで?」
苦笑いを浮かべながら尋ねると
「まってまってまって、どんな冗談!!今日は随分辛口だなぁ。」
と愉快そうにレイがそんな冗談言うなんて面白いねと笑っている。
レイ…?もしかして愛称?彼は私のことを愛称で呼ぶくらい親しいということ。私が知っている限りそんなキャラクターはいなかった。
つまりゲーム中には出ていないが、物語には存在していたということになる。
フレイシアの死の真相は明かされていなかったのでそういうことも有り得るだろう。
でも、そしたらこの彼との幼少の記憶なんて全く私には無い。とても困った状況になったので少し冷や汗が出てきた。
「あ、あの」
「お嬢様。先程旦那様が部屋に来るようにと。」
救世主ー!!!!!!
私はスレイが今だけすごく好きになった今だけ。
「わかったわ!!ごめんなさい!また後でね!」
と名前も分からない彼に別れを告げスレイを連れて廊下を歩く。
スレイは私に引っ張られながら、
「キャルシー様お嬢様がすみません。御用がありましたらメイドに申し付け下さい。」
と丁寧な対応をしていた。
なるほど彼の名前はキャルシーって言うのね、
忘れないようにしなきゃ。
私は父様とスレイに感謝して駆け足で部屋に戻った。