朝食にはベルベリーを…?⑤
姉はずっと困惑していたが、私が考え込んでしまったので気を使って
「まだ疲れているみたいだから、私は戻るわね。」
と部屋を出ていった。
少しするとスレイが部屋に戻ってきた。
私はさっきのことを思い出して少し気まずさを覚えたが、さすがに聞かないと言う選択肢は出来なかったのでそれとなく
「私昨日スレイに何食べたいって話したっけ…?」
と苦笑いで聞いた。
スレイは少しとぼけた顔で
「さあ?なんて言ってましたっけ?」
なんて言いながら紅茶を入れた。
差し出された紅茶を飲みながらスレイが何も言わないならまあいいかと思い、話題を変えた。
今日は部屋に居ないといけないのか尋ねると、スレイは旦那様が心配するので部屋にいた方がいいと話す。
私も父様を心配させたい訳じゃないので、色々整理するためにも今日は部屋にいようと決意した。
トントンと控えめに扉を叩く音が聞こえ、外からスレイを呼ぶ声がする。それにスレイは答え、私に今日は絶対に安静にするように!と釘を指し部屋を出ていった。
ふぅ…。
〔やっと人が居なくなった〕
私はベッドから降り、机の中にある紙を手にした。
今日はまだ時間もあるし部屋から出れないので簡単にメモに書いておこうと思い、椅子に座りペンを持つ。
手始めに出会った人達を書いていこうと、セシルや姉様、父様を始めキャルシーやヨハンなどゲーム外キャラなど大まかに書いていく。
少し時間がたちこんなものかと一息つくと、大きな風が窓から吹き込んだ。
紙達が中に舞う。
「僕が書かれてないよ。」
窓辺からくすくすと話し声が聞こえた。
「あなただれ…?」
勢いよく舞う風に髪を押さえ目を細める。
紙が飛ばされないように押さえていたが、キャルとの出会いを書いた紙が手の間をすり抜けて言った。
あっ……、
慌てて手を伸ばす。
しかしそれは何故か風が吹いている方向へと飛んでいき、窓辺に座る男の子らしき手元へ降り立つ。
「あーあ。キャルシーのことは覚えてるんだ。」
ビリビリに髪を切り裂くとじゃあね。といい男の子は後ろに倒れる。
ここは2階よ!と焦って手を伸ばすが、伸ばした先には誰も居なかった。
残ったのはビリビリに破かれたキャルの事が書かれた紙と、風で散らかった部屋だけだった。
「なんなの…?」
荒れた髪を手ぐしで直し、唖然と立ち尽くす私にどこからか、
「君はきっと思い出す。まってるね。」
と声だけが聞こえた。