序章
「わ〜!何ここ!?ドコ!?」
目を覚ましたら知らない部屋にいたなんてよく小説で見る展開に自分がなっているなんて!!!!!
私は立花霞。27歳の会社勤めで彼氏無し。華金になれば同僚と酒を飲みに出かけ休日にはショッピングをして楽しい生活を送っていた、はず。気付いたら知らない部屋に知らない格好で困惑を隠せない。
「そもそもここはどこなわけ?」
訳の分からない状態に冷静に対応できない。27歳にしてこんな驚き要らないだろう。
扉が開く音がしたと思えば、
「あらあら、大きな声をだしてどうされましたお嬢様?」
と声をかけられる。
お嬢様??お嬢様なんで呼ばれたことは人生で1度もない。しかし、優しそうな少しふくよかな女の人は私のことを確かにそう呼んだ。
「?」
私が首を傾げていると
「どうしたんです?何処かぶつけたりしました?」
と、心配そうに歩み寄ってくる。
焦りに焦った私は、
「だ、大丈夫よ!虫がいてびっくりしたの気にしないで!」
なんて苦しい言い訳をしながらニコニコと優しそうな女の人に笑いかけた。
額にうっすら汗が流れる。
「あらそうだったんですね、また何かあったら呼んでくださいね。」
と優しそうな女の人は少し困った顔をしながらもゆっくり部屋を出ていった。
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少し冷静になってきて部屋をぐるりと見渡した。大きな天蓋付きのベッドに大きなドレッサー、カーテンやカーペットなんて材質をみてもとんでもないお金がかかっている気がする。
しかし、何か微かに見覚えのあるような配置や色味……!
バンッと両手をつき
私は真っ先に自分の姿をドレッサーで確認した、
「フレイシア、、?」
鏡に映っていたのは私がよく遊んでいた乙女ゲームのサブキャラクターの妹だった。この乙女ゲームは発売をすごく期待されていた有名作家書き下ろしであり、私自身もすごく楽しみにしていたものだ。
このゲームの主人公アスターは幼い頃に母を亡くし叔母にひきとられるのだが、叔母は赤髪の無口なアスターを君悪がりアスターを居ないものとして扱った。しかしアスターは母に幼い頃言い聞かせられていた〈優しい心を持ちなさい人に優しくしていればきっと優しさはかえってくるのよ〉という言葉を信じ真っ直ぐに育っていく。大きくなったアスターは女騎士を目指し騎士養成所へと加入。正規ルートでは同じ騎士養成所出身のレノと恋人になるのだが、他にも騎士団長のユードリックや屋敷の執事スレイ、裏ルートで屋敷の令嬢と結ばれるエンドなどがある。
様々な隠しコマンドが存在しプレイヤーをときめかせたのだが、問題は私が今フレイシアというキャラになってしまっていること。
フレイシとは、主人公アスターが女騎士になり令嬢の警護を頼まれる。その令嬢の妹。つまり出番がほぼないモブキャラ。しかも途中で作者がフェードアウトさせたのでどの分岐を選んでも待ち受けるのは死。
本当にどうしたらいいのだろう。見た目からして年齢は10代後半だろう。物語が動き始めるのはアスターが女騎士になる23歳。姉のエレナもアスターと同い歳で私とは3つ離れているので17歳と見積ってもあと3年。
あと3年で私はどうにかして自分の死亡フラグを折らなくてはいけない。元の世界に戻れる可能性があるにし
ろ生きていなくては意味が無い。
「本当にどうしたらいいのよー!!!!!!」