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第5話 幸せの違い

この日はただの平日。進吾は退院後、学校へ復帰しており、今はちょうど3時間目が始まった頃だろう。

私は洗濯物を畳みながらお昼のニュース番組を見ていた。しばらく見ていると、ある母親がインタビューが放送されていた。

"闘病中の娘にできること"

そのような特集がされていた。私は思わず手を止め、ジッと内容を見ていた。


「娘になにをしてあげられるだろうってずっと考えていて……病気に対する不安ばっか考えちゃいますね…」


内容はどれも共感することばかりだった。"何をすれば良いのか"、"余命をどう伝えてあげれば良いのか"、"最期に何を言ってあげれば良いか"……

見ていると、とある発言に目を留めた。


「子供の思ってる幸せと親の考える幸せって、違うのかなって不安になりまして…」

「ほう?具体的にどのような意味なんですか?」

「子供ってまだ未熟ですから、物事の視野が狭いと思うんですよ。でもどれくらい狭いかなんて私たちはわからないじゃないですか?意外に大人びてるところもあるし、子供っぽいところもあるしで良くわからないんですよ。」

「なるほど…?」

「つまり、見ている範囲が狭いからこそ、子供の思う幸せのハードルが低いと思うんですよ。子供にとって見ているものが全てであり、世界ですから…」


最初は何を言ってるのか良くわからなかった。しかし、考えてみると、少しだけ言っていたことが理解できた気もする。1つ心に残ったのが"子供と大人の幸せの違い"

本当にそんなものがあるのか……私としてはどの世代でも幸せと思う基準は共通していて、"自分がしたいことを自由にできる"だと思っている。

子供ならなおさらだ。


「はぁ……なんだかなー」


それ以降は特に言及もなく、スタジオの人たちの意見交換でその特集は終わってしまった。煮え切らない終わり方で、それを見てからは少し心がモヤモヤしている気がした。


ふと進吾の机の上に置いてあったやりたいことノートを見てみることにした。開いてみるとやりたいことが増えていた。


・じゅぎょうさんかんでてをあげる

・うんどうかいのリレーで1いをとる


「授業参観って明日だよね」


カレンダーを確認すると明日は授業参観の予定が入っていた。


「進吾友達とか勉強とか大丈夫かな…」


登校再開をしたときからずっと心配をしていた。新学期が始まって2ヶ月後ぐらいに入院となったため、特に不安に思っていた。


「でも確か来週は友達と遊んでくるって言ってたし、友達はいるのかも」


しかし問題なのが運動会についてだ。


「夏休み明けたら運動会だっけ…10月かー。体調良くなってると良いんだけど…」


病気の影響で体力も落ち、運動もあまりしていないため、これを叶えられるか不安なところだ。リレーで1位を取ることはもちろん簡単ではない。さらに一緒に走る子の速さ次第という運要素も持っている。


そんな不安な気持ちと期待を抱えながら、洗濯物を畳み直した。

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