EP5-6 - 魔法は力
「ところでここは? 皆さんはどうしたんですか?」
段々と自分が倒れる前後の記憶が戻って来たフィニティは、エリーの膝に頭を乗せながら辺りをキョロキョロと見渡した。木陰に設置されたベンチから見えるのは道を歩く人々だけで、一緒に博物館へ行くはずだったセンやハジメの姿は見当たらない。
「あぁ、ここは博物館の近くにある公園だよ。フィニティが倒れたから、とりあえず貴方が楽な姿勢をとれそうな場所に移動したの」
「そうなんですか」
「みんなは博物館に行ってるよ。フィニティの分もしっかり見学するから任せてくれってリーバは言ってた」
「そうなんですね。リーバさんにはお礼を言っておかないと」
恐らくリーバは、せっかく博物館に来たのだからこのまま解散するのは勿体ないと思っていたのではないだろうか。心のどこかでそう推測するエリーであったが、わざわざ口に出す必要もあるまいと黙っていることにした。
「さて、体の方はもう大丈夫なのかな。大丈夫なら博物館に行ってみんなと合流しようよ」
「……」
「フィニティ?」
フィニティは答えない。これまでの会話や、今の顔色を見る限り彼女の体調は治っていそうなのだが。
そのまま沈黙だけが流れ、彼女が答える気配は一向にない。もしかしたらまだどこか具合が悪いのかと、エリーが問いかけようとしたその時、とある人物たちが二人に声をかけてきた。
「二人とも、展覧会の方は見終わったぜ」
「おや、フィニティが目を覚ましたようじゃの」
博物館に向かっていた古代魔法研究会の部員たちだ。顧問であるセンも彼らの後ろを歩いていた。
「心配かけてすみません。博物館はどうでした?」
「いやー流石古学博物館じゃの。想像以上に立派な展覧会じゃったわ」
「俺にはさっぱりだったがな。解説の文字を見てもチンプンカンプンだ」
「嘆かわしいのー。古代魔法に精通する者ならばアレを見て興奮しないわけがないじゃろうに」
「はっはっは、俺は部員として名前を貸しているだけで古代魔法に詳しいわけじゃないぞ」
「そういえばそうじゃったのー」
豪快に笑うハジメ。どうやら彼の裏表のない性格は、いつもテキトーに話をするリーバとは相性が良さそうだった。
「僕は初めて古代の遺物を見たけど、すごく勉強になったよ」
「そうじゃろそうじゃろ。流石顧問の先生は見る目があるのー」
「失われた古代の技術……。確かにこれを解明できれば、僕ら魔法使いはもっと色々なことができるようになるかもしれないね」
「……」
センの何気ない一言に何故かフィニティは眉を顰める。その顔を見ていた人物は、誰もいなかった。
エピソード5は今までより長くはならないと思います。多分。




