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フィニティ・フレインは山を下りて何を思うのか  作者: 鳥羽 こたつ
エピソード5

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EP5-4 - それは誰も知らない……

――――――


 ……二人の男が言い争っている。

 一人は栗色の髪を短く切り揃えた若い男、もう一人は白く染まった髪を長く伸ばしている老人だ。彼らは大小様々な本棚がいたるところに設置されている広い部屋の中心で、”何か”に対して言い争いをしていた。


「……なのだから、もう研究はやめるべきだ!」


 白髪の老人は一歩踏み出してそう宣言していた。その声色や眉間に皺が寄った顔からは、強い怒りのようなものが込められているよう感じられる。

 対して、老人の先にいる若い男はその怒りになど全く動じず、口元に不敵な笑みを浮かべて老人へと向かい合った。


「何を言っているんですか。この魔法によって世界はより豊かになる。何故それを止める必要があるのです」

「確かに人類ができることは増えるだろう。しかしそれが人類のためになるとは限らん!」

「それはやってみなければならない。ワタシが提唱していることが間違いであると、あなたは何故そう思うのですか」

「わかるに決まっている! こんな、こんな……」


 老人は握りしめた拳をわなわなと震わせ、行き場のない怒りを壁へとぶつけると、その視線をとある人物へと移動させた。


「こんな命を弄ぶような魔法など、あってはいかん!」


 老人が見たのは、ゆりかごの中で眠る栗色の髪の幼い少女だ。その小さな背丈から察するに生まれてから一年程度しか経っていないのだろう。そんな彼女は鈍感なのか、老人が大きな声を出したのにも関わらず穏やかな顔で眠っていた。


「どうして。この魔法は画期的だ。これさえあれば人々は死に怯えることがなくなる。病気や寿命という大きな脅威がなくなるのかもしれないのですよ」

「人々にとって寿命は脅威ではない。人間が付き合っていくべき存在だ」

「意味が分かりませんね。ずっと生きていたくはないのですか?」

「長くは生きていきたいさ。だが、人の手に余る方法で死を乗り越えたいとは思わん!」

「だから、その方法を人類が手にして使いこなすと言っているのですよ」

「使いこなせるわけがない」

「やってみなければわからない」


 話は平行線だった。老人の主張と男の主張、正解がない問題であるために、二人が妥協しあうことはなかった。

 そして話し合いでは結果が出なかった以上、二人は直接的な行動に出ることとなる。


「あなたも見ればわかります。この魔法のすばらしさを」

「……何をするつもりじゃ」

「作り出すのですよ。失った日常をね」


 若い男は手元にある本を開くとその内容を唱えようとした。しかし彼が詠唱を始める前に、老人が男に飛びかかる。


「やめんかっ!」

「放しなさい。詠唱の邪魔です」


 老人に抵抗しながら、男は小さな声で何かを喋っていた。やがて男の周りが光だし、魔法陣が生まれる。彼は小さな声で詠唱を続けていたのだ。

 そのことに気が付いた老人だが、年齢による体力差のせいだろう。老人は男に振り払われ、床へ倒れてしまう。そうしている間に魔法陣は光を増し、いまにも魔法が放たれようとしていた。


「見せてあげましょう。ワタシが作り上げた最高の魔法を――」


 そんな男の言葉を最後に、部屋は眩い光で覆われた――。

予想以上に忙しい日々が続いております。

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