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フィニティ・フレインは山を下りて何を思うのか  作者: 鳥羽 こたつ
エピソード4.5

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EP4.5-1 - 注射はイヤだ

昨日の更新で初めて200PVを達成したので、せっかくなので投稿しました。

エピソード4.5ということで、本筋に関わらないお話になります(多分)。

「……ん?」


 とある日の放課後の出来事。

 寮に戻るため廊下を歩いていたハジメは、背後から聞こえるドタバタといった音に意識を奪われた。


「あぁっ、は、ハジメさん。助けて!」


 廊下を駆け抜けていたのはフィニティだ。今にも泣きそうな彼女はハジメを見つけると、彼の背後に回り自らの体を隠そうと必死にその大きな背中にしがみ付き始めた。


「おい。なんだフィニティ」

「あたしはここに来ていないと言ってください! お願いします!」

「いや何のことだ。説明してくれないと……」

「ハジメ!」

「わー来た!」


 唐突に大きな声で呼びかけられ、ハジメは声がした方へ体を向ける。そこには先ほど見た光景と同じく廊下を走っている生徒が見えた。


「おう、どうしたエリー。お前が廊下を走っているなんて珍しいな」


 いつものエリーならば理事長の娘という立場であることを意識しているために廊下を走るなんて野蛮な行為はしないはずだ。そんな彼女が今は息を切らしながら、鬼のような形相でハジメを睨みつけている。


「フィニティ、来たでしょ」

「え、あ、あぁ」

「ちょっと、ハジメさん!」


 その剣幕に威圧されたハジメは、フィニティとの約束を忘れてついつい言われるがままに答えてしまう。そしてターゲットの声を聴いたエリーは、器用に口角だけを上げて声の方へと歩き出した。


「捕まえたよフィニティ。さ、先生を待たせてるから早く行こうね」

「イヤです! 絶対にイヤです!」

「嫌でも来るの!」

「イヤだーっ!」

「お、おい。ちょっと待てよ」


 あまりにも普段のフィニティからは考えられないほどの駄々こねっぷりを見て、思わずハジメは声を掛けてしまう。フィニティの首根っこを摑まえたエリーは、先ほどまでと同じような鬼の形相かつ口角だけを上げた笑顔を浮かべ、ハジメの方へと振り返る。


「なに?」

「い、いや。せめて何が起きているかだけでも教えてくれ。このままじゃ帰るに帰れん」


 何故普段は仲の良い二人がこのような鬼ごっこをしているのか。それ以上に何故普段は見せないような姿を見せているのか。どうしても気になったハジメはそのことを二人に尋ねた。すると、首を捕まえられて身動きが取れないフィニティが悲痛な顔でハジメに訴えかける。


「針です」

「……針?」

「エリーさん、あたしに針を刺そうとするんです! こんな酷いことがあっていいんですか!」

「注射でしょうが! 大きな声で変なこと言わない!」


 よくはわからないが、わかったこともある。どうやらフィニティは、注射から逃げるためにエリーから全力で逃げていたようだ。

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