EP4-37 - 黒いコートとフィニティ・フレイン
「そうだフィニティ。さっき唱えた魔法ってなんなの?」
目の前に現れた正体不明の人形、それはフィニティの魔法によって生み出されたものだった。ならばその魔法の詳細がわかれば、この人形の正体がわかるのではないかとシャータは推測した。その言葉を聞いたフィニティは記憶をたどり、自らが唱えた魔法についてを思い出そうと試みる。
「えっと、幻影……なので過去に起きた出来事の再現、ですかね」
「再現?」
「はい。この場合はその石の目の前で起きたことを映し出しているのだと思います」
「へぇ。そんなことができるんだ」
これまた一同にとっては馴染みのない魔法であった。
一体フィニティは自分の知らない魔法をどれほど知っているのだろう。センはいつか彼女に問いただしてみようと心に決めた。
「だがこいつは立っているだけで何もしていないぞ。再現するのは姿だけなのか?」
「そうなんですよね。この魔法は動きも再現できるはずなのですが」
ハジメが抱いた疑問に対して返答するフィニティ。彼女の答え方から察すると、この魔法自体は正常に発動しているようだ。つまりコートの人物は魔法石の前で何もせず、ただただ立っていたことをわざわざ記録して残したことになる。一体何が目的でそんな奇行を起こしたのだろうか。一同が思考を巡らせる中、一番早く口を開いたのはお喋りな彼女であった。
「さて、真意はどうであれはっきりしたことがあるのう」
「え、何? アタシにはさっぱりだけど」
「簡単なことじゃ。この魔法が何で書かれていたのかを思い出すといいぞえ」
今目の前にあるこの人形はフィニティが唱えた魔法によって映し出されている。そしてその魔法自体は魔法石に刻まれた詠唱文を読み上げたものであり、その詠唱文はフィニティにしか読めなかったもので……。
「……そうか。この魔法はフィニティが読むことを前提に作られているんだ」
センが導き出した答えに対し、リーバは首を縦に振った。
魔法石に書かれていたのは古代魔法の詠唱文だ。リーバのように書かれていることが古代魔法だということは理解できても、内容まではっきり理解できるのはこの学校の中ではフィニティだけだ。つまり黒コートの人物がこうして残した魔法は、フィニティ以外は読み取れないということになる。
加えて黒コートの人物は自らがはっきり映る形で幻影の魔法を残している。これらのことからその意図を察すると。
――コートの人物はフィニティと関係を持つため、無関係な人物を巻き込んでいることになるのではないだろうか。




