EP4-29 - 交差した線と線
「……ま、そういうこと。わたし達は本当に古代魔法研究会が嘘をついているのかどうか、直接会って活動を確かめようとしたの」
実技魔法研究会二人が何故忙しい合間を縫って古代魔法研究会に向かったのか、一同が抱いていた謎は、今のショージュの証言によってようやく解消することができた。
「上手くいけばその瞬間にクラブを潰せると思ったからね」
「確かに、活動をしていないのであれば糾弾することはできるでしょうけど」
「それ以前にこれまで学校へ提出した記録が偽装されている可能性が出てくるの。学校側にとっては部員数なんかよりも重要なことよ」
確かにマージ・モンド側からすれば、人数が多くて乏しい成績を残しているクラブと人数が少なくて優れた成績を残しているクラブ、その二つがあれば間違いなく後者のクラブを残したいと思うだろう。
「で、いざ行ってみたらこの女、古代魔法を使えるって言ったのよ」
「あの時はいきなりヅカヅカと怪しい二人組が入って来たから驚いたのー」
「うるさい。……だからわたしたちは魔法を見せろと言ったの。そしたらこの女」
「タダでネタを見せるわけにはいかんじゃろ?」
しれっと、悪びれもせずにリーバはそう言った。
リーバは以前、ワイルとショージュがやってきて、彼らは古代魔法を見ることができれば研究会に入会する約束だった。そう証言していた。だが実際はリーバの方から古代魔法を見せる代わりに入会してほしいと交渉したらしい。ワイルとショージュが最初に一同を邪険に扱っていたのも、その事情があったことを考慮すると納得ができる。
「とりあえず、わたしたちはその交渉をのんだわ」
「え、もし本当に古代魔法を見せられたらどうするつもりだったの? 確かうちの学校って兼部禁止だったよね?」
「他に証人のいない口約束なんていくらでも反故にできるわ」
思ったよりこの子も良い性格をしているな、と質問者であるシャータは思った。
「それでわたしたちはこの魔女に魔法を見せてもらうため、こっちの実験室に移って魔法を唱えてもらったの。後はご存じのとおりよ」
長い話であったがこれでようやく事件の背景がわかった。
ワイルとショージュは古代魔法研究会の活動に関する悪い噂を聞いたため、それを確かめるためにリーバの下へと訪れた。リーバはそれを知らず、自らの活動の実績を示すために魔法を唱えようとした。その結果リーバの魔法は暴発し、かつ防災装置が動かなかった。昨日の事件が起きたということ。要点をまとめるとこのような感じだ。振り返ると、今回は偶々魔法の暴発と防災装置が動かなかったこと、その二つの偶然が重なったことにより起きてしまった事故、と考えるのが自然だろうか。
しかし、これまでの話を聞いてエリーは何かが引っかかっていた。他の可能性も十分に考えられるのではないか、と。
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