EP4-18 - 二人の証人
「何だよ、何しに来たんだよ」
リーバの話を聞き、事件の現場にいたという生徒から話を伺うため、フィニティ達一同は魔法実験室へとやってきていた。現場にいた一人だというその男子生徒は眼鏡を掛けて本を読んでおり、突然現れたフィニティ達を見て辟易とした表情を浮かべているように見えた。表情については、彼は青い前髪を目にかかるまで伸ばしており見えづらいため一同の推測であるが、口調から察して彼が一同を邪魔者だと思っていることは間違いないだろう。
「貴方がワイルですね」
「お前、エリー・サーベスだろ。理事長の娘がボクに何の用だよ」
ワイルというその男子生徒は、エリー達を拒否するように視線を本に戻して話を続ける。話すことはないとでも言いたげな様子だ。
「昨日、この実験室で起きた事件についてなんですけど」
「事件なんかじゃない。あれはそこの奴が勝手に起こしたミスだ」
「酷い言われようじゃのー。もう少しワシのことを慮ってくれても良いじゃろうて」
フィニティ達についてきたリーバがいつもの口調でおどけた様子を見せた。何故ついてきたのかと言うと、彼女曰く『ベッドの温もりにも飽きたわい』とのことで、体調が万全ではないのにも関わらず同行することにしたらしい。
「主らがワシを助けずにすたこら逃げてしまったせいで、ワシはおーきなケガを負ってながーい人生の貴重な一日を無駄にしてしまったのじゃぞ。その責任はどう取ってくれるのかえ?」
「関係ない。ボクは古代魔法を見せてもらうという約束をしただけだ。なのにお前が見せたのはただの暴発した魔法だった。そんな奴を気にかける必要なんてない」
「なんじゃもう。感じ悪いのー」
そう冷たく言い放つワイル。彼はその言葉が自らの総意だとでも言うように、依然としてフィニティ達への態度を変えようとしない。
「昨日のことならこれ以上のことを話すつもりはない。ボクは忙しいんだ」
「本を読むのに忙しいのか?」
「水の季節に行われる全国魔法大会の練習をしなければならないんだ。お前たちみたいな暇人と一緒にするな」
「なんだこいつ。感じ悪いな」
ハジメがリーバと同じ感想を口に出すが、やはりワイルは我関せずといった顔で本から視線を動かさない。彼が自分で言ったようにこれ以上話すつもりがないのだろう。
そんな彼の下へ一人の女生徒が近づいてくる。彼女はワイルと同様に眼鏡を掛けており、赤い長髪を一つの三つ編みでまとめていた。その外見からは真面目そうだということと、優しそうだという二つの印象を見受けられた。そんな彼女を見て真っ先に反応したのはリーバであった。
「お。あやつは」
「知っているんですかリーバさん?」
「まぁの。あやつはショージュ・セイトじゃ。ワイルと同じように昨日実験室におった生徒じゃよ」
リーバの言葉を聞いた一同は、改めて三つ編みの生徒ショージュに目を向けた。このタイミングで現れた証人。もしかしたら彼女が、何か事態を好転させるきっかけになるかもしれないと、エリー達は思っていた。
この小説は色々設定変更などの裏話があるのでいつかXでツイートしようかなと思ってます。




