EP4-16 - 魔女の正体は
「ま、結局ワシは学校側のミスによって怪我を負ったというわけじゃ。我ながらついてないのー」
「……」
実際に現場にいた女生徒がそう証言している以上、他に事実を確かめる手段はない。そうなると本当に話はここで終わりだ。
しかしこれを認めてしまうと、エリーの父親であるスーンの名声は落ち、加えて彼が経営するこの学校の入学希望者も減るだろう。エリーは父や教師達が、絶対にミスを犯していないとは思っていない。だが、立派な魔法使いを育てたいと思っている彼が、まだ開校してから一年も経っていないこの学校で致命的なミスを犯すほど迂闊であるとも思えない。それを考慮すると、何か別の事実がある可能性も視野に入れた方が良いはずだ。
「……そういえば、なんでお前は魔法実験室にいたんだ?」
場に蔓延っていた静寂を破ったのはハジメだった。
「それはさっき話したじゃろ? ワシは古代魔法の研究を――」
「お前が古代魔法の研究をしていたのは聞いた。だが、実際に唱えることができるほど研究は進んでいるのか?」
「確かに……。古代魔法を使える人がこの学校にいるんだったら、もっと有名になっているはずだよね」
「ぎくっ」
ハジメの言葉にシャータが便乗すると、女生徒はバツが悪そうな顔をした。
古代魔法が使われていた時代、ユニヴァース・ロストについては未だわかっていないことが多い。そもそも今の世界では、古文書を読むために古代語の研究が行われているような状態だ。とはいえ古代魔法の存在は解明されているため、誰も古代魔法が使えないというわけではない。実際、著名な魔法使いが研究を重ねた結果、一部の古代魔法を唱えることができたという記事も出回った。
そう、古代魔法が使えるのであれば記事が出回るほどなのだ。それをただの学生が使えるものだろうか。一同の頭上に疑問符が浮かび上がる。
「お前、何か隠してないか?」
「な、なんのことかのー」
「あ、これ完全に黒だね。正直に話したほうがいいよ」
「う……」
明らかに動揺している女生徒。そして、未だ明かされていない情報があることに気が付いたのはこの場で最も幼い少女だった。
「そういえば、あたしたちあなたが誰か聞いてません」
「あ、確かに」
そう。魔女やらくどい話し方やら古代魔法やらで忘れていたが、フィニティ達は女生徒が誰なのか名前すらわかっていない。この女生徒の素性がわかれば彼女が一体何を隠しているのかがわかるだろう。
これまでの振る舞いもあり、エリー達は突き刺すような視線を女生徒に送っていた。その視線に耐え兼ねた女生徒は観念したかのように自らの名を語り始める。
「うぅ……。ワシはリーバ・バロァ。古代魔法研究会のただ一人の部員じゃよ……」
古代魔法やその価値観についてはEP3-6で語られてますので、もし気になったらそちらからご確認ください!




