EP4-12 - 第二の事件
保健室にたどり着いた一同は女生徒の身柄を養護教諭に預けた。教師が言うには彼女は気を失っているだけであり、命に別状はないとのことだ。女生徒の目が覚めるまでに一度現状を整理することにしたエリー達は、保健室から出て先行して現場に訪れていたフィニティに話を聞くことにした。
「うーん、でも本当に部屋に火が着いてただけでしたよ」
「火が着いてたのもすごい話だけど……。そういえば消火装置動いていなかったよね?」
「おう、そういえばそうだったな」
実際、実験室では魔法や魔法に関する道具を扱う以上、魔法の暴発などが発生することもある。今回のような事件はマージ・モンドにおいては珍しいわけではないのだ。ただし、魔法実験室には多数の防災装置が設置されているため、普段は魔法が暴発しても即座に被害が収まるようにできている。それなのに今回は部屋の中の火が消えず、煙が廊下まで漏れており、更に遠くにいても聞こえるくらいの爆発音が鳴っていた。そこから考えられることは、どの防災装置も起動しなかったということだ。
「装置の故障か?」
「自然に考えるとそうだろうね。ま、魔法専門学校の実験室で防災装置壊れてましたーなんてなったら即刻理事長がクビになると思うけど」
「……私の私情は交じってるけど、お父様に限ってそんなミスはしないと思う」
「何故だ?」
「お父様はこの学校に強い思いがあるみたいだから設備とかはちゃんとチェックしていると思う。それに自分が作った基準に達する生徒を危険にさらすようなことはしないはずだよ」
理事長の娘であるエリーの放った言葉には説得力があった。確かに理事長という立場以上に、彼はこの学校や魔法使い達の方を大事にしている節が見られる。それはこの学校の入学制度などを見れば明らかだ。そんな彼が、優秀な魔法使いを輩出するために必須な教室の設備の調子を把握していないということは考えにくいだろう。
「だが、だとしたら何故装置が動かなかったんだ?」
故障じゃないのであれば、他に考えられるのは誰かの意思で装置が止められていたということだ。そしてその装置の管理は、理事長以外に教師たちも行えるようになっている。意図的に防災装置を止めることなど聞いたことがないが、少なくとも実行可能なのは各教師たちということだ。
「とりあえず今回の件は先生たちにも伝わっているみたいだし、そのうち誰がやったかわかるんじゃない?」
「そうだな。やれやれ、今日はクラブ見学どころじゃなくなっちまった」
「……そう、だね」
納得したような様子を見せるシャータとハジメに対し、エリーはまだ胸の中にモヤモヤとした違和感を抱いていた。上手く言語化ができないものの、この嫌な感じはつい最近味わったものだ。恐らくこれは自分が力に溺れた時と同じ気持ち。何か異常なことが起きている、そんな気がしていた。
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