EP4-9 - そこにご褒美があれば
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時は経過して放課後。エリーとシャータの二人は特別枠クラスの教室へと向かっていた。フィニティがクラブ活動を始めるためのサポートをするためだ。エリーの方は特別枠クラスの人間にあまり良い感情を持っていないこともあってやや躊躇していたが、自身を助けてくれたこともあり恩返しのために動いていた。
「やほー、来たよフィニティー」
「おう。シャータじゃないか」
扉を開けて声をかけるシャータであったが、返ってきた声は野太いものだった。声の主を確かめようと二人が視線を向けると、そこには黒い髪を無造作に伸ばした大男がいた。それを見たエリーだけが若干嫌そうな表情を浮かべる。
「げっ」
「おーハジメじゃん。フィニティ知らない?」
「あぁ転入生か。それならほら、そこだ」
ハジメが差した指の先には、昼の時に見た以上に衰弱しているフィニティがいた。まるで一週間絶食したかのようにやせ細っている。
「なんだか授業を受けるたびに細くなっていってな。難儀な体質をしていると思ったもんだ」
「難儀ってどういうことですか?」
「おう、理事長の娘か。転入生は時間が経つとやせ細っていく体質なんだろう?」
「違いますよ……」
「そうそう、彼女はいたって普通な女の子だよ。フィニティ、生きてる?」
「あ……。シャータさん……」
頬がこけたフィニティはシャータに対して弱弱しく笑みを浮かべる。その表情はこれまで見てきたいつもの活発な彼女からは想像がつかないような表情だった。
「おー。これは思ったよりも重症だね」
「言ってる場合? フィニティ、クラブ見学に行くよ」
「クラブ、見学……?」
エリーが再びフィニティを背負うも、彼女は事態に追い付いていない。どうやら昼休憩の時に話していたことを聞いていなかったようだ。
「そうだよ、クラブ見学。そこで魔法の実践もできるかもしれないよ」
「魔法の、実践?」
ピクリと動くフィニティの体。先ほどまでは干物を連想するかのように弱弱しかった彼女の肉体に、徐々に熱意と活気が戻っていく。
やがて閉じていた目をかッと開くと、フィニティはエリーの背を下りて自分から道を歩き始めた。
「行きましょうエリーさん! ところでクラブ見学って何ですか?」
「……」
魔法の実践を行えるとのことで、まるで水を得た魚のように生き生きとしだすフィニティ。その姿には数秒前の弱弱しい面影など微塵も残っていなかった。それを見たエリーは安心しつつも、言葉一つで回復するのであればここまで心配する必要はなかったのではないかと若干腑に落ちない気持ちを抱えるのであった。
ゴールデンウイークが終わってしまった……。
気持ちが追い付かないですね……。




