EP4-6 - フィニティのために
「なるほど、話はわかった」
教員室に着いたエリー達は、先ほどフィニティから聞いた話をセンへと話した。話を聞き終えたセンはやや困惑した表情を浮かべつつ視線を、衰弱しきっている少女へと向ける。
「まさかフィニティが座学でここまで弱るなんてな……」
「それはまぁ、私たちも思いましたけど」
「ずっと山で暮らしてたとは聞いてたけど、なんやかんやアタシたちとは普通に話せてたしねぇ」
話題の中心であるフィニティはというと、先ほどまでと同様に衰弱した様子でエリーの背中におぶさっていた。自身の名が挙げられているにも関わらず、彼女はまったくの無反応で全体重をエリーに預けている。いくらフィニティの体が小さいとはいえ、こうして体重を掛けられていると重さを感じてしまうものだ。早く問題が解決しないものかとエリーは心の中でぼやいていた。
「ねぇセンちゃん。なんとかならない?」
「おいシャータ、ちゃんとチャーティー先生と呼べと……。まぁ今はいいか」
シャータの態度への注意はまた後にしつつ、センは小さく唸り声を上げて解決策を考え始める。しかし、彼の険しい表情が切り替わることはなかった。
「申し訳ないが、僕の一存でフィニティの待遇を変えることは難しいな」
「だよねー」
予想通りの答えを聞いたシャータが両手を上げる。文字通りお手上げ状態だということを表しているらしい。
相談しに来た二人も理解はしていたが、セン・チャーティーはただの一教師だ。彼自身には何かを決めるための権利などない。
しかし、それでも彼はこの学校の教師であり、フィニティをこの学校に連れてきた張本人だ。その生徒のために何かできることはないだろうかと、彼は再び思考を巡らせる。そうして考え事をしている内に、彼は無意識のうちに自分の思考を口にしてしまっていた。
「校則、は変えられない、よな……。だったら、フィニティに変わってもらう、とかか?」
ぶつぶつと呟くセン。独り言の速さは徐々に早くなっていく。
「フィニティが授業を苦に思わないようにするには……。今のルールから使えそうなものは……」
そして思考が全て繋がったのか、彼はパッと明るい表情で顔を上げる。
「何か思いついたんですか?」
「あぁ、こういうのはどうだろう!」
センは若干勿体ぶったように間を置くと、意気揚々と立ち上がりこう言った。
「フィニティ、君はクラブ活動を始めるべきだ!」




