EP4-5 - 慣れない授業で拒否反応
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「お。あれフィニティじゃない?」
「ほんとだ」
時刻は過ぎて昼休憩の時間。
学食で共にランチを取っていたエリーとシャータの視線の先には、フラフラと歩いているフィニティがいた。足元がおぼつかない彼女を見ていると、他の人にぶつかりそうで見ている方がハラハラする。
「おーいフィニティ」
「あ……」
シャータがフィニティに向かって手を振ると、フィニティは弱弱しく振り返す。顔色もあまりよくないところを見ると、どうやら体が衰弱している様子だ。
「大丈夫? 風邪でも引いた?」
「いやいや今朝は元気だったし違うでしょ」
「なんでもないです。ただじっとしているのが大変で……」
「あー、そういう」
本日、午前中に行われた特別枠クラスの授業は全て座学だったらしい。机にずっと座って教科書を読み、講師の話を聞く。なんてことない授業の形だが、これまで独学で魔法を学んでいたフィニティにとっては少々辛いものがあったようだ。彼女の話を聞いてみると、山の中で暮らしていた頃は本を読むとすぐに魔法を試していたらしく、体を動かせず話を聞くばかりの授業は少々苦痛を感じるらしい。
しかしここ数日の間エリーにみっちりと共同生活とは何かを叩きこまれた彼女は我儘を言うこともなく、代わりに自身の精神を削って授業を受けていたとのことだ。
「そうは言ってもこればっかりはねぇ」
この学校はあくまで公共の施設だ。フィニティに合わせてルールが変わることはない。ならば、フィニティが学校に合わせるしかない。
「アタシたちじゃどうしようもできないなぁ」
「……」
お手上げ状態のシャータに対し、顎に指をあてて考え込むエリー。その様子は、まるで何かしらの策があるようだった。
「なにエリー。もしかして理事長権限でも使うつもり?」
「そんなわけないでしょ。そうじゃなくて」
エリーは顔を上げると、その細い指をピンと立てて一つの提案をした。
「チャーティー先生に相談してみたらどうかな」
「センちゃんに? 何を相談するのさ」
「まだわからないけど……。でもほら、フィニティを学校に連れてきたのはチャーティー先生だし、何かしらの対策は取ってくれるんじゃないかな」
エリーの提案に対し、衰弱したフィニティは弱弱しく首を縦に振る。一教師にどこまでできるかはわからないが、生徒だけで悩んでいても解決しなさそうな問題を抱えていても仕方がない。何より、このままだとフィニティがどうにかなってしまいそうだ。昼食を食べ終えた二人は、フィニティの体を引きずって教員室へと向かうのであった。




