EP3-26 - 少女の人生の幕が開く
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「エリー、無事で良かったね」
保健室を後にしたシャータとフィニティの二人は、放課後の廊下をゆっくりと歩いていた。目が覚めたとはいえ、エリーは意識不明で倒れていた身だ。話したいことはまだまだあったが、今日は彼女の体を休ませることを優先にし、二人は自室へと戻ることとした。
フィニティがエリーを助けてから約一日が経過していた。エリーが倒れていたことは学校中で話題になっており、色々な憶測が飛び交っていた。エリーに振られた男子生徒が復讐に走った事件だとか、理事長に恨みを持つ者が行った犯行だとか、そういった根も葉もない憶測だ。現状真相を知る者はフィニティとシャータの二人、いや実際に彼女を助けたフィニティくらいだろう。
「いや昨日はびっくりしたよ。エリーを探しに行ったら何故かフィニティもそこに倒れているんだもん」
「ごめんなさい。ちょっと魔法の方に集中してしまって」
「治癒魔法、だっけ? 初めて聞いたけど、そんなものがあるんだね」
治癒魔法を行ったフィニティはエリーを助けることができたことを確認すると、彼女もエリー同様その場に倒れてしまった。高度な魔法を連続で使用したことで、体力を消耗したせいだった。そこに駆けつけてきたのがシャータであり、二人をまとめて保健室へ連れて行ったのだ。エリーは目が覚めるまで時間がかかったものの、フィニティの方はものの数十分で目を覚ました。そして目を覚ましたフィニティは、シャータにあの場で何があったのかを伝えた。
「あとなんだっけ。黒いコートの……」
「商人です。男の人か女の人かもわかりませんけど」
目を覚ましたフィニティは自らが倒れていた現場へと戻ると、捕らえていたはずの謎の商人はその場にいなかった。フィニティが意識を失ってしまったことで、魔法による拘束が解けたためだ。自分を助けたシャータにその人物を見ていないかを確認したが、見ていないということだったため、その人物の行方は全くわからなくなってしまった。
正体も目的もわからない人物。そんな者を放置しておくのはあまりにも危険すぎる。何かしらの対策を取るべきだが、そもそも目撃したのがフィニティくらいしかおらず、教師たちもあまり真に受けてくれていないのが現実だった。しかし、被害者であるエリーが目を覚ました以上、彼女が証言すれば少しは動きが見られるだろう。
「ともかく、今日は戻ろう。フィニティは入学の準備もあるでしょ」
「あ、そうなんです。それで少し手伝ってほしいことがあって」
「お、何かな。お姉さんに言ってみなさい」
相手の動きが見えない以上、今のフィニティにできることはない。ならば、一旦は自らの用事を優先しても良いだろう。
制服の着方を覚えるために、フィニティはシャータを連れて自室へと戻るのであった。
長かったエピソード3もこちらで終了です。
エピソード4はこれ以上長くはならないはず……はずです。




