EP3-24 - 夢から覚める時
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「……あれ、ここは」
目覚めたエリーの瞳に入って来たのは、白くて清潔な見覚えのない天井だった。思考がはっきりしない頭を抱え、ゆっくりと体を起こす。彼女の体には布団が掛けられていた。
ここはどこだろうか。キョロキョロと辺りを見渡すエリーだが、右隣は壁、もう左隣はカーテンで仕切られており、狭いスペースにいるということしかわからない。強いて何か情報があるというならば、あまり嗅ぐことのない匂いがするくらいだろうか。また、背中の柔らかい感触にも意識が向いた。どうやら今はベッドの中で眠っていたらしい。
そうして色々なことに気が付いていき、意識が段々とはっきりする度にエリーの頭が悲鳴を上げる。ズキズキとした耐え難い痛み。不快な痛みに堪えるため、エリーは再びその体を横にする。
「私は、確か……」
眠りにつく前、自分は何をしていたのか。エリー何とか思い出そうとしてみるが、中々に記憶が結びつかない。
思い出せるのは自分でない存在が自分を操っていたような浮遊感。まるでずっと夢の中で自分の行動を客観視するような、そんな非現実な感覚だけだった。
「もっと前……」
自分が誰なのか、ということは思い出せる。年も、生まれた場所も、自分がマージ・モンドという学校の生徒だということも思い出せる。悲しいことに、自分があまり優秀な生徒でないことも思い出してしまった。
「あ、そうだ」
そのコンプレックスを刺激され、彼女は怪しい商人から薬を貰った。そしてそれを服用したところエリーは気分が高揚してしまい、今まで扱うことができなかった魔法を見せつけるようにして放っていた。まるで自分が何でもできるような全能感に包まれていたのだ。
しかし、その感覚は急に消えた。吐き気や嫌な妄想が彼女の体を支配し、やがてその体は動かなくなり、ネガティブな意識も闇の底へと沈んでいった。
「……思い出したっ」
エリーは体が動かなくなり、助けを求めたがその声は誰にも届かなかったことを思い出した。心の先から死を覚悟した事実もである。だが彼女は生きていた。多少の頭痛はあるものの、例の非現実な感覚や、体が冷たくなるような嫌な感覚も残っていない。
誰かが助けてくれたのだろうか。だとしても一体誰が。その答えは彼女が出す前に、自分からやって来る。
「あ、エリーさん。目が覚めましたか」
保健室のカーテンを開けたのは、フィニティとシャータの二人であった。
なんか投稿ミスってました……。




