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フィニティ・フレインは山を下りて何を思うのか  作者: 鳥羽 こたつ
エピソード3

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EP3-23 - 四つの魔法と治癒の力

「……」


 倒れたエリーを救うため、フィニティは両手を翳して詠唱を唱え始める。その声は小さく、本人以外に聞き取ることはできない。


「『時空』。我が瞳に往時の情景を……」


 詠唱が始まると、翳した手の先に生まれた魔法陣が徐々に光を増していく。やがてフィニティが詠唱を唱え終わると、その魔法陣の輝きがフィニティの目に吸い込まれていった。輝きを宿したその両目は、普段の彼女の瞳の色とは異なり、銀色に染まっていた。


「なに?」


 その様子を見ていた黒いコートを着た商人が驚嘆の声を漏らす。謎が多いこの人物にとっても、今のフィニティの魔法を見て驚きを隠せなかった。


「よし、次は」


 額に流れる汗を手で拭い、再びその手をエリーに翳す。その瞳は銀色のままだ。彼女は連続で魔法を唱えようとしている。

 集中するため、一つ大きな深呼吸をすると、フィニティは再び詠唱をし始めた。しかし、先ほどと違うのはその魔法陣の数だ。


「……三つの魔法陣?」


 フィニティの手の先に現れた三つの魔法陣。それはつまり、三つの魔法を同時に詠唱しているということだ。高い技術が要求される複合魔法を、彼女は自分の瞳、つまり人体に影響する魔法を唱えた後に行っている。それは非常に高い魔法力が必要とされるものであった。

 一般的な魔法は、炎や風などを生み出す『生成魔法』というものだ。生み出す物にもよるが、これは魔法を覚えることさえできれば誰にでも扱えるものだった。生成魔法は作り出す物のイメージができていれば、後はそれに合わせた詠唱を唱えることで魔法を使うことができるからだ。


(ですが、改製魔法は違う)


 フィニティが自らの瞳に行った魔法は『改製魔法』と呼ばれるものであり、これは魔法を使いこなすこと自体が難解なものだ。何故なら改製魔法は対象の物体の情報を永続的に書き換えるものであり、失敗した場合はその物体が使い物にならなくなってしまうからだ。

 例えば今回、フィニティは自分の瞳に魔法をかけていたが、詠唱が間違っていた場合や魔法力が足りなかった場合は、魔法がかかると同時に失明してしまう。成功したとしても改製魔法は効果が永続的な物のため、もし元の効果に戻したい場合は改めて自分に改製魔法を使う必要があるのだ。人体に関わらず、そのようなリスクを伴う改製魔法の解析は進んでおらず、未だ使用者自身に高い技術が求められていた。

 そんな魔法を使った後だというのに、フィニティはまだ魔法を使おうとしている。しかも三つも。


「随分と面白いことをやってのける方だ」


 両手両足を蔓に縛られた情けない姿で、黒コートの商人は笑みを浮かべた。そんな様子を、エリーを助けることに没頭しているフィニティが気づくことはなかった。

 彼女が詠唱を続けると三つの魔法陣がそれぞれ光り出す。鈍色、空色、銀色の魔法陣がその色ごとに輝き、その光はエリーを包み込んでいく。やがて光が収束すると、エリーの体を蝕んでいた黒い模様は消えており、彼女の表情も苦悶に満ちたものから安らかなものへと変わっていた。エリーの体から無事に毒が消え去ったのだ。

 フィニティはふぅと大きな息を吐き、エリーを助けることができた事実に笑みを浮かべるのだった。

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