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EP1-3 - 少女を知る青年

「これは……」

「それが目的で山に来たんですよね。なんで、採っておきました」


 厨房から出てきたフィニティはケロッとした顔でそう言った。


ここ()で育っているので、薬草の在りかは大体わかってるんです」

「そう、なのか。ありがとう、これで生徒の傷が治るよ」

「せーと?」


 フィニティが初めて感情を見せる。知らない単語を聞いた彼女は、顔に『疑問』の表情を浮かべて首を傾げた。そこでセンは思い出す、自分も相手に自己紹介をしていないということを。


「僕はセン・チャーティー。街にあるマージ・モンドという学校で教員を務めているんだ」

「まち? がっこ? きょいーん?」


 その反応はセンにとって意外だった。世界各国に教育が行き届いていない数十年前ならまだしも、この現代において街も学校も知らない人間がいるだなんて思いもよらなかったのだ。

 しかし、彼女は人がまったく寄り付かないこの山で暮らしているのだ。それを考慮すると世間一般の常識など通用しないのかもしれない。

 だが、そうなるともう一つ疑問が生まれる。彼女は何故この山で暮らしているのか、だ。人間である以上は彼女にも親がいるはずだが、全く見当たらない。それに、親二人と娘一人が暮らすにはこの小屋は狭すぎる。


「フィニティ、君はここで一人で暮らしているのか?」

「いえ、じっちゃんとばっちゃんと」

「お爺さんとお婆さんがいるのか。じゃあ、ご両親は?」

「知らないです。会ったことないので」

「会ったことない?」


 これまた予想外の回答であった。両親に会ったことがない、ということは……。


「あたし、この山に一人でいたらしいんですけど、それをじっちゃんとばっちゃんが拾ってくれたんです。だから、おかーさんとおとーさんって人は知らないの」

「……すまない、踏み込みすぎたな」

「何がです?」


 センは謝罪をしたが、フィニティの表情が全く変わっていないところを見ると、彼女はこの件に関して本当に何も思っていないのだろう。会ったこともないから、自分をこの山に捨てた両親に対して悲しみも憎しみも抱かない。恐らくそれは幸いなことだと彼は思った。自分を捨てた両親を覚えているより、知らないまま過ごしていた方が辛い思いをしなくて済むはずだからだ。

できそうな週は週2投稿を目指してみます。更新なかったら忙しいのだと思ってください。

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