表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フィニティ・フレインは山を下りて何を思うのか  作者: 鳥羽 こたつ
エピソード3

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/233

EP3-17 - 力を持った少女

「やるじゃないかエリー・サーベス。まさか複合魔法を使うとは思わなかったぞ」

「それほどでも」


 したり顔でそう答えるエリー。謙遜的な返答とは裏腹に、その口元は自信に溢れていた。それもそうだろう。今この場で複合魔法が使える生徒は彼女しかいない。それほどまでに難しい複合魔法を使いこなしたエリーの下へ、多くのクラスメイトが羨望の眼差しと称賛の声を送っていた。


「素晴らしいですわエリー様!」

「まさか複合魔法を使えるだけの魔法使いだったなんて思わなかったよ!」

「流石はスーン・サーベスの娘だな!」

(やめろ。そんなこと言うなよ)

 

 その言葉はエリーが一番嫌っていたものだった。

 これまでのエリーであればその言葉が聞こえた瞬間に顔色が曇っていた。どれだけ上機嫌だったとしても、『スーン・サーベス』の娘であることを突き付けられると彼女はコンプレックスを刺激されてしまうのだ。しかし。


「えぇ。私はスーン・サーベスの血を引くものですもの。これくらいは当然よ」


 今日のエリーは、寧ろその言葉を聞いて嬉しそうにしていた。シャータに見せていた意地の悪いものとは違う純粋な笑顔。

 それはきっと、大勢の前で高度な魔法が使うことできたからだろう。これまではどこか夢心地だったものを、エリーは現実として再認識したのだ。自分は本当に魔法力が上がったのだと、立派な魔法使いになることができたのだと、父にふさわしい娘になることができたのだと。全身を駆け巡る幸福感は、エリーを自然と笑顔にさせた。


「私はお父様にふさわしい娘、エリー・サーベス。以後、お見知りおきを」


 その言葉を聞いて、周囲の生徒から黄色い歓声が上がった。偉大なる魔法使いが誕生したことを祝福しているような、そんな声だった。


(なーにが以後、お見知りおきを、だよ)


 その枠組みから外れていたのはシャータだ。覚えていた苛立ちは確固たるものとなっていた。この場では彼女の内面を知る唯一の人間だからこそ、今の彼女の一挙一動が気に障る。シャータの知るエリーはこのような人間ではない。不器用ながらも一生懸命で、色々と悩みながらも父親の名に恥じないような人間になろうとしていた。

 勿論、魔法力が上がるのは良いことだ。それはエリーが最も望んでいたことだから。だが、今のエリーは自分の力を誇示するために魔法を使っているように見える。力に振り回されているように見える。シャータの視点では、そう見えるのだ。

 もしかしたら今のエリーが彼女の本性なのかもしれない。しかし入学してからの数か月間、シャータが見てきたエリーは、今のエリーではないのだ。


(アタシは、あんたを取り戻す)


 シャータは改めて、これまでのエリーに戻す作戦を考え直すのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ