EP3-13 - 言葉の裏側
シャータが真剣に考えこんでから数分。彼女とフィニティの間に漂っていた沈黙を、先に打ち破ったのはフィニティのほうだった。
「シャータさん。あたし一度エリーさんと話をしてみようと思います」
エリーの言葉の真意がわからない以上、直接話をするしか解決への道はないはずだ。フィニティはシャータへそう告げるが、目の前で考え込む少女は首を縦に振らなかった。
「ちょい待ち。それが悪いことだとは言わないけど、タイミングは伺った方が良さそうだ」
「タイミング?」
「さっきの話を聞いている限りだとエリーは普段の様子とは違ったんでしょ。なら、今フィニティが話をしても埒が明かない可能性があるかなって」
「埒が明かないって……」
「嘘をつかれるってこと。相手からの質問なんて、いくらでも誤魔化せるからね」
「でも」
そんなことを言っていては会話なんて何の意味もなくなるじゃないか。今こうして二人で話している言葉の内容だって、嘘だと疑わなければならなくなる。そう考えたフィニティは反論をしようとするが、シャータの方が先に口を動かした。
「だから、大事なのはタイミング。相手が嘘をつきにくい状況だったり、嘘か本当かわからないとしても問い詰めることができる状況が必要」
「……そんなことができるんですか?」
シャータは簡単そうに言ったが、そんな理想的な状況など作れるものなのだろうか。少なくともフィニティに策は思いつかなかった。
具体的にどうするのか。彼女は頭に浮かんだ疑問をシャータに問うと、その返答は大きなため息の後にやってきた。
「ちょっと趣味の悪いやり方だから、今は言いづらいかな」
「趣味?」
「人の本音が出やすいタイミングって、気が緩んだときか、あるいは……」
これまではっきり物事を言ってきたシャータが、ここで初めて言葉を濁す。その意味をフィニティが理解する前に、シャータは真剣な表情を崩して、いつもの彼女が浮かべるような明るい表情をした。
「ま、タイミングについてはお姉さんに任せな」
「えっと、わかりました」
「フィニティはまだ入学していないから三人で一緒にいられるのは放課後かな。明日迎えに行くよ。購買にいるでしょ?」
「その予定です」
「よし、それじゃいつものエリーを取り戻そう。ほら、フィニティ手を出して」
言われるがまま、フィニティは手のひらをシャータに向けた。その小さな手のひらに、シャータの手のひらが勢い良くぶつかる。ハイタッチだ。それはエリーを取り戻すという作戦が始まった合図だった。
タグがほのぼの……。ほのぼの……?




