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フィニティ・フレインは山を下りて何を思うのか  作者: 鳥羽 こたつ
エピソード3

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EP3-11 - 何故か嬉しそうな一人

「どうしたんですか二人とも。何やら様子がおかしいですけど」


 人の顔の上に無理やりお面を被せたかのような、不気味で不自然な笑顔を見せるエリー。そんな作り物の笑顔を浮かべるエリーを見て、センとフィニティは動揺を隠せずにいられなかった。人が浮かべる笑みから遠く離れたその笑顔は、幼児が見れば泣き出していたかもしれない。まるで人を驚かすために悪魔が作り出した呪いのお面のようだった。


「い、いや、何でもない。ご機嫌ようエリー」

「お帰りなさいエリーさん」

「そうですか?」


 二人の視線に何かを感じたのか、その不自然な笑顔のままエリーは首を傾げた。まるで首の関節部分が壊れた人形のようだった。

 何かがおかしい。彼女の一挙一動に人間離れしたような違和感を覚えるのは何故だろう。声も姿もエリー・サーベスだというのに、彼女を見ていると不気味さを覚えるのは何故なのだろう。言語化できない感覚が二人を襲う。


「先生もどうしたんですか。そんな引き攣った顔をして」

「……い、いや何でもない。寧ろエリー、君の方がどうした」

「どういうことですか?」

「随分と、そうだな、嬉しそうに見える」

「嬉しい? ……あは、よくわかりましたね。今私すごく嬉しいんです」


 エリーはその言葉と共に大きな高笑いをすると、スタスタと歩いて自分の鞄を手に取った。そこから教科書を手に取ると、とあるページを目の前にして再び大きく笑い始めた。


「あは、あはは! あの人が言っていたのは本当なんだ!」


 そのページは複合魔法が書かれているページだった。炎と風の複合魔法で、大きな炎を四方八方へ吹き飛ばし爆発を起こさせるというものだ。複合魔法は二つ以上の属性を同時に発動するという性質上、より高度な技術と高い魔力が求められる。技術はともかく、素の魔力が低い今のエリーには到底唱えられない魔法だ。そのはずだった。


「チャーティー先生、フィニティ。見ていてください」

「見ていてって。……エリー、まさか!」


 エリーは手を窓の外へ掲げると、例の不気味な笑みのまま口をボソボソと動かし始める。


「終焉の鐘が告げる。対の音色は終わりと始まりをもたらさん……」

「まずい。フィニティ、伏せろ!」

「え?」


 天へ掲げるエリーの手の先に、赤色と緑色の魔法陣が現れる。そして。


「粉砕せよ、ブレイジング・バーン!」


 二つの魔法陣が重なり、光り輝くと、窓の外で大きな爆発が起きた。誰もいない空の下で起きたとはいえ、直径数十メートルほどの大きさの爆発だ。爆風や熱線による二次被害が起きたとしてもおかしくない。現に窓を開けたまま爆発を見た二人は、火傷まではしていないものの熱さによる痛みを感じたのだった。


「できた。できた。できた! 今の私なら複合魔法も使えるんだ!」

「エリー!」


 何度目かの高笑いを浮かべるエリーの手を掴み、センは強引にその手を引っ張った。自然と彼女の体がセンの体へと寄せられる。


「何を考えているんだ! 決められた場所以外での魔法の実践は禁じられている! 怪我人が出たらどうするつもりだったんだ!」

「大丈夫ですよ。威力の調整もできるようになってるみたいですから」

「そういう問題じゃないだろう! 一体どうしてしまったというんだ!」

「どうしたって? あは、私はいつも通りですよ。できることが増えただけです」


 ヘラヘラと笑う少女の目には全く反省の色が見られなかった。生活指導のため教員室へ連れていく、そうセンが宣言するが、だからどうしたとでも言わんばかりにエリーは快諾の返事をする。そして部屋を出る瞬間、彼女はフィニティの方へと顔を向け、小さくこう呟いた。


「私は負けませんよ、フィニティ」


 その呟きが届いたのは、冷静でいられたフィニティだけだった。

魔法の詠唱は過去作から使いまわしてしまっています。

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