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フィニティ・フレインは山を下りて何を思うのか  作者: 鳥羽 こたつ
エピソード3

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EP3-7 - 初めて見る衣服

「むー」


 魔法史の授業を終え、放課後を迎えたエリーが自室に戻ってくると、そこではフィニティが衣服とにらめっこをしていた。その手に持っているのはこの学校の制服であり、裏表をひっくり返しながら何やら唸っている。


「……何をしているんですか、フィニティ」


 彼女が部屋にいるのは少々予想外だった。購買部は放課後も営業しているため、この時間だったらまだそこにいると思っていた。


「あ、お帰りなさいエリーさん。実はさっきセンさんにこれを渡されたんですけど、どうやって着るのかがわからなくて」

「着るのがわからないって」


 着方がわからないと言うが、エリーから見てこの制服に特別な点は見当たらない。フィニティが持っている制服はエリーが着用しているものと同じく、ジャケット状になっている上着と、それに合わせた色のスカートだ。上着の方はシャツの上から羽織ってボタンを留めれば良いだけであり、スカートだって一般的に流通されているものと同じなのだから、普通に着用すれば良いだけだ。

 何がわからないのかがわからない。エリーがそう口にしようとすると、フィニティがスカートを頭の上から被りだした。


「何をしているの!?」


 突如奇行を起こした少女を前にして思わず大きな声を出すエリー。それに対してフィニティはスカートを頭にひっかけたまま首を傾げる。

 

「いや、被れそうなのがこれしかないかなって思いまして」

「おばか! このタイプは紐を通して固定させるの!」

「ひも?」

「ちょっと貸して!」


 スカートを取り上げたエリーは、フィニティの腰に手を回してスカートを着用させた。これではまるで母親だ。


「あぁ、こうなるんですね!」


 固定されたスカートを触り、フィニティは嬉しそうな声をあげた。対してエリーは重たい溜息を吐く。彼女をこの部屋へ泊めたときに一般常識が欠けているとは思っていたが、まさか服の着方すらわからないとは。

 もしやと思い上着の方を渡してみると、彼女はそれも頭から被ろうとした。どうやらボタンという存在を知らないようだ。よく考えれば、これまで彼女が来ていた衣服は上から被るワンピースのような、シンプルなタイプのものだった。きっとこれまでの人生でそのタイプの衣服しか着たことがないのだろう。この子を育てた人間は大事なことを教え忘れている。制服を着用して喜ぶフィニティを横目に、エリーは頭を抱えるのだった。

初めてスカートの着方を調べました……。

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