EP11-26 - 対策と決意
「……なるほど、そういう作戦か」
イベントステージの舞台裏にて。ゲシハーとスーン、そしてフィニティは最後の作戦会議をしていた。内容はつまり、フィニティを守るための対策についてだ。ゲシハーは予め幾つかの策を用意しており、イベントの会場やステージ、観客の数や配置を見て最適な策を用いるようにしていた。
「確かにそれならフィニティの無事は確保できるでしょうね」
「うむ。それでいてイベントの進行に不具合が生じることもあるまい」
守られる立場にあるフィニティも納得した様子で首を縦に振る。ゲシハーが用意した策ならば、仮にドアンドから奇襲を受けたとしても何とかなりそうだ。
「イベントが始まるまで残り十五分。急いで準備を進めましょう。ゲシハー殿」
「ええ。ではフィー、こっちに来なさい」
「うん!」
ゲシハーはフィニティを連れて観客が見えるようなステージの脇の方へと移動する。この場所は暗幕が掛けられており、観客の方からはキャストが限りなく見づらい箇所になっている。
「上手くいくかな?」
不安からではなく、純粋に浮かんだ疑問を祖父にぶつける。祖父は孫にぶつけられた問に対して、静かに頷く。
「勿論じゃ」
「そっか」
祖父が言うなら大丈夫だろう。祖父の凄さは自分が一番よくわかっている。元々緊張していなかったが、フィニティの心の中に、より強い安心感が生まれた。
「それでは始めるぞ。フィー、こっちを向きなさい」
「はいはい」
ゲシハーはフィニティに向かって手を掲げると、小さな声でブツブツと詠唱を唱え始める。暗闇の中で小さく魔法陣が光り輝くと、作戦の要である魔法が放たれた。
「へぇ。こういうこともできちゃうんだ。流石じっちゃんだね」
フィニティは自分の体をマジマジと見ると、魔法の性能に強く感心した。自分ならば同じ魔法を唱えたとしても、祖父のような使い方はできないだろう。
「うむ。後はフィー、お前の振る舞い次第じゃ」
「大丈夫大丈夫! 絶対にバレないようにするから!」
そう言うとフィニティはステージの方へ顔を向け、これから彼女が立つ舞台を想像する。間違いない、この魔法ならば上手くいくはずだ。
「じゃあ、始めようじっちゃん! ドアンドをおびき出して、捕まえるための作戦を!」
「うむ」
二人はグッと力強い悪手をして、フィニティはイベント開催の合図に合わせてステージの上へと進んでいくのであった。




