EP11-22 - 決戦への覚悟
「この分ならば、来週のイベント当日は問題なさそうだな」
「うむ。フィーの魔法の精度についてはあと一週間でより高度なものに仕立て上げてみせよう」
フィニティたちの魔法を見たスーンは、どことなく安心したような表情を浮かべ、口角を上げる。既にイベントについては発表されており、ゲシハーによって世界各地に告知がされている。ネームバリューのあるスーン・サーベスの名やマージ・モンドの名を使用したためか、想定以上に反響があり、理事長室には世界各地にある魔法研究所から是非イベントに参加させてほしいという手紙が大量に届いている。いくらドアンドをおびき寄せるためだとしても、マージ・モンドの名を汚すような出来の魔法であれば披露するのを取り下げることも検討していたが、杞憂に終わりそうだ。
「一週間か」
「短いようで長いようで短いのー」
あと七回寝たら、ドアンドとの決戦が始まるかもしれない。直接会ったことのある生徒はフィニティとエリーしかいないけれども、彼の実力はゲシハー達の話から容易に想像ができる。フィニティが襲われたことを考慮すると、命を懸けた戦いになるかもしれない。そんな戦いが目前であることを思うと、少しずつ不安の種が育っていく感覚に襲われる。
「案ずるな、お嬢さん方。皆のことはワシやサオエルが命を懸けてでも守り通してみせるからのう」
そんな不安を感じ取ったのか、ゲシハーは柔和な笑みを浮かべて皆に安心を振りまいた。古代の中でも指折りの名魔法使いである彼は、年齢のことを考えてもとても頼りになるように見えた。寧ろ、様々な経験を得てきたであろうその皺だらけの顔が、自分たちを守ってくれることを約束してくれているようだった。
「大丈夫! じっちゃんのことはあたしが守るから、命を懸けるなんて必要ないよ!」
「ほっほっほ。そりゃあ心強いのう」
ガッツポーズをして力強く宣言するフィニティに対して、頭を撫でるゲシハー。孫と祖父の微笑ましい触れあいだが、この二人は今この場にいる誰よりも魔法力が高いコンビだ。この二人であれば、確かに宣言通り全部を守っていけるかもしれない。
だが、それに甘えてはいけない。自分たちも力になる。それがイベント会場でスーンと交わした約束だ。エリーとハジメ、リーバはそれぞれに目配せし、互いに頷く。守られるだけではなく、守れるような存在になること。それが子どもである彼女たちの思いであり、覚悟であった。




